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異世界行ってもヘッドショット!  作者: ソラ
第1章 異世界へ
3/28

2話 森と少女

 

 まばゆい光が収まったのか、だんだん目が見えるようになってきた。失明するかと思ったがそんなことにはならずに済んだので良しとしよう。周りは木々に囲まれていて地面には芝生ほどの背丈の雑草が生い茂っている。昼間だからなのか空は明るく風が体を通り抜け、澄んだ空気が肺を満たす。そんな中、異世界での記念すべき第一声は―――


「寒っ!!」


 そう、冬なのかはわからんがとにかく寒い。日本はまだ残暑が厳しく夏仕様の制服を着たままこっちへ飛んできたが気温差が激しい。日本の冬程ではないがこのままの格好だと風邪を引きそうだ。


「うぅ…寒い。流石にこの寒さはこの貧弱な体には堪えるぞ。焚き木でも…って火魔法とってないんだった!」


 この寒さでこの森を歩き続けるのは少し厳しいな。こんなに寒いんだったら火魔法取っておくんだった。こいつは失敗したな。だがなぁ…毒で死ぬのは御免だったしそれで死ぬことがないから良しとするか。


 そういえば森なんだから食べられる果実とかないのか?ちょっと鑑定……ってそういえばスキルってどう使うんだ?ステータスも見てないな。こういうのだとステータスオープンとかが定石だよな。とりあえず西に向かって歩きながら確かめよう。


「ステータスオープン!」


 ―――――――1/3――――――――


 名前  佐々木 (ササキ ) (リョウ)


  Lv 1

  種族:人種

  職業:無し

  所属ギルド:無し


  HP 25/25

  MP 115/115


  筋力:D

  知能:C

  俊敏:C

  器用:C

  運:A


 ―――――――――――――――――


 ブォンという音が出てきそうな演出で目の前にゲームチックな画面が出てきた。これは他人にも見られるのだろうか?要検証だな。

 

 だがこれはなぁ……我ながら流石というべきかへこむべきか……日本の俺に合わせてるって言ってたが流石に低すぎじゃね?しかも無職って……確かにこの世界じゃ無職かもしれんが日本では学生っていう立派な職に就いてたのに、いざ無職って言われると少しへこむな。魔力と運が高いだけマシと考えるか。次の2ページ目に進むか。



 ―――――――2/3――――――――


 習得スキル


【鑑定Lv10】【調理Lv10】【錬金術Lv4】【空間魔法Lv4】【毒耐性Lv4】






 ―――――――――――――――――



 2ページ目はスキル表か。4割でレベルが4ってことは上限が10ってことだな。調理で衣食住のうち食の部分は抑えたが肝心の材料がないといまいちわからんな。その辺は追々検証していくことにしよう。次は3ページ目だな。



 ―――――――3/3――――――――


 固有スキル


【現代武器Lv10】《狙撃銃》



 ―――――――――――――――――



 現代武器は固有スキル扱いなのか。つまり普通の人はステータス画面が2ページまでしか存在しないってことか。うっかり漏らしたら面倒になりそうだな。とりあえず隠しておくか。


 それにしてもスキルってどう使うんだ?ステータスは言葉にする事で見ることができたが他も一緒なのか?とりあえず念じてみてダメだったら口にして言うか。


(鑑定スキルを【鑑定】)


 するとステータス画面のように目の前に鑑定スキルについて表示された。スキルレベルが10だからかわからんが内容がとてつもなく長い。まるで広辞苑のごとく事細かに書いてある。これだけ長いと視界の邪魔だな。寒さを凌げる場所についてからじっくりと読もう。


 ――――――――――――――――――――――――



 しばらく歩いていると岩肌にある大きな洞窟の入り口が見えてきた。もしかしてダンジョンか?俺のイメージするダンジョンって街中にあるイメージだったんだが。実はダンジョンじゃなくてただの洞窟で盗賊達のアジトでしたってこともあるか。一応鑑定してみるか。【鑑定】っと。



