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払雲花伝〈ある花人たちの物語〉【塵積版】  作者: 讀翁久乃
◆ ―――――― 第一鐘 ◇ 道のり ――――――
26/194

◍ 仕組まれた砂漠化

 

 華瓊楽カヌラ暦・一六二六年、天文景(てんぶんけい)十二年。


「八年前、この国は突然、深刻な大旱魃(だいかんばつ)に見舞われ、国土の半分近くが、不毛の砂漠地帯となってしまった……」


 当初は様々なことが原因として挙げられたが、巷の人々は特に、台閣の大神官・沙羽良(サハラ)神堂主が、何者かに暗殺されたという噂と結びつけて考えていた。

 代々、壽星(じゅせい)台閣から命じられては、祈雨、止雨の儀式を執り行ってきた由緒ある神官の後継者で、名実ともに当代随一の霊応を有していたらしい。



                  |

                  |

                  |



           ――――【 破壊者 】――――



「俺は、華瓊楽(カヌラ)から旱魃被害の拡大化を食い止めて欲しいと協力を仰がれ、第一陣として派遣されたが、その当時とは少しばかり状況が変わってな……、緑化に()けているだけでなく、戦闘能力の高い仲間を追加しなければならなくなった」


 飛叉弥の歯切れが悪くなる頃を見計らっていたように、凛とした声が放たれた。


「なぜ、私たちがカリカリしているか、だいたい分かってきたんじゃない――?」


 薫子は、高品質なことを示す紫味を帯びた焔籠玉(ダルブランカ)の瞳で、皐月をにらみつける。


「花人は人の姿をした植物のようなもの。生き物としての臭いや、気配を消すことが――、完璧な隠密行動が可能ということなのよ」


 この特異な体質を活かしながらの援助を、現在の華瓊楽(カヌラ)は、大地の再生と同時に求めているのだ。さらに花人は、万物を生み出す根源的な力―― “産霊(ムスビ)” を駆使して、雨雲を呼ぶことも、風を集めることもできる。


「あなたが花人なら、単に、この大地を花と緑で埋め尽くせるというだけに留まらない、 “造化(ぞうか)” と呼ばれる類の、驚異的な力を持っているはずなの」


「まぁ、俺たちは自然と友達だから、口入すれば、色々助けてもらえる、ってことさ」


 ため息混じりの飛叉弥が、いかにも適当にまとめたが、物々しい雰囲気が沈黙の間を漂う。


「俺たちの敵は、ただの自然災害じゃない。華瓊楽(カヌラ)で起こった砂漠化は人為的に広められたもので、水不足や土壌問題が真因ではないことが判明している」



「人為的な砂漠化……?」



 皐月は顔つきを変えて、聞きかえす声を怪しげに低めた。


「ってことは、まさか、 “テロリストみたないな奴の仕業” ってこと――?」


 飛叉弥は三泊ほど間を置くことで、剣呑な雰囲気を増大させた。


「そもそも、(うてな)の花人が引き受けるのは、梟業(きょうごう)と言って、(ふくろう)の狩に例えられるような闇の仕事がほとんど。今のうちに念を押しておくがな、皐月」


 俺たちに具わっている人知を超えた力は、あくまで天花園(てんげえん)から受けた罪の印であって、 “罰” と解釈するものだ。体に表れる華痣(はなあざ)も、一生消えないだけではない。子々孫々まで受け継がれる “血に刻まれた戒め” ――。

 

                   

(2021.05.07に投稿した内容と同じです。長文だったため、分割しました)

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