8:甘いマスクの殿下の伝説?
「はぁ〜…もうあの人やだ〜…。」
傷つけた靴の代わりを探すエルメスが愚痴をこぼす
俺はというと丸い椅子に座り彼の選別を待っている
当然だけど俺はヒールとか履いたことないし、ロファーとかにして欲しいんだけど
「どしたの、エルメス君」
「いやいや、なんでもないですよ」
「まぁまぁ、そう言わずに言ってみなよ」
「ですが…。」
「俺以外誰も聞いてないし、ね?」
「…。」
エルメス君って割と分かり易いなぁ…。
大体嘘言ってる時とか作ってる時は敬語使うよね
本人に言ったらその癖治しそうだから言わないけどさ
「だって…あれほっとんど嫌味じゃないですか」
「イヤミ?」
「そうだよ!
あの人ね、僕がアシクレア様が好きなこと知っておきながら『まるで王子様みたいだね』って…!
ま・る・で!って!
どうせ使用人の僕はなれないけどさ!
回りくどいんだよあの人」
あれ、嫌味なんだ…。
「な〜にが『随分と主君のことを思っている』だよ
性格悪すぎでしょ」
さっきからお父さんの真似しているエルメス君が可愛いんだが
「というか考えすぎじゃない?
そんな深く考えずに言ってそうだし」
ギロリと睨まれる
さっきの鉄仮面とは大違いの分かりやすい感情表現に笑いそうになる
「いやっ!
あの人はいっつもあんな感じ、ネチネチネチネチ」
休憩中のOLの愚痴みたいだな
「それに、元のアシクレア様も気づいていたよ
いっつも嫌味言われてること」
「アシクレアが?」
「うん、ネチネチ言われても結果で見返してやるって言わんばかりにいっつも努力してたよ
僕に文句一つ言うことなくずーっと一人で頑張ってた」
…なるほど
ヒロインいじめの理由がちょっと読めたかも
色眼鏡かかってるだろうけど、エルメス君にもう少し聞いた方がいいかな
「…アシクレアってさ、自分に絶対的な自信があった?」
「うん、いつも胸を張っててさ、どんな逆境も乗り越えていきそうな…誇り強さ?持ってたよ
誰が見ても惚れ惚れしちゃうよ〜」
エルメス君の方を見ると、うっとりとした顔で靴を抱きしめている
アシクレアがプライド高い人なのは分かったからはよ探して
「殿下のことを尊敬してるんだよね?」
「えぇ…と言っても僕から見ても殿下は素晴らしいお方ですし、多分周りの人は全員そう思いますよ
初めはただの甘やかされたボンボンの子だと思ったんだよ」
「ぼ、ボンボン…。」
「うん
だってさ、植民地の人達にも救済をって言うんだよ…馬鹿じゃないの?
いくら弱いやつに優しくと言っても限度があるでしょ
貧民街のやつらにそれ言えるのって感じ」
うっわ辛辣
「でも殿下の言葉は本気だった
土地の多くが砂漠地帯の国にここ数年援助していたんだ
普通、痩せた土地の国なんて奴隷ぐらいしかいいことないのにさ
それをアシクレア様が知ってさ
『馬鹿なことはおやめ下さい、殿下!』って直接言ったんだよ」
うっわアシクレアの行動力すげぇ
「それでも殿下はやめなかった
そしたらとある作物がそこの環境に適していたみたいでね
その作物は生でも美味しいし調理の幅を広げるからその国は栄えていった」
お目当ての物が見つかったのか傷ついた召しものをゆっくりと取る
「殿下の援助の内容はその作物を作ることの手助けみたいなものだったんだよ
なんでも殿下は初めからうまくいくことが分かった上でしていたらしいよ」
小首を傾げ持ってきた靴を元の場所になおし違う物を取り出す
「でも、殿下の凄いところは植民地の人相手でも敬意を表して接したんだ
実際勝手に植え付けて安値で買い取り貿易なんて事したことなかったし
しかも貧民街の人にも自分の貯金切り崩して食料を分け与えてたしね
そんでそっからはトントン拍子
相手の国は殿下の慈悲深さと聡明さに惹かれて感謝と尊敬の眼差しを向けるようになったていう
…まぁ、この話を聞いた人もそうなったんだけど
もちろんアシクレア様も」
ゲームでは事実としてしか描かれていない話をその場の人に聞くのは実に新鮮だなぁ
なんて考えていると柔らかい素材が足を包む
長い間歩いても足を痛めないものを選んでくれたのだろう
「でも、結局甘ちゃんだね…そうだろ?」
「…まぁただの甘ちゃんじゃないんで、お人好しもあそこまでいくと一つのチャームポイントですよ」
砂漠…ゲームには砂漠の王子が出てくる
てことはいつか会うかもしれないな




