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払雲花伝〈ある花人たちの物語〉【塵積版】  作者: 讀翁久乃
◆ ―――――― 序鐘 ◇ 月下の対峙 ――――――
5/194

◍ 語り部の声……『花散る幽谷の鬼』



―― * * * ――



 悠久と謳われた神代(じんだい)が崩壊し、龍が人原(じんばら)を拓いて三千と有余年。

 新世界の海上にて、文運隆盛を牽引してきた華瓊楽(カヌラ)王国は、歴代きっての竜氏(りゅうし)の治世を迎え、李彌殷(リヴィアン)を首府として殷賑(いんしん)を極めていた。


 世界は絶えず変貌を遂げていくも、建国の祖は東天一の大豪族であった〝雲上のまほろば〟――蔵不磨(くらふま)国の北方には不老の地が残されており、天高く左右に切り立つ幾重もの断崖と、幻想的な翠霞に守られたそこは、まさに飛天が花を散らして舞う神界への入り口と見せて、来訪者をことごとく居竦(いすく)ませてきた。




 古より、かの地を守り継いできた民を〝花人(はなびと)〟と言うが、彼らは男女とも容姿端麗ながら、敵襲となると好戦的で、皆一斉に虎豹の咆哮を上げる。


 今や国家規模の大要塞と化した花人の棲み処も、かつては天花園(てんげえん)と謳われる楽園であった。

 彼らの城邑じょうゆうを見守ってきた語り部たち曰く、すべては花人の祖先にあたる人間たちが、天花園をその主である花神(かしん)から、奪い取ろうとしたことにはじまったという。  




  汝、人にして人にあら不―――。




 花人は欲望の悪果から生じた生来の罪人であり、もはや〝鬼〟と呼ぶべき存在。あらがうことも、逃げ出すことも、自ら命を絶つことすら許されず、己の過酷な運命を象徴する華痣(はなあざ)を延々と受け継ぎ、苦しみ抜く定め。


 現に、戦場へ赴くことを唯一の救いとするようになった当代、その忌まわしい痣は、かの地に今もなお、縛り付けられている末裔(まつえい)らの四肢にも見られ、





 未だに、消える気配がないという――――。 





                            ◆   ◇   ◆


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