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異世界行ってもヘッドショット!  作者: ソラ
第2章 始まりの街プレイン
6/28

6話 始まりの街プレイン 1

今回の話は少し書き方を変更しています。具体的にはセリフとセリフの間の空白を消してみました。後数話続けてみて合わないと感じたら戻します。

 

 グレンスト王国ルーク伯爵領プレイン

 別名、始まりの街。なぜ始まりの街かというと領主が勇者の物語が好きらしく、この世界で有名な勇者の伝説に登場する勇者が最初に訪れる街の名前から取ってきているそうだ。


 人口は約2万人、ここら辺では1番大きな街だそうだ。街の周りを高さ20mぐらいある大きな壁がぐるっと囲っていて所々には見張り台のような塔が見える。その壁の上では弓や槍を持った兵士が綺麗に整列し、こちらを見ていた。


 この街には多くの人が訪れるらしくそのほとんどは商人や探索者だそうだ。なぜこの街に多くの人が訪れるのかというとここには初心者用の迷宮があるらしく、新しく探索者になろうという者がよく集まりその人達相手に商売をしようとする者が多いからだそうだ。


 つまり、始まりの街という名前には物語からの由来もあるがここから新たな探索者が生まれるという意味もあるらしい。


 閑話休題。俺たちは今そのプレインの入り口にいる。


「着きましたよ、ここが始まりの街プレインです」

「「おぉ〜」」


 馬車の中でムッシュさんから聞いていたがここまで壮大だったとは。ムッシュさん曰く街もいいらしいからな、これは期待が持てるぞ。

 門の前には多くの馬車が並んでいて、大きな馬車に乗った商人らしき人や重そうな装備をした冒険者パーティっぽい人たちも馬車に乗っている。


「さすが始まりの街。人がいっぱいだなー」

「うん、いっぱいだね!」

「では私はここでお別れですね」

「ん? お別れってどういうことだ?」

「いえ、ご覧の通り馬車はここに並ぶのですが歩いて来た人はあちらに並ぶのですよ」


 そう言われて指を刺された方を見ると確かに冒険者っぽい装備をした何人かが門番と話をしている。そしてその後ろにはちらほらと人が並んでいる。


「なるほどな、ムッシュさんともここでお別れかー」

「お別れ……少しさみしい」

「あはは、お別れといっても死別じゃないんですからまた会えますよ。」

「そうだな、じゃあお世話になりましたムッシュさん!またどこかで会いましょう」

「また会おうねー!」

「会いたい時はいつでもサーミッド商会で待ってますよー」


 俺たちは手を振りながらムッシュさんと別れ、徒歩の列へと並んだ。サクは少し暗い顔をしていたが俺が一段落したらサーミッド商会へ行くと約束したらまた元気を取り戻してくれた。


 そうこうしているうちに俺たちの番になった。そういえば市民証とか持ってないけど入れるのか?


「よし、通っていいぞ。次!」

「は、はい!」


 うわぁ、もう見た目が体育会系のそれなんですけど。門番ともなると体力要るんだろなー


「ん? ガキ二人だけか?」

「はい、実は村から追い出されまして……」

「ふむ、その村の名前は?」

「シャイフールです」

「シャイフールだと? 聞いたことがない村だな」


 マジですか、あの村知名度なし? あんな生贄許可してる村が? まぁ確かに山奥にあったとは思うが全く知られてないのか。けど嘘は言ってないし大丈夫だと信じたい。


「はは……山奥にあるので知られてないのも当然かもしれませんね。ですが行くのはお勧めしませんよ? あそこは皆狂ってますから……」

「その村から出てきたお前も同じじゃないのか?」

「いえいえ、皆狂ってるのが怖くてこの子と二人で逃げてきたんですよ」

「そうか、まぁいい。それでこの街に来た理由は? まぁ言わずとも大体わかるが一応聞いておこう」

「この街には冒険者になるために来たんですよ」

「冒険者だと? お前本気で言ってるのか?」


 え!? これはもしかしてやらかしちゃったパターンか!?何か変なこと口走ったか?


