This is Planet Earth
真昼の雑踏。突然誰かに呼ばれた。
僕は両目を見開く。
今まで見えているのに見ていなかった物が一斉に視界にあふれ出す。
「僕は今まで何をやってたんだ!」
学校や家で単調な毎日の繰り返しだと思ってたのに、なんてことだろう世界は刻々と変化してゆく。
なぜ?なぜ今という今まで気づかなかったんだ?
なにもかもに意味がある。信号の明滅、人々の行き来、雲の流れ、風の息吹…ここは惑星地球。僕は地球に住んでいる。
「…けて。助けて!」
宙空に人のおぼろげな姿を見つける。
「大丈夫かい?」
それは蜃気楼のように捕まらない。
「私はアクア。そこからほんの数ミリずれた世界にいる」
「どうすれば助けられる?」
「次元転移装置を捜して!そちらの世界に異動してしまったの」
「それはどこにあって、どんな形なんだい?」
「目を凝らして見なければみつからない。世界に擬態している」
なんてことだ!
だけど、今の僕なら見つけられるという確信があった。
「待ってて、アクア。必ず見つけ出して見せるよ」
「ありがとう」
目を凝らして歩く。
ああ!きっとあれだ!
花壇のヒマワリ。一輪だけ違う方向を向いてる。
太陽を追いかける習性のある花の中に紛れて、それはあった。
「アクア!見つけたよ。どうすればいい?」
「指示するから、操作盤のボタンを順番に押して」
ヒマワリの種がボタンに変わる。
操作すると、ヒマワリもどきの次元転移装置は蜃気楼のように触れられなくなった。
「ありがとうキミ!」
アクアの嬉しそうな声が響き、蜃気楼の世界が、一瞬後、消えた。
「どういたしまして」
僕はささやくように呟くと、一瞬一瞬の情景を忘れないように心のファインダーに映しながら、再び日常に紛れて行った。