ダメえもん ~バイバイん~
「あ~あ、空からお金降って来ないかな~。 地面から湧いて出るでもいいや~~」
「相変わらずのポンコツ発言だね。そんなんじゃ将来ニート確定だよ?」
そんなやり取りをしているのは眼鏡を掛けた小学四年のにょび太と自称スーパーロボットのダメえもんだ。
「ダメえもんに言われたくないよ。ってか、新しいパトロン探しに行ったんじゃないの?」
前回、『もう世話にはなんねえぜ。ぺっ!』
なんて捨て台詞を吐いて出て行った割には、1週間もたたずに戻ってきたことに対して多少の嫌味を込める。
「いや、それがさ~。出汁杉ってやつのところに行ったんだけどね~。『ぼくは自分の未来は自分で切り開く』ってけんもほろろでさ~。ぼく、ああいう意識高い系は苦手なんだよね」
ダメえもんは嫌味を全く気にしてる様子はない。
「やっぱぼくには、やる気がなくて人にすぐ頼るヒモ気質の人の方が合ってると思ってさ。そんな訳でよろしく!」
なんだかディスられている気がしたが、あえてそこはツッコまないことにした。
「まあ、いいけどさ。そういうことで何かいい道具ないの? ダメえも~ん。別に、大金持ちにならなくてもいいんだ。衣食住に困らない程度でいいんだよ~」
そうしてにょび太は早速すり寄ってくる。
「しょうがないな~、にょび太くんは。それなら、これはどう? ジャジャジャジャーン! 『バイバイ~ン』!!」
そう言って、ダメえもんは液体が入った小瓶をポケットから取り出した。
「え? ばいんばいん?」
にょび太は何のことやらで、つい言い間違える。
「それはスタイルがこんな風にボン! キュッ! ボン! の女性のことさ~。あの常盤ちゃんも、将来そんな風になる素質持ってるよね~」
常盤ちゃんとはにょび太のクラスメイトで、『容姿良し、性格良し』のクラスのアイドル的存在である。
「何言ってるのさ! ていうか、小学生をそんな目で見てるのか! この、スケベロボット!」
そんな事を言いつつも、にょび太は心の中では(え? そうなの?)と想像してにやつく。
「で? そのバイバインってどう使うのさ?」
「それは実際に見た方が早いってね」
そう言うや否や、ダメえもんは100円玉を取り出すとそれに小瓶の液体を1滴垂らす。
5分ほど経過すると・・・
なんと、うにょ~~んと100円玉が2個に分裂したではありませんか!
「あ! 増えた!」
「もうわかっただろ? この液体を1滴垂らすと垂らしたものが倍に増えるのさ。5分毎に倍々に増えるけど1時間で効果が消えるから、どこぞの『栗まんじゅう』みたいにはならないのさ?」
何故かドヤ顔を決めるダメえもん。
「すごい! じゃあもし1万円札に垂らしたら・・・ 『!!』 1時間後に4096万だ!」
「・・・そういう計算は早いね、君は。まあ、そんなとこだよ」
「そんなにあったら、ラジコンとかマンガとか色々買えちゃうね! ・・・やっほい!」
「当然、僕用にエッチな本もよろしくだよ?」
二人は顔を見合わせて、にやりと笑った。
こうしてにょび太はママの財布から1万札を拝借し、それにバイバインを垂らして1万札をどんどん増やしていく。
そうして増えた1万札を握りしめ町で豪遊し始めたのだが、世の中そんなに上手くいく訳もなく・・・
三日後の夕方、テレビであるニュースが流れていた。
『本日、偽札を使って買い物をした小学生が逮捕されました。その偽札ですが本物と見分けがつかない程の精巧な造りでしたが、シリアルナンバーが全て同じという特徴があり・・・』
そしてにょび太はというと、
「うわ~~~ん。なんで、こうなっちゃうの~~(泣)」
拘置所の中で泣き叫んでいた。
「まさか、番号で管理していたとはね~。こりゃ、気付かなかったな~」
その隣では、ダメえもんがしてやられた、みたいなことを言っている。
「何余裕こいてるのさ~。ぼく、これからどうなるんだよ~~」
「まあまあ、良かったじゃん。ここにいれば、衣食住には困らないよ」
慰めになっていない慰めに、にょび太はいつまでも泣き続けるのであった。
「うわ~~~ん、ダメえもんの、バカ~~~~!!(泣)」
おわり
現在、連載小説「隻眼浪人と茶髪娘、江戸を翔ける!」も手掛けています。
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