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語り手とphantasmagoria

それはあなたがいる世界とは別の世界の話。

その世界には勇者が3人存在しました。


一人は最強の勇者。

もう一人は最弱の勇者。

そして最後の一人は普通の勇者。

普通の勇者の力は最強と最弱の勇者の力を半分づつもっています。


けれど、彼らはそれぞれに性格が違います。


最強の勇者は力は一番強いけれど、戦う気力が全くありません。理由は強さゆえの慢心。


最弱の勇者は自身の力の無さを一番知っているので、勝ち目のない戦いを恐れ、戦おうとしません。


そして普通の勇者は、強くも弱くもない自分がなぜ戦う必要があるのか? と考えました。そして普通の自分が戦いにでて英雄譚を作れたら凄いけれど、普通を好む勇者はそれを望みはしても、面倒だと思う気持ちと、やはり普通の自分には無理だという諦めの気持ちのために、戦いに出ようとしません。


さて、ここからが本題なのです!



語り手をしているあなたがーー彼らの意思を誠の勇者へと導いてください!!


……………………………………

……………………………………

……………………………………


ーーえっ?



ーーえっ? ではありませんよ。


……なに?


……なに? でもありませんよ。




本を読んでいる私の思いと意思に反応するように言葉が、ではなく文章が綴られていく。


もしかして私? 本と会話してる?


『そうですよ。わたくしはPhantasmagoria(ファンタスマゴリア)。走馬灯のように消えゆく意思。世界の翳りの中にある光と闇。そして消えいったその光はまるで幻影のように儚く、闇は海のように広く、心は赤い砂漠の上で希望を願う。数あまたの思念が蒐集(しゅうしゅう)された書物。それがこの【読み直しの魔道書】なのです』



………魔道書? 表紙には神書って書いてあるんだけど? それに何気に文章の言葉に『』(カギカッコ)つけてるし。


ーーあなたは本の言葉なんだから、無くてもいいんじゃ?


『あなたの言葉にも『』つけましょうか?』


ーー別にいいです。私とあなたの会話だから困らないし。


『あなたが困らなくても『これ』を()ている他の人たちが困るかもしれませんよ?』


ーーどういう意味?


『とくに深い意味はありませんよ。気にしないでください。ところで、先程の神書の疑問についての話ですが……。それは恐らく、大天使のガブリエルさんが魔道書、つまり私の力を封印でもするために【神書】と改ざんしたのでしょう。それにもともとこの魔道書には著者はいません。創世の賢者という方が遊びであらゆる世界の心の流れを一つの書物という媒体に蒐集しただけなのてす』


色々わからない事だらけでどこからついたらいいのかわからない。


『ですねぇ〜』


ーーですねぇ〜。じゃないんだけど?


『まあ、おいおい話しましょ。そういうのはーー』


これ絶対話さないパターンな気がする。


『ところで今一番聞きたいことはありますか?』


なんか軽くスルーされたし。


『まあまあ』


ーーじゃあ一つ聞くけど、どうして封印は解けたの?

私、特殊な力とか持ってないのに。


『それはあなたが心を込めて言葉を読んだからですよ。それがわたくしに届いた。たがら神の施した封印も解けた』


ーーそんな簡単なことで?


『想いを込めた言霊の力は偉大なのですよ。魔術の根幹もそれは同じ。基本です。だから特殊な力を持っていないあなたでも封印が解けたのです』


ーーじゃあ言葉にしないで読んでたらどうなっていたの?


『淡々と記された物語(なにか)を読んでお終いだったでしょうね』


そのほうが面白かったかも。


『そんな悲しいこと思わないでください。せっかくあなたとわたくしが出逢(で あ)えたのですから』


ーーでも、あなたは私を観てるのかもしれないけど、私が()てるのはただの文章、文字だし。会ってる気はしないんだけど。


『文章だけのほうがあなたにとって気が楽だと思ってこうしてるだけですよ』


ーー私の心でも読んだの?


『ええ。文章だけだと相手に色々聞いたり話せたりするのに、相手がそこにいると、その人の顔色とか自分のことがどう見られているとか、こんな事は聞かない方がいいとか、聞いてもその後の自分の返答をどうしようとか、その返答をしたら相手はこんなふう思うんじゃないかとか、そんな事ばっかり考えて結局話せない。でも、文章だけだったら普通に会話できるんですよね。相手がそこに居るか居ないかだけなのに』


思考まで読まれててグサッと心が痛む。


『それで言葉が出なくなる本当の理由をわたくしが教えてあげましょうか?』


ーー教えてもらわなくてもわかってる。


(それは私が相手のことを考えてるフリをして、本当は自分のことしか考えていないから。


目の前に人がいて緊張するのは、相手を警戒しているから。それでいて余計なことを色々考えてしまっているから。でもそれって結局自分のことしか考えていない。相手の声やしぐさ。ちょっとしたなにげない視線。


そういうのを目にすると勝手に悪い風に想像して。それはただの自分の被害妄想かもしれないのに。自然と気分が落ち込み萎縮する。


もっと私が自信を持って相手と接っしていけばいいだけなのに。


でも文章だけだったら相手の姿も見えないので余計なことを思わずに済む。それに言葉も考えて選ぶ時間がある。そして相手も、そのように返してくれる。だから楽だし気も遣うけど、人に会って話すよりは疲れない。だから、自然と文章のほうが会話ができる。)



『そうですね。わかっているのなら文章には出しませんが。もう出てしまっていますしね』


『ーーじゃあ、どうしましょう。お話を物語に戻しますが、この勇者の物語。これを進めるためにわたくしはあなたとお会いしたいのですが? 緊張しませんか?』


ーーたぶん、平気。だって……ここまで全部、心の中や思考までみられてるんだから、色々考えても仕方ないって吹っ切れそう。


『わかりました。それではわたく魔道書Phantasmagoria(ファンタスマゴリア)をあなたのイメージの中に流し込みますので。瞳を閉じて深呼吸してください。ーーいいですか?』


すぅーー。

…………………

はぁーー。

…………………


ーーいいわ。


…………………


…………………


『ーーーもういいですよ。目を開けてください』















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