第1話 朝野 めい
「~!~~ル!!」
(? 誰か、叫んでる。誰?男の子?)
「~ル!~~ハル!!」
ドサッ!!
「痛ったたた……ん?」
チチチ…
「…あさ? ゆめ?何だったんだろう」
ベットから落ちた一人の少女は起き上がり時間を確認する。
「6時 まだ早いなあ。今日も学校、行きたくない」
少女は嫌な顔をして早めの着替えに取りかかる。
支度を終え朝食を食べにリビングへ向かう。リビングにあるテーブルには、いつも通りラップに巻かれた一皿が置いてある。
私の名前は朝野 めい。14歳。
両親は多忙で、ここ数年一緒に食事をした記憶はない。食事どころか両親は日に日にすれ違い、今では離婚の危機だ。
(もう、あの頃は戻らない)
言葉に出来ず、一人ため息を吐く。
用意されていた朝食を食べながら、めいは考える。
両親はめいが10歳になるくらいに大喧嘩をした。理由は不倫。しかも二人ともだ。当時はめいがまだ小学生だからとまだ夫婦は続けているが、一緒にいることはない。父親は不倫相手と同居している。母親はたまに帰ってきてこうやって朝食を作ってくれる日もあれば、お金を置いている時もある。
二人とも、「めい」という人間が存在しているから仕方なく夫婦の形を保っている。
(私がいるから)
幸せだった日もたくさんある。
だけど、その記憶さえも過去で。現在に幸せはもう訪れない。
(私はどうなっちゃうんだろう。どうしたいんだろう)
毎日自分に問いかけるが、答えなんて出るはずはなかった。
食事を終え、早めに家を出た。
夕方、気分の乗らない学校生活を終え、いつもと変わらない帰り道。
「あ、今日本屋さんに行くんだった!」
道を変え、街中の本屋に向かう。
「ありがとうございました~」
店員の大きな声を背に、めいは買った本を鞄に入れ歩きだした。
歩き出した先にはチカチカと点滅している歩行者用信号機。
特に急ぐ必要のないめいは、ゆっくり歩き次に青信号になるまで待つ。
今は夕方の時間帯なので、交通量も多い。前に出過ぎないように、少し後ろに下がって待つ。
少し待つと、歩行者用信号機が青になり、前に並んでいた人の後ろに続いてめいも歩き出した。
その瞬間、
キキーー!!
ドオン!!
右側から聞こえてきた激しいブレーキ音と衝撃音。
めいが見た時にはすでに目の前に車が来ていた。
めいの記憶はここで途切れた。
「う。…ここは?」
めいは目を覚ます。周りを見渡すが真っ白い空間が続いている。下もだ。まるで自分が浮いているみたいだ。
「目覚めたかい?」
後ろから声が聞こえ、めいは驚いて振り向く。
「だ、誰?」
「そんなに驚かないで。僕はリエスタール、神様だ」
「か、神?」
「そ。ここに来る前の記憶はあるかい?」
めいは考える。まだ混乱はしているが、深呼吸をして自分を落ち着かせる。
「た、確か、本屋に買い物に行って、その後…あ!確か車が突っ込んできて。私、死んじゃったの?」
「うん、残念だけどね」
「そう」
「驚かないんだね。急に死んじゃったって分かった子は、取り乱したり泣いたりしてたのに」
「…私にはもうそんなもの…。それに良かったと安心した」
「安心?」
リエスタールは首を傾げた。
「うん。これで両親は離婚出来る。私がいたから二人は仕方なく夫婦だったけど、これで自由になれる。これで良かったんだよ」
リエスタールは少し困った顔をした。
「…。さて、まずは君がここに来た理由を話さなくちゃね」
「ここに来た理由?」
「うん。ここは転生が認められた者のみが来れる場所なんだ」
「転生?」
「そう!君には新しい肉体を得て、新しい人生を送ってもらう」
「新しい人生?」
「そうさ!これから君が行く世界は、魔法が使える世界。夢みたいだろう?」
「魔法…」
「うん。楽しみだよね。ここで魔法の世界で最初に苦労することがないように色々教えておこうか。まずは姿だね。人間がいいかい?」
いきなり説明をし始めた。慌ててめいも話しに合わせる。
「人間の他にもいるの?」
「いるよ~。エルフとかドワーフとか」
「へぇ」
「種族はどうする?」
「え?あ、人間で」
「オッケー。じゃ、パパッと決めちゃおう」
数十分後、
「よし!これで終わり。僕の加護と魔法と剣、薬学、分析能力にアイテムバックに新しい世界での知識が書いてある本だね。能力を上げると使えるものが増えていくからね、能力上げはした方がいいよ」
「分かりました」
「それから、まず新しい世界に行ったら本を読んで近くの街に行くこと!そこでギルド登録すれば身分証が貰えるから、色々便利になるよ」
「はい」
「さて、これから送るけど、君は新しい世界で何かしたいこととかあるのかな?」
「分からないんです。今までもどうしたいのか分からなかったから。…だから、ギルド登録したら、色々な街を旅してみたいと思います。自分がしたいことを見つける為に」
「うん、そうだね。たくさん旅をして色々な人に出会うといい」
リエスタールはニッコリと笑った。
めいはうなづいた。
「あーそうそう!これから送る世界の名は、世界樹を中心に生活しているモーテルという世界だ。そして君は朝野めいではなく、これからはハルを名乗るといい」
「ハル…」
「街の近くの森に転送するよ。これからハルの人生が花開きますように!」
リエスタールが言うとめい、ハルの目の前が真っ白になった。