「え? もちろん本気ですけど……何か変ですか?」

「あぁ、いやお前の目を見ればわかるさ。本気なんだな?」

「……?ええ、まぁ。それより、この街って入るのにお金いる感じですか?」

「ん? ああ要らん要らん。入るだけでお金取るとか帝国じゃあるまいし」


 帝国? 帝国じゃ入場料みたいなのがとられるのか。まぁこの人の口ぶりから察するに余り良くない国なんだろうな、近づくのはやめておこう。


「それでーですね……あのぉ、その言いにくいんですが村から追い出された身なもので俺たち二人とも身分証明書みたいなのがないんですが、大丈夫ですか?」

「うーむ、そうなると身分証を作るのが手っ取り早いんだが冒険者になるんだろ? じゃあもちろんギルドには行くよな? そこでギルドカードを発行してもらえばいい。それが身分証になるからな。それまでは仮の身分証を渡しておこう、ギルドカードが発行されたらすぐ返しに駐屯所まで来るんだぞ。一応それの効力は1週間だが忘れないうちに返しに来い」

「はい!ありがとうございます!」

「よし、じゃあこれが仮の身分証だ。ほら、そっちのお嬢さんも。ほれ」

「おじさんありがとう!」

「よし!じゃあ二人とも、ようこそ始まりの街プレインへ!」


 こうして俺たちはプレインの街へと入ることができた。一時はどうなるかとひやひやした場面もあったがなんとか乗り切った。


 街の中はムッシュさんが言っていた通りすごい活気にあふれていた。そこらじゅうから聞こえてくる客寄せの声、屋台から香る料理の匂い。そのどれもがこの街の良さを語っていた。


「本当に異世界なんだな」

「リョウー早く行こうよ!!」

「あっおい!待てって!」


 俺はサクに手を引かれるがままに街中へと連れていかれた。





 ★★★




 初めて来たのにも関わらずサクが俺をあっちこっちに連れ回し俺はもうヘトヘトだ。目的の冒険者ギルドはどこにあるかもわからないし、腹は減るし少し休憩したい。


「ハァハァ……サク、休憩しよう。俺が限界だ」

「えぇーもっといっぱい見て回ろうよー」

「無理……俺、死んじゃう」

「仕方ないなーリョウはここで休憩してて。私あの人に冒険者ギルドの場所聞いてくるから!」


 サクが俺を置いて走って行ってしまった。俺より小さいサクの方が体力有り余ってるってどういうことなんだ。温室育ちとはわけが違うのかな?


「にしても……本当に異世界なんだな。どっかのテーマパークと言われる方がマシだったな」

「リョウ、どうしたの?」

「なんでもないさ。それで、場所はわかったのか?」

「うん、あっちだって! ついてきて!」


 マジ無理……と内心ではため息をつきつつサクに服を引っ張られるままついていった。








「ここだって!」

「ふーん、これが冒険者ギルドねぇ」


 サクに連れられたやってきたのは明らかに雰囲気の違う建物だった。看板には剣とドラゴンっぽいのが描かれており、壁にはガラスもハマってありそこらへんの建物とは全く違う感じがする。まさに冒険者ギルドという感じだった。


「よし、行くか。すいませーん」

「はいはい、冷やかしなら帰ってねー。ハァ……」


 接客態度悪っ?! しかも冷やかしって……どういう教育してるんだこのギルド。しかも全然人が居ない。入り口からじゃ目の前の態度悪い受付嬢さんしか居ないように見えるぞ。

