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悪役お嬢な俺登場!  作者: 仮のかり
10/13

10:まれっち?

「…ここ?エルメス君」


彼らがいるのはガタゴト揺れる馬車の中


「えぇ、間違いないです」


馬車の小窓から見える大きな結晶…のような家らしい


「それとエルメスでいいよ

と、いうか人の前ではエルメスって呼んで」

「そんな照れ臭いことできないよ

君付けじゃないと何か問題があるの?」

「…前のお嬢様はそう呼んでいたから

知ってる人からしたら違和感ある」


前のお嬢様

その単語を言う時にエルメスの顔に影がさす


「そ、そっか…なんか悪い」

「いいよ別に」


気まずい空気が流れる前に話題を作り、会社内でうまく切り抜けてきたコミュニケーション能力を発揮する


「それにしても綺麗なお屋敷だね

俺たちの屋敷が普通?それともこっちの方が普通なの?」

「こちらのお屋敷が珍しい方です。

なんでも代々宝石を扱う魔法が得意な方が多いため思い切ってこのようなデザインをしたんだとか」

「魔法…宝石……ガチャ…うっ頭が」

「大丈夫!?」


突然心配そうな顔を浮かべるエルメス


「あっいやそんな本当に頭痛いわけじゃないんだ!

そういうネタがある…みたいな」

「…。」


エヘヘと笑うと心配して損したとプイッとそっぽを向かれる

あんだけ厳しいことしてたのにこういうことには優しいんだなぁ


「それにしても、石を扱う魔法ってどんなの?

みんなガチャ?」

「…ガチャっていう魔法は知らないけど、宝石占いとか魔法石の販売とかで有名だよ」

「占いって…あのタロットとか?」

「そ!小さい頃から占い自体はするけど専門的なことを扱うのは主に貴族だけだよ

そして宝石を扱う名門の一つがここ、スピネル家ってこと!」


ちょうどその時に馬車が止まり、馬車の旅の終わりを告げるように扉が開く


「ここからは人の目があるから君も言葉遣いを気にしてね?」

「わかった」


目がまだこちらを向いてる

あぁ、そっか…女子だったら


「…わ。」


ご名答とばかりに手を差し伸べられる

…握手ではないよな


「エルメス、んんっ…エスコートよろしく」


思わず君と言いそうになる癖を咳払いで誤魔化す

自称が呼称と変わらぬ完璧な執事の手を取り金で縁取られた白い馬車から降りる

執事の手は柔らかく小さいが、所々がかすかに硬い

努力者の手だった

彼の努力をそして


彼の敬愛するお嬢様の今までの努力を殺してはいけない


周りの視線

突然の訪問だ仕方ない

でもその視線がなんだか自分を責めているようで


(まぁ、あれがアシクレアお嬢様?)

(見た目は噂通りだけど…)


コソコソした話声が全て自分と前のお嬢様を比べたようにしか聞こえない

幻覚だ

幻聴だ

彼女たちからしたら突然、訪問した令嬢を見ているだけだ


解っている


分かっている


わかっている


けど、頭が

いうことをきかない


どうしよう


アシクレアって

どんな人だ?


アシクレアを


俺は


どう演じればいい?



俺はどうすればいいんだ?





ふとエルメスは隣にいる主人の異変に気付く

そして妙に湿った手のためにエルメスは無邪気な少年を演じる


「…お嬢様、あちらにあるのは琥珀でしょうか

初めて拝見いたしますが、本で読んだ通り本当に蜂蜜のような甘い黄色ですね」

「…え?」

「フフッごめんなさい

僕、こんなところに来るのは初めてでワクワクしちゃっているんです

少しお話ししてもいいですか?」

「う、えぇ…。」



それからアレクシアの部屋に着くまでに話をすることにしたのだ


自分の髪は金髪ではなく誇り高き黄色の髪だということや好きなお菓子

捨て子だった自分はアレクシアに拾われたこと

魔法の才能が開花した時のこと


自分が知りうる面白い話をしているうちに表情が柔らかくなる


(…ただの変なおっさんだと思っていたけど、ちょっと違うのかもね)


決して空気が気まずくならないようにとどんな隙間の時間でもお喋りしているつもりなんだろう

エルメス自身は沈黙は時には余韻を持たせ、甘美な時間ともなるのだが目の前の人は違うのだろう

人の中には誰かに喋ることで無意識に安心したり落ち着く事もある

そういった類いの人なんだろう


「それで、君はどんな友達がいたの?

フォロワーさん?だっけ?」


周りに聞こえないくらいの小声で話す


「うん…ぬいぬいさんって人がいたんだけどね

あの…彼女はぬいぐるみを作るのが大好きでね、それでぬいぬいって名前なんだけど

あっゲームのキャラの推しは殿下だよ」

「ふんふん」

「よくまれっちと一緒に絵を描いて…はぁ」

「…ねぇ、ずっと気になってたんだけどマレッチってゲームに出てくる?」

「う、うん」


マレッチ

これもパーソナルネームなんだろう

そして、このマレッチという名前はこの地域では非常に珍しい

どっちらかというと砂漠地帯の男の名前だ


そしてゲームというものの舞台がここであるなら

恋愛ゲームというものが高貴な身分の方との恋愛模様を楽しむものであるなら


エルメスの優秀な頭にはたった一人だけマレッチの該当者がいた


ビゴバ・D・マレッチ_殿下との交流を深くするために砂漠の国から我が国へと送られてきた人質王子


「すっごい面白いやつなんだ

他のキャラも濃いけどまれっちも負けてないよ」


その人物の話になると恋を謳歌する乙女のようにクスクスと笑う


マレッチ王子か…。



考え込んだ自分と正反対に元気を取り戻したご主人は部屋に着いたよとこちらへ振り返る

妙にその王子に引っかかる…というより引っかかる自分が分からないのが引っかかる

何故だ?

アシクレア様が王子のことを好いてるわけではない

中のおっさんが好きと言ってるだけだ

そこはしっかり振り切れている筈だ…なのに

何故、王子のことを__



いや、今からすることに集中しなくては


僕がするのはアシクレア様の帰還の手助け、ただそれだけだ。

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