〇 新たな幕開けの一節 | 主な登場人物の雲行き
“ 仰いで天に愧じず、俯して人に怍じざるは、二の楽しみなり ”
*
君子には三つの楽しみがある。
だが、天下の王になることは、このうちに含まれない。
第一に、父母がともに健在で、兄弟に事故がないこと。
第二に、天を仰いでも恥じることがなく、
地にうつむき、やましく思うことがないこと。
第三に、優れた人物を弟子にして、教育すること――。
これは嘘ではない。
だが、心の底から思うことが、欲のある生き物に叶うだろうか。
心の底から思えるとしよう。このうち一つでも良い。
だが、いずれも得難い楽しみならば
一つとて望めば、それだけで、欲深いのかもしれない――……。
【 語り部の声……『王の悩み』より 】
◇ ―――― 主な登場人物の雲行き ―――― ◇
◆須藤皐月
前回、自分の素性にかかわる重要な記憶を取り戻したが、
非協力的な態度を続け、あえて飛叉弥をブチ切れさせた。
花人として・南世界樹の養い手として、
逃げてはならない立場であると分かっていながら、
無関係を主張してきた理由は、飛叉弥への複雑な思いがあったから。
様々な重要人物らと、時おり密談を交わす。
その正体は、 “蓮暁寺龍牙驪” という世に知られざる花人で…?
◆蓮壬彪将飛叉弥 / 飛蓮
関与を迫ってきた半面、皐月を巻き込みたくないのが本音。
花人とは無縁な世界で、幸せに暮らしてくれることを願っている。
前回、不本意ながら、過酷な運命から逃れる術がない事実を
皐月にぶちまけてしまい、
なんとかならないか画策してきた立場として、敗北感を味わった。
本格的に参戦しようと動き出す皐月に、心配を寄せる。
魔薬・ケリゼアンに関われない事情があり、
今回、はじめて皐月に代行を頼むが……。
◆辻村茉都莉
十六歳。玄静の孫娘。 “連理の枝” が見える少女。
皐月の正体にこだわらず、なにかと世話を焼く。
小柄でかわいらしいが、父は野獣のようなゴツい空手家。
花人としての皐月について知るため、いざ華瓊楽へ。
縁結びを司る “結び巫女” ……かも?
◆須藤玄静
文明社会の最先端にある摩天で、皐月を育てた老父。
人間でないと知りながら、萌芽神社にて生活を共にしてきた。
◆桜源嶺薫子 / 芳桜
皐月を拒絶していたが、その身辺を探り、茉都莉と出会ったのを機に、
彼を認めるか否か、独自の基準で試し始める。
鋭い洞察力がありながら、その場では感情的になりやすい。
常葉臣の資質があると見て、茉都莉を華瓊楽へ導き……?
◆桐峰柴 / 桐騨
皐月の血液から正体を探り、萼の機密にたどり着いた軍医。
今回、ケリゼアンによる病と闘うことになる皐月をフォローするが、
何も知らない仲間たちとの間に挟まれ、懊悩する。
◆菊嶋嘉壱 / 菊羽越
他メンバーより皐月と接する機会が多く、
彼の第一印象を覆す様々な場面に立ち合った。
相変わらず、その正体には気づいていないが、
皐月の肩を持つことに躊躇いがなくなり、ついに啓との間に
決定的な亀裂を生むことに……。
◆喜梨啓丁 / 梨琥
飛叉弥を慕っており、皐月を敵視。
同じ葎出身で、これまでずっと心強い存在だった嘉壱が
皐月をかばうようになったことで、ついに感情を爆発させる。
◆真椿芽満帆 / 椿奈
敏感な性格で、仲間割れを防ごうと立ち回る一方、
皐月の異変にも気づき、洞察を深めていく。
仲間の絆を守るため、皐月に対する印象が変わってきていることを
自覚しながら、嘉壱のように発言できない自分に後ろめたさを感じている。
◆菖淵史雄勇 / 菖雲
皐月を巡って続発する問題を注視。
相変わらず考えていることの大半は読めないが、
今回は、仲間割れを起こす言動を許さない、
副隊長らしさも見せる。
影で皐月をフォローする動きも見せ……?
◆郭智津香
朱地雲王国の元侍医。
腕のいい女呪医だが、どうやら曰くつき。
日夜、怪しい研究に没頭してきた。
飛叉弥とは何かと貸し借りのある仲である様子。
すでに柴を雇っていたが、皐月を介してやってきた逸人を、
新たに雑用として雇うことに。ケリゼアンをめぐる今回の任務に、
考えあって同行させる。
◆髑髏の宋愷
黒同舟の一人。智津香の因縁の相手。
華瓊楽全土を、解毒できないケリゼアンの恐怖に陥れようとする。
その肩慣らしとして前回、左蓮に協力。
ケリゼアンによって巨大・狂暴化させた妖魔で街を襲撃。
皐月の化け物じみた生命力を目の当たりにし、
不老不死の霊薬・月花の甘露との関係を睨んで……?
◆逸人
貧乏大家族の九歳長男。小柄だが、利発でしっかり者。
子どもらしさに欠けるものの、皐月には甘えたい気持ちが……?
智津香に雑用係として雇われて依頼、医学知識を貪欲に吸収中。
助手に昇進を目指す。命がけの任務に挑む皐月の世話係を命じられ……。
◆ひいな
数か月前、華瓊楽に初召喚された皐月を、
飛叉弥のもとへ導いた少女。九歳。
今回の舞台、茶万村の長の孫娘。
砂漠化が原因で起こった暴動で父を亡くしている。
逸人同様、ケリゼアンをめぐる任務に同行することに。
父に似たところがある皐月を慕っている。
◆五十鈴
飛叉弥の妻と噂されるが、実際には侍女で、
それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、飛叉弥には特別な感情を抱いている様子。
家事が苦手で彼にあきれられる毎日だが、
力になろうと奮闘、精神修行中。茉都莉の心に寄り添う。
実は凄まじい過去を秘めているようで……?
〔 参考資料 〕※随時、ここに記載していきます。
“ 仰いで天に愧じず、俯して人に怍じざるは、二の楽しみなり ”
【孟子・尽心上 君子三楽】
・門神 - Wikipedia