 だがその受付嬢さんは茶色のロングヘアーで顔はとても整っていて日本じゃ自分の嫁だと言い出すバカ共が湧きだすだろうってぐらい綺麗だった。って話が逸れてしまった。


「あ、あの俺たち冒険者に――」

「冷やかしなら帰ってって言ったでしょ!ったく」

「いや、冷やかしじゃなくて本当に冒険者になりにきたんですが……」

「え……嘘!?本当に!? それならそうと早く言ってよ!」

「いや言ってたじゃん、なあサク?」

「リョウはずっと言ってたよー」

「それは申し訳ありませんでした! コホン。では改めて。ようこそ冒険者ギルドプレインの支部へ! 私たちはあなたたちを歓迎します!」


 受付嬢さんの声だけが響き渡った。

 本当に人が居ないんだな。普通はもっと活気があって怖ーい低ランク冒険者がこっちをいびってきたりすると思ってたんだが。


「あのー私達って人が全然見当たらない気がするんですが……みんな出払ってたりします?」

「うぐっ。そ、そうなのよ!みんなクエストに向かってて人が居ないのよ、うん!」


 受付嬢さんがものすごく焦った顔で説明してくれたが、おそらく本当は冒険者自体が少ないとかそんな感じなのかな? まぁテンプレ回避できることに越したことはないんだが。


 しっかし本当に人が居ないんだな。クエストボードっぽいところには2、3枚しか紙が貼られてないし、そもそも受付嬢が一人だけって時点で察しがついてしまう。


「もう、何見栄張ってるのよルーシェル」

「うぅ……でもこうでも言わないと〜セラスだって冒険者が少なくて困ってるでしょ〜」

「はいはい、ちゃんと受付嬢の仕事をしなさい」

「は〜い」


 この受付嬢さんはルーシェルさんというのか。そして二階から降りてきた金髪碧眼でサイドテールの人がセラスさんね。ルーシェルさんがセラスさんに敷かれてるんだな。


「気を取り直して。本日は冒険者登録ということですよろしいですか?」

「はい。あっ、こいつも一緒で」

「えっ? あのーこの子もですか?」

「私も冒険者になるの!」

「安心してくれ、こいつは多分俺より強いよ」

「はぁ……わかりました。ではこちらに名前と現在の職業(ジョブ)、それから年齢。あとは最も得意とするスキルを備考欄に書いておいても損はないでしょう」

「サクは自分の名前は書けるか?」

「うーん、わかんない」

「そうか……参ったな」


 そもそも俺が今何語で話しているのかすら分からんのに文字を書けとか無理な気がするんだが。しかもサクもかけないときた。

 こういう時は当たって砕けるのみ。とりあえず俺の名前を書いてみればわかる。一応カタカナで書いてみるか。


「これ読めますか?」

「? 読めますがどうかしましたか?」

「いえ、なら良いんです。本当に」


 おお!さすが神がよこした言語翻訳!だけど、どう見ても俺が書いたのは日本語じゃないんだよな。見たことない文字で書かれてる。強いて言うなら世界史で習った楔形文字に似てるな、読もうと思わなければただの棒の集まりだ。


 とりあえず俺はリョウで登録した。職業なしって書くのが誠に遺憾であったが事実だから仕方ない。一応得意スキルには鑑定を書いておいた。料理でも良いかと思ったがこの世界に来て料理という料理をしたことがなかったため仕方なく鑑定にしておいた。


 サクに関しては得意スキルというか固有スキル以外は採取ぐらいしかなかったのでそれを書いておいた。


「お二人ともジョブなしって本当ですか?」

「ああステータス見てもなしって表示されてるし」

「このご時世、ジョブなしの人なんか初めて見ましたよ」

「あはは……。なにぶん田舎から来た身なので」

「はぁ……良いですか? 今この世の中、皆10歳を超えるとジョブ登録しにくるものですよ。なのにその年でジョブなしとは……本当にどんな田舎から来てるんですか」

「はぁ、すいません」

「でも大丈夫です!この国の規則として最初に職業石を使う際は料金を頂きませんので。では早速ジョブを決めに行きましょうか!」


 ルーシェルさんはそう言って俺たち二人を奥の部屋へと連れ込んだ。

 連れ込まれた部屋の真ん中には水晶玉っぽいものが乗っている胸ぐらいまでの高さがある石柱一本だけだった。よく見ると土台の石柱には様々な模様が刻まれている。


「ではこれに触れてみてください」


 言われるままに水晶玉に触れると目の前にいろんな職業が書かれたスクリーンが表示された。


「ほほう、ジョブ候補に錬金術師がありますね。錬金術スキルをお持ちなんですか。他にもたくさん……んん!?このジョブは初めて見ます、狙撃手……ですか。興味深いですね」

「そうなんですか、じゃあそれでいいや」


 スクリーンに書かれてある狙撃手という文字を触るとスクリーンは消えてしまった。

 俺はすぐにステータス画面を確認すると職業のところがなしから狙撃手へと変わっていた。


「狙撃手ねぇ……まあ俺にピッタリちゃピッタリだな」

「次は私の番!」


 サクが俺と同じように水晶玉に触れると同じようにスクリーンが表示された。だが俺と比べて表示されているジョブの数が少ない。

 そんな数少ないジョブの中で俺は気になるものを見つけた。


「ん? なんだこれ。吸血姫?」

「吸血姫!?なんですかこのジョブは!?私初めて見ましたよ!一体どんなスキル持ってるんですか!」

「うーん、秘密だな」

「秘密ー」

「はぁ……たしかにそう簡単には教えてくれませんよね……」


 それにしても吸血姫ってなんだよ、職業じゃねえだろ。いや、王様が職業なら姫様も職業になるのか?

