体操服
眩しい太陽に目を細めると、隣から声がした。
「あっついね~」
本当にね、と頷きながら、視線を泳がせる。
体操服から伸びる白い手足に、目のやり場に困って無駄に前髪をいじった。
「4時限目の体育ってだるいよね」
「体育は何時限目でもだるいよ」
「言えてる」
ふふ、と笑いあって、額の汗を掌でおさえた。
隣を見れば同じ体操服を着た彼女の額にも汗が滲んでいて、もう少しで玉になり落ちそうだ。
思わず手を伸ばしそうになって、はっとした。あぶない、あぶない。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
黒い髪が揺れる。
ああ。触りたい。
白い肌に、光る汗に、靡く髪に。余すところなく、彼女のすべてに触れてみたい。
「…なんてね」
そんな危ない思考は暑さで溶けてしまえば良いのに。
訝しんで首を傾げる彼女の顎に、玉の汗が伝った。
ああ、たったそれさえも、目の毒になる。
さ迷う視線を晴天に逃がした、青春の夏の日。
2019・1・4