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第8話 謎の老人 ルフ

朝方、門の近くに来ていたハルとラビは、昨日知り合ったお婆さん、ルフを待っていた。

30キロ離れている村に戻るというルフと依頼で村に行く用事があったハルとラビは、一緒に行く約束をしていたのだ。

「おーい、ハルや」

待っていたハルの名前を呼んだのはルフだった。

「おはようございます、ルフさん!」

「おはよう、ハルや。今日はよろしく頼むよ」

「はい!」

二人は門に向かって歩き出した。

門に近づくにつれて、ハルは辺りをキョロキョロ見渡す。

「?どうしたんだい?」

ハルの落ち着きのなさに、さすがにルフも気づく。

「い、いえ何でもないですよ」

明らかにはぐらかすハル。

(どうやらヤタはいないようだ。休みかな)

門番であるヤタと遭遇することに不安があった。その為周りを確認していたが、ルフには変に見えたかもしれないとハルは思う。

その後、特にヤタに会うこともなく、二人は無事に門をくぐり外に出た。

今日は馬車が出るということで、門の外に待機していた馬車に乗る。

さすがに老人のルフを歩かせる訳にはいかなかった。

二人が乗ると、馬車は走り出した。

隣村まで30キロあるが、馬車で行くと二時間くらいで着く距離だ。

飛んで行けたら、もっと早く着くだろう。

いつか試せたらいいなと思う。

馬車の旅は快適だった。

少し揺れはあるが、良い感じの眠気さが襲ってくる。

ラビはすでに意識を持っていかれ眠っていたが、ハルは何とか堪えていた。コクン、コクンと今にも寝落ちしそうだったが、意識を持っていかれないようハルの意思を保っていたのは目の前にある興味だった。

馬の車と書いて馬車、と言うが、ていうか言っていたが、今まさにこの馬車を引いているのは馬ではなく鹿…、牛?…いやトナカイ?みたいな生き物だった。

体は牛みたいにガッチリしていて大きい。色は焦げ茶色みたいな色。頭にはトナカイみたいな立派な角が何本も付いている。四足歩行で尻尾もある。

まさに不思議な生き物。

てか、鹿、牛、トナカイが合体したような生き物だ。

この不思議な生き物に興味が引かれた訳で、眠ることはなかったハル。

運転をしている男性に詳しく聞いてみる。

「これは多角ニ獣という魔物だよ。魔物の中でも大人しく、人に危害を加えることがない。契約をすることもなく仲良くなることで懐いてくれるんだよ。だから食事や寝床を確保してあげることで、こうやって人を運ぶ手伝いをしてくれるんだ」


と、教えてくれた。

それから、

「右にいる子がみーちゃんで左にいる子がひーちゃんだ。どうだ?可愛いだろう?」

だ、そうだ。

特に返事を返す事もなくツッコミを入れる事もなく、微笑み返すだけだった。

ゆっくりと気持ちの良い(多角ニ)獣車の旅。

ルフもいつの間にか眠っている。

ハルは心地良い獣車の雰囲気にゆっくりと目をつむるのだった。


二時間後、

男性の声で目が覚めた三人は獣車を降りた。

降りた場所は村の入り口だ。

ハルは背伸びをする。

快適過ぎた獣車の旅。

ハルは男性にお礼を言うと、獣車は去って行った。

「さて、ルフさんはどこで待ち合わせしてるの?」

「宿屋じゃよ。すぐ近くじゃ」

「じゃあ、宿屋まで送ってくよ!依頼はまだ大丈夫だし」

「そうかい?じゃあお願いしようかね」

ルフはニッコリ笑う。

ハルたちはゆっくり歩き出した。

村に入ると、古民家がたくさん並んでおり昔ながらの雰囲気が漂っている。古民家のすぐ横には畑があり、古民家一軒につき一つ畑があるようだ。

村人たちは畑で何か耕したり、イスに座って話したりとのんびり過ごしている。

まるで田舎だなあと思う。

悪い意味ではなく、良い意味でだ。

街中は物が色々あり便利だ。

しかしだからと言って田舎が不便だというわけではない。

田舎には田舎の良さがある。

ご近所さん同士が仲が良かったり、何かあった時はお互い助け合ったり、まるで家族のような関わりを持つことが出来る。

あとは、静かだな。

うるさい音があまり聞こえない。

それから自然豊か。

空気もうまい!


って何を急に語ってるんだか…

とにかく、この村はそんな感じて良い村と言うことだ!(勝手に納得)

何軒か古民家を過ぎた時、一際大きい古民家?に着いた。

どうやらここが宿屋らしい。

「ここだよ。ありがとう、お嬢ちゃん」

「ハルだよ。どういたしまして!」

「ハルか、良い名だね」

「ありがとう。じゃあ、私はこれで」

「ああ。またどこかで会ったら話しかけておくれ」

「うん!」

ハルは走り出した。


ハルが去った後一人残されたルフは、宿屋に入ることなく、そのまま歩き出す。

宿屋の横にある路地裏。

光が当たらないため、とても薄暗く不気味だ。

ルフはそこに入る。

すると、ルフの後ろから人影が現れた。

「おかえりなさいませ。いかがでしたか?」

「ああ、中々楽しい旅だったよ。面白い子にも出会えた。あと隠れていたようだけどゴーレムの気配も感じたね。二人共、不思議な魔力の持ち主だ」

ルフはクックックと笑う。

そしてルフの姿が老人から若返り、身長も高くなった。身に付けている衣装は群青色で着物に近い服装だ。

体の色は浅黒く、その色に赤色の口紅が目立っている。

「楽しそうで何よりです。では我が国、ランティスに帰りましょう」

「ああ、そうしよう。ハルよ、我が国に来るのを楽しみにしているぞ?」

そう言うとルフともう一人の人物は消え去った。




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