 でもサクが姫様っていうのもなぁ……


「ところでこのジョブってのは何の意味があるんですか?」

「え、そこからですか。あなたたちはまず冒険者の講習を受けたほうが良いんじゃ……コホン。ジョブというのはその人の持つスキルに大きく関係してきます。先ほどリョウさんのジョブ候補には錬金術師というのがありました。それはつまりあなたが錬金術スキルを持っているから表示されたのです。」

「つまり個人が持ってるスキルによって表示されるジョブは変わってくるってことか」

「その通りです。そしてジョブはステータスの伸び方にも影響を与えます。例えばレベルが上がるとHPやMPといったステータスが少なからず伸びますよね? それが選んだジョブによって伸び方に偏りが出てくるんです」

「つまり戦士系を選べば筋力とかが上がりやすくて魔法使いとかになればMPが上がりやすくなるってことか」

「はい、その通りなんですが……これって常識ですよ?」

「あはは……その常識すらない田舎もんだよ」


 けどどっかゲームっぽいんだよな。まぁ、あの廃人女神のことだしどうせこの辺もどっかから引っ張ってきたんだろう。


「ところでサクちゃんはどうします?」

「吸血姫でいいんじゃねえか? お似合いだし」

「わかった!じゃあこれにする!」


 サクは迷いなく吸血姫のジョブを選択した。その瞬間サクの体から部屋を満たすぐらいの強烈な光が放たれた。

 その光は……俺がこの世界に来るときにみた光に酷似していた。


「おい!サク!大丈夫か!?」

「サクちゃん!?これは一体!?」

「私は全然平気だよ。むしろ心地いいよ」


 部屋を満たしていた光が収まった。とはいえ急なことだったのでまだ目がチカチカする。一体何が起こったんだ?


「リョウ、大丈夫?」


 サクが心配した声でこちらに来る。俺の目のチカチカも収まってきた。

 ようやく目が見えるようになったと思ったら目の前には超絶可愛い美少女が居た。


「えっと……どちら様でしょうか?」

「サクだよ!サク!」

「ええええええええええええ!?」


 驚きのあまり思わず口から声が出てしまった。

 今俺の前にいるのは身長はおそらく俺と同じくらいで腰までありそうな長い銀髪も持ち、紅蓮のように紅い瞳を持っている女の子だ。いや、これを女の子と言っていいのだろうか。下手したら女性の域にも入りそうな胸を持ってらっしゃる。


「お前……本当にサクなのか? 俺の知ってるサクとは見た目が大分違うんだが……」

「見た目が変わるだけでそんなに驚くこと?そりゃまぁたしかに? 背は伸びたし胸も少し大きくなったけど……正真正銘私はサクよ。わかった? お、に、い、ちゃ、ん!」


 言葉遣いまで変化しているんですけど……。言うなればサクの大人バージョンってところか?しかもお兄ちゃんって……その身長でそれは無理があると思うんだが……


「あのぉ……ジョブって身体にまで影響するんですか?」

「そんな話聞いたことないです!私には何が何だか……と、とりあえずギルマス呼んで来ます!」

「え? あ、ちょっと! 行っちゃった……どう説明すればいいんだよこれ……」

「別にいいじゃん、どうせいつかはバレるんだし」

「いやまぁそうだろうけどさ……ところでサクさんや、元の大きさには戻れるのか?」

「うーん、こうかな?」


 俺の目の前でサクが元の大きさまで戻った。さっきのはさっきのでめっちゃ美人だったんだがこっちはこっちであどけなさがあって可愛いんだよな。

 いや待て待て俺。誤ってもロリコン(そっち)方面に目覚めるんじゃない。俺は犯罪者にはならんぞ!


