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払雲花伝〈ある花人たちの物語〉【塵積版】  作者: 讀翁久乃
第3幕:色移葉(うつろい)の山を越えて
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〇 5分で語る、前回のお話と世界観



◆【 破軍星神府と、鉄槌神についてが明らかとなり……? 】



 神代崩壊後の四大巉しだいざんでは、 “人原じんばらに文運を。てんに武運と明眼みょうげんを” という祈りが捧げられてきた。

 城隍神をはじめ、各地方の按主アヌスらは、地元の神堂師を媒体として、人原の官庁と連携している。

 呼び名に多少の違いはあれど、同じような役割を持つ者たちの、同じような構図が世界中に存在し、その地域の治安を司っている。

 神代崩壊と千年大戦を経て、各地の異変や、衆生の善行悪行を見張ることを務めとしてきたもと天軍の神々――、 “破軍星神府はぐんせいしんぷ” の傘下としてだ。


「花人という民族の捉え方は様々でしょうが、北紫薇ほくしびでは実質、彼らが “鉄槌神ディハイノンランサ” の務めを担ってきたはず……」


 人の寿命、兵乱、善悪の処遇すべてを左右する。

 そんな “舵星かじぼし” と同じ一面を築き上げてきた中心的一族の血筋なのだから――


「飛叉弥殿が待て、と言うなら黙って待ちましょう。我々は何もできなかった分際です」



…………………………………………………………………………………………

砂漠化を食い止め、一時的とはいえ、華瓊楽カヌラを滅亡の危機から救った元祖救世主の飛叉弥。

真の救世主として召喚しておきながら、南世界樹の現養い手になっている皐月に、

その現状をなかなか打ち明けられずにいるらしく、神々は不安を募らせていた。

だが、燦寿太仙老さんじゅたいぜんろうは、皐月が猫をかぶっている可能性を指摘。

案の定、無知・非協力的と見せて、花人であることすら認めようとしてこなかった皐月だが、纏霊術てんれいじゅつをものにしようと試みたり、自ら路盧ロノン城郭での攻防に参戦したり……?

…………………………………………………………………………………………






◆【 謎の少年・皐月、王たるものを説く……? 】



 奎星けいせいとは、北斗七星の第一星から四星までのことで、古より文運を司るとされている。竜氏と讃えられるほどの人物となると、華瓊楽カヌラ国王はこの星の名を冠する。

 中枢的人物に似つかわしいのは北極星だが、これを名乗る王は、人原じんばらにはいない。

 この世界では人の寿命、戦、自然現象、善悪全てに影響を及ぼす神が担う星だからだ。


 船乗りや、迷い人が方角を知る道標となるその性質から、神代崩壊後の無秩序な新世界で取り決めがなされ、九天九地、四大巉しだいざん各国の裁きを司どれる按主アヌスたちが、この星を守り、体現すると誓った。


 神代崩壊と引き換えに目指したものを、見失わせないため――。



「 “まつりごとすに徳をもってすれば 例えば北辰のその所に居て 衆星しゅうせいのこれにむかうが如し” ……」



 人知れず陰徳を積み、手本となって陽徳を積めば、北極星を中心に群星が廻るように、臣民はその者を王と定め、慕い付いてくるだろう。



「 “桃李とうりもの言わざれども 下したおのずからみちを成す” ―――」



 桃や李の花木もしかり。野中に黙って立っていても、優れた人格者のもとには自ずと人が道をつくる。

 そう教わった。()()()()()()()()()()()()()()



「 “教え有りて類なし” ―――」



 その者が善、あるいは悪だろうが、富者だろうが貧者だろうが、人の差とは教えによって生ずるのであって、生まれながらの差はないのだと――……。



………………………………………………………………………………………………

そう言いながら、巨大な合体木を召喚し、路盧ロノン城を襲おうとした巨大妖害虫を飛び付かせ、地獄の底に引きずり込んでみせた皐月。その瞳は、平凡な黒色から、夜明珠よあけだまという宝玉に例えられる、世にも珍しい紫眼に変化した。

花人の国・うてなの鎮樹王将に匹敵する風格を漂わせながら、特殊な軍服、刀剣、装身具、そして、施政者のような言葉で自分を律し、見事に城隍神じょうこうしんの代役を果たしてみせる。

自分の正体を探るために、これ以上、余計な者を巻き込むなという、敵組織・黒同舟への強烈なメッセージとしたわけだが、須藤皐月が何者か勘づいたのは、敵だけではなく……?

………………………………………………………………………………………………






                 

◆【 知るべきか、知らざるべきか。知っていくほど、人はどうなるか 】



陵鳥神族の翼人兵士――衛男エナル

盤猛鬼人族の青年巨鬼――欽厖きんもうとその父・オド。

それぞれの理由で李彌殷リヴィアン近くにやってきていた彼らは、皐月の化け物じみた造現力を目の当たりにし、 “余計な詮索をすべきではない人物” と確信する。

そして、秘密裏に皐月の血液を調べ、ある驚愕の事実にたどり着いていた柴は、路盧ロノンでの攻防戦後、ついに意を決して飛叉弥にその検査結果を突きつけ……?

………………………………………………………………………………………………

一方、皐月は債務地獄の最中に知り合った貧乏大家族の長男・逸人いつと少年に、「子どもの務め」を説いていた。埋もれていてはいけないと言われたことを思い出し、子どもながら働く意欲のある逸人少年は、しゅんとしながら、「外で元気に遊んだり、勉強しろってことか?」と尋ねるが……。

………………………………………………………………………………………………





             “教えありて類なし”




「違う。子どもの務めってのは……」


 皐月はいつの間にか一緒になって、興味深げに聞いているひいなにも少し苦笑してから、逸人にあらためて向き合った。



「 “平和の証になること” ―――」



 お前たちが、どんなことをしていてもいい。華瓊楽カヌラの王様はただ、笑っている声を聞きたいはず。たとえ濃い霧の中で迷子になっていても、



「良い国の王様は、みんなそうだから――……」



 お前たちが大人になるまで、生き生きと育つことができるかどうかが興亡の分かれ目。だから、埋もれていちゃいけない。


「もっとその顔をよく見せて――……。世の中の嘘も、本当も、すべてを教わりながら、逸人――、お前は他にいないことを誇れる、お前らしい人間になればいい」 



…………………………………………………………………………………

誰が何と言おうと、色々なことを知りながら、

中身のある人間になったらいいよ――。と伝えたのだった。




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