【鑑定結果:一本道の洞窟。地下深くに鉄鉱石の鉱脈あり。崩落の心配無し】



「おおっ!」


 驚いてつい声を出してしまった。鑑定って役にたつんだな。流石に生体反応まではわからないか。そこまで行くともはや【索敵】スキルになるもんな。しかし、そうなると何かが潜んでいるのかすらわからんな。相当奥まで続いているのか、入り口からは奥が見えないし、もしかすると何か大型のモンスターや魔獣が潜んでるかもな。


 だがここまで来てしまっては奥を探索しておきたい。何か厄介なモノが潜んでいるかもしれんし、何よりこの寒さを凌げる拠点が欲しい。ここまで寒いと【火魔法】スキルを取っておけばよかったと常々後悔する。ここはステータスの運を信じて一か八かの賭けに出ることにした。何もないなら拠点に、大型のモンスターがいるのならここは諦めよう。


 それにしてもこの洞窟、縦は約5メートル、横は2、3メートルってところだが果てが見えない。体内時計では結構歩いているつもりなんだが、灯の一つすらないな。ここまで暗闇の中を歩いて来たがどうにも気配というものが―――


 キュケケケケケケ!!


「おわぁあああああ!」


 なんかもう明らかにこちらを狙ってますみたいな声が天井からしてるんですけど!?蝙蝠かな!?蝙蝠型のモンスターかな!?そんなことを頭の中で思いながら俺は灯ひとつない真っ暗の中ひたすら奥に走った。


 一体どのくらい走ったのだろうか。全力疾走なんて久しぶりだ。あの変な鳴き声は聞こえなくなったが体力が限界に近い。人ってこんなに速く走れるものなんだな。人のすごさを改めて感じさせられる出来事だった。


「それにしてもどんだけ長いんだよ、流石にこっちも体力が限界だぞーいい加減に終わってくれ」


 一人寂しく独り言をぶつくさと呟きながらさらに奥へ進んで行くと、奥に松明らしき明かりが見えてきた。仮に松明だとしたらこの世界初の文明人との出会いかもしれない。そんな期待を胸に抱きながら俺はさらに奥へと進んだ。


 奥は行き止まりだった。少し広い場所になにやら祭壇みたいなものがあって、中心には石櫃のようなものの上に両手両足を鎖で繋がれた中学生くらいの少女と周りにはお供え物とみられる食料の数々。そして少女の横には少し大きめの鉈が置いてあり、正面の壁にはなにやら壁画のようなものが書かれていた。


 少女が鎖に繋がれているのは日本人として助けてあげたいのは山々だが、もしかしたら何かの罰か封印とかかもしれない。流石の俺も藪蛇はしたくないので、声をかけてからあわよくば食料を少し分けてもらおう。


「おーい、起きてるか?そもそも生きてるか?」


「あ……あの、あなたは一体誰ですか?」


 四肢を鎖で繋がれているので目を開けて喋る少女。髪は銀髪で服装はまるで奴隷のようなボロボロの雑巾みたいな服を着ているだけ、痩せ細り肌は真っ白だった。


「俺は佐々木遼。職業は、うーん一応冒険者希望?ってところか。君は?なんでこんなところにいるんだ?」


「私は……シスリア。私は神様の怒りを鎮める為にここにいるの」


「神の怒りを鎮める?」


「私の村は……数年に一回女の子が一人ここにきて……神様と出会って怒りを鎮めてもらうの。そして神様と一緒になるの」


 神と一緒になるだと?それはつまりあれか。あいつと同化するってことか?ダメニートの道にまっしぐらな気がするんだが。


「それで怒りを鎮めた女の子はどうなったんだ?村に帰ってきたのか?」


「どうして帰って来るの?神様と一緒になるんだから私たちはずっといっしょだよ」


 なんだよそれ……神と一緒になる?ずっといっしょ?ここにきたやつは皆村には帰っていない。つまりここで誘拐なり殺害なりが行われてるんじゃないか?だが証拠がないな……仮に殺人があったら血なりなんなりが残ってそうなもんだが、そんなものがなに一つ見当たらない。何より神はこんなところに現界するものなのだろうか。