「ほう、君たちがルーシェルの言う新人かな?」


 二階から降りてきたのは茶髪で左目に眼帯をつけスーツっぽい感じの服を着た男だ。

 眼帯をつけてるのが気になるが間違いなくイケメンの部類に入るだろう。


「ギルマス!この子が……! あれ?」

「俺の連れがどうかしました?」

「あなた、さっき大きくなってなかった?」

「人が大きくなるなんて無理でしょ」

「無理〜」

「い〜や、絶対大きくなってました!嘘つかないでください!」

「はぁ……無理だったか。サク」

「はぁ〜い」


 俺が声をかけるとサクがさっきの姿へと変わっていく。

 ルーシェルさんならいけると思ったんだけどなぁ。伊達に受付嬢してないってことか。


「これは……!サクさんといったかな? 君、もしかして固有(ユニーク)スキル持ちじゃないのかな?」

「えっ、どうしてわかったの!?」


 サクが俺の心の声を代弁してくれた。だが実際なぜサクが固有スキル持ちだとわかったんだろう。もしかしたらギルマスも鑑定スキル持ちなのかもしないな。警戒はしておくか。


「いやはや、僕もギルドマスターになってから初めてだよ。固有スキル持ちの人に会うなんて。いやーだって固有スキル持ってる人って世界でも数えられるくらいしかいないよ? そんな人が来てくれるなんて、僕は本当に幸運だ!」

「あの、それでどうしてサクが固有スキル持ちだとわかったんですか?」

「ああ、それはね――」

「ギルマス、先に自己紹介しておいたほうがいいんじゃ」

「おお、そうだったそうだった。僕の名前はグレイ。姓はないよ。一応ここのギルマスということになっている。」


 ん? 名字がないってことは一般人が名字持ってるのはおかしいのか。

 危なかったな……俺さっき書類にフルネームで書くところだった……。


「俺はリョウ。んでこっちが多分サクだ」

「多分とは失礼ね。私はサクだって何度も言ってるじゃない」

「あーすまんな、ギャップがありすぎて」

「もう、いい加減に慣れてよね。」


 サクが呆れた顔で言ってくるがそんな簡単に割り切れるかっつーの。けどこっちはこっちでありだから良しとしよう。


「話を戻そうか。それでなぜ固有スキル持ちだとわかったのかだったね。理由は色々あるが大きく分けて二つある。一つは新たなジョブの現出。そもそもジョブってのは大体が判明済みなんだよ。例えば戦士のジョブを取るにはどんなスキルは必要でどんな効果があるのか…とかね。あとは種族によっては特別なジョブもあるけどそれも大まかには判明しているんだよ。エルフ然りドワーフ然りね。でも本当に稀にだけど今までになかったジョブが候補として現れることがある。そういう新たなジョブが現れる人は共通してみんな固有スキル持ちだったんだよ。【狂化(バーサーク)】とかはその一つだね」

「なるほどな。でもそれだけじゃあ固有スキル持ちかなんてわかんないだろ、今までにない所持スキルの組み合わせとか」

「たしかにそれも一理ある。でも今サクさんが大きくなったことで固有スキル持ちって確信した。固有スキル持ちってのはね、精神的身体的になにかしらの影響が出るんだよ。それも所持している固有スキルによって異なるけど。例えばさっき上げたバーサークを持ってる人は喧嘩っ早いことで有名になった人だ。」

「狂化……つまりめちゃくちゃキレやすいっていう精神的な影響か」

「そう、そしてサクさんは体の大きさを変えることが出来る。つまりそれは身体的影響があるってことだ。そこから導き出されるのはサクさんが固有スキル持ちってことさ」

「へぇ……すごいね。私は固有スキル持ちってバレたのはそういうことね。これからは気をつけないとね」


 なるほど……グレイさんの説明でなぜバレたのかはよくわかったが固有スキル持ちだとなにかしらの影響があるってことは俺にも影響あるってことじゃね? うわぁすっげぇ不安になってきた。


「そうか、安心したよ。サクが呪われてるってのはやっぱり嘘だったんだな。」

「それでどうするのリョウ? バレちゃったわよ?」

「そうだな……なぁグレイさんよ、このことについては秘密にしてくんねーか? 面倒ごとは避けたいんだよ」

「そうだね、君たちが冒険者になるっていうなら秘密にしておくよ」

「えらく簡単な条件だな? 何か裏があるんじゃねえか? 上に報告するとかよ」

「上には報告しないさ。冒険者の素性については詮索しないのが普通だし何より上に目をつけられたら何をされるかたまったもんじゃない」

「ふーん。で、本音は?」

「これ以上人が来なくなるとやっていけない」

「どんだけ財政難なんだよ!」

「そういわれても仕方ないだろう? このご時世みんな探索者志望なんだから」


 門番の人が言ってたのはこういうことだったのか。

 これは……思ったよりも冒険者の待遇はよろしくないのかもしれん。

 けどサクのことがバレちまったし仕方ないか。


 諦めとともにため息をつく俺であった。




読んでくださりありがとうございました。

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