そっとしておいて
帰りの新幹線の
予定していた電車に
乗れなくなり、
次の自由席に乗った。
そんなに混んでは
いなかったから、
ゆっくり窓側に座り、
広島を通過した。
出張帰りの人達は、
だらし無く眠り、
車内には萎れた空気が
漂っていた。
自分も眠くなった。
うつらうつら、
あの日、あの時を
思いながら。
迷うこともなく、
走った畦道。
風と草を突切って、
目指した川の畔。
誰かに言われた
わけではなくて、
自分で全部を選んだ。
ただ走るだけを。
帰る途中に、
浮かべる畦道。
何故か帰ってゆく。
子供の頃の夏。
川の畔にあった、
何があった、
それは夢や希望。
確かな夢や希望。
今また、確かな、
夢や希望を持てと言う。
持たないと何にも
始まらない。
そこからしか
始まらない幸せを、
得るのも得ないのも、
自分で決めること。
若者も年寄りも、
関係ないだろう。
自分で決めるんだから。
はっきり決めるんだから。
うつらうつらが、
いつの間にか、
ざわらざわらで、
姫路を通過した。
出張帰りだから、
疲れているんだから、
ゆっくでいいさ。
それはただの思い込み。
ゆっくりなんて、
しなくていい。
新幹線の中でだって、
夢は描けるだろう。
台風から逃げようと、
もう帰ろうとした。
だけど逃げても、
追いかけて来る。
夢の無い日常の、
しんどい仕事や
人間関係みたい。
被害が出ないで欲しい。
過ぎ去ってゆく
車窓の景色に、
時の流れを見ていた。
降りる用意をした。