「なあ、お前の言う神様ってのはどんな姿してるんだ?特徴とかないのか?」


「神様はそこに描かれてるよ?ほら、その剣持ってる人の右側の」


「これがお前の言う神様……だと?」


 壁画には確かに剣を持っている人物がいる。だがその右側にいるのはどう見ても猪だ。これが神というのはおかしい。少なくとも俺の知ってる猪は喋らないし、なによりも俺が実際に見たのは猪じゃないからだ。


「残念だが、お前にひとつ言わなければいけないことがある」


「なーに?」


「お前の言っている神様は神様じゃないんだよ。これはただの猪だ。そしてこの壁画はおそらくだが狩りの豊漁願いに描かれたもの。ここにいてもお前は神とは出会えないし、生きることも出来ない。」


「どういうこと?」


「つまり……その、なんだ。今のお前には2つの選択肢がある。一つ目はここで死ぬ。おそらくだが猪が来てお前を食べる。二つ目は村に帰る。まあこれは俺が猪を倒せるかどうかによるが。どうする、俺はどちらを取っても構わない。選ぶのはお前自身だ。」


 ぶっちゃけ俺が猪を倒せる可能性は未知数だ。【現代武器】スキルがレベル10だから行けるかもしれないというだけで実際はわからない。だが救えるかもしれない命があるのにその可能性に賭けないなんてことは俺はしたくない。


「私は……二つ目を取る。私は私の村に帰りたい!」


「そうか、俺に賭けるってことでいいんだな。それじゃあ、まずは猪が来るのは何時だ?それによって今からするべきことも変わって来る。」


「たぶん夜だと思う……今までもお昼に連れていかれてたから……」


「夜か。まだ時間はあるな、少し質問しても良いか?」


「うん、良いよ」


「なんで今回はお前が選ばれたんだ?抽選か?」


「それは……たぶん私が忌み子だからだと思う」


「忌み子ってどういうことだ?なんか呪われてんのか?」


「私たちの村は犬人族の村なんだけどね、生まれてきた私は犬人じゃなかったの。呪われた翼が生えてきたり、傷ついてもすぐに治っちゃうの」


「それってもしかして―――」


 俺は急いで【鑑定】する。シスリアのステータスはとんでもなかった。


 ――――――――1/3――――――――


 名前 シスリア


 Lv4

 種族:吸血鬼

 職業:無し

 所属ギルド:無し


 HP 20/40

 MP 320/320


 筋力:A

 知能:B

 俊敏:A

 器用:B

 運:B


 ―――――――――――――――――




 ―――――――2/3――――――――


 習得スキル


【採取Lv3】


 ―――――――――――――――――



 ―――――――3/3――――――――


 固有スキル


【吸血Lv6】【再生Lv7】【不死Lv10】



 ―――――――――――――――――


 吸血鬼、ステータス、そして固有スキル。どれもが俺を驚かすには十分だった。なんなんだこの固有スキルとステータスは!?翼が生えてきたのは種族が吸血鬼だからであり、傷がすぐ治るのは再生スキルがあるからか。これは伝えるべきなのか……?いや、今はまだ早いな。少なくともここを出るまでは黙っておこう。


「どうしたの?なにかあった?」


「いや、なんでもない。それよりもひとつだけ約束してほしい。俺のスキルについては誰にも喋らないでくれ」


「うん、わかった!」


「ありがとう」


 次は俺のスキルについて調べるか。固有スキルを【鑑定】っと。


【鑑定結果:このスキルは紙に狙撃銃の名称とアタッチメントを書き、書かれた紙を破ることで狙撃銃を召喚可能。なお召喚には最大MPの8割を消費する。】


 紙!?紙が無い!仕方ない、カッターシャツを破るか。ペンは……ないから血で書くしかないのか。


 俺は鉈で指先を切り、血で破ったカッターシャツにドラグノフ狙撃銃、10倍暗視スコープ、と書き込み破った。すると目の前にしっかりとドラグノフ狙撃銃が召喚された。


読んでくださりありがとうございます。

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