1.5章 大食い大会と家族の絆
今回は『二十二の夜騎士』に焦点を当てた短編です。
それは、ある日の午後。
「天鈴商店街主催ホットドッグ大食い大会?」
椅子に座っていた片眼鏡の男──記事旗清利は、自分に突き付けられたチラシに大きく書かれた、一文を音読した。
「明日の午後、特設会場で行われるんだな。そして、現在もまだ参加者を募ってるんだな!」
チラシを持っていた小太りの少年──八重田勝重が、まるで欲しかった玩具を買ってもらった子供の様に嬉々として語る。
「へぇ。それで、それがどうかしたのですか?」
「おいらも出たいんだな‼︎ ホットドッグをお腹いっぱい食べられるだなんて、夢みたいなんだな‼︎」
「別に良いんじゃないですか? 私達、しばらく暇ですし」
「……でもおいら達、組織に命を狙われてるんだな…………」
それまで明るかった勝重の表情が、途端に暗くなった。
清利達『二十二の夜騎士』は、エデン計画の失敗後、ある事をきっかけに、所属していた異能力研究組織『マテリアル』から離反した。
向こうは現在、こちらの命を狙っている。
同じ『二十二の夜騎士』に所属している人物の能力のお陰で、この、梅木沙知とその子供達が住んでいる屋敷が攻撃される事は無い。
桃花やクァールなど、一般人ではまず勝てない強力な能力を持っている者は今も堂々と外出しているが、戦闘向きの能力を持たない勝重は、そうはいかない。
「それが、どうかしたのですか?」
何を言っているんだと言わんばかりの表情で、清利は首を傾げた。
「私と幽姫もついて行くので、その心配は要りませんよ」
「つ……ついて来てくれるのか? なんだな……‼︎」
驚く勝重に、清利は軽く微笑む。
「当然です。私達は、家族なんですから」
「家族……」
勝重はその言葉が好きだった。それが、血の繋がらない彼等と自分の間にある、見えない強い繋がりを意味していたから。
「さて」
清利が席を立つ。
「早速明日の為に、準備を始めるとしますかね」
「準備?」
「大会中に、勝重の命が狙われるかもしれませんからね。それを防ぐ為の準備です」
「……ありがとうなんだな、清利。そんな事までしてくれて」
その心からの感謝の言葉に、口元を歪める清利。不気味に見えるそれは、彼が喜んでいる確固たる証拠だ。
「例には及びませんよ。これが、『役立たず』な私が唯一出来る事ですから」
「また言ってるんだな……。清利は、少しも役立たずなんかじゃないんだな」
「……お世辞でも、そう言ってくれて嬉しいですよ」
お世辞じゃない。そう言おうとする前に、清利は違う部屋へと向かっていった。
勝重は、清利の過去を知らない。だからどうして自分の事を役立たずだと自嘲するのかも、よくわからない。
でもだからといって、彼の過去を知りたいとは微塵も思わなかった。家族とは言え、話したくない事の一つや二つはあるのだ。
とりあえず勝重は、明日に向けて食事の量を減らす事を決意した。
**
清利が最初に向かったのは、自分達の母親である梅木沙知の部屋だった。
彼女はそれまで読んでいた異能力に関する本を閉じて、彼の話にしっかりと耳を傾けていた。
話を終えてから、沙知は感想を言う為に口を開く。
「へぇ。如何にもあの子が食いつきそうなイベントね」
「……それで、どうでしょうか」
「勿論、答えはイエスよ。母親として、あの子が無事に大会を終えられるように全力でサポートするわ」
「ありがとうございます、母さん」
「……あーでも、あと二人くらいは誘っておいてね。私一人じゃ力不足だと思うから」
彼女の持つ能力は、一度に一人に対してしか使えない。なので相手が多数だと不利になる。本人の言う通り、彼女以外にも助っ人は用意しておくべきだ。備えあれば憂いなし、という言葉もある。
「わかりました……。ではまた、昼食の時間に」
頭を下げてから、部屋を出る。
梅木沙知は清利が扉を閉めてから、安堵の息を吐いた。そして表情を緩める。
「良かったわ……何も変わりなくて」
その直後、双眸に決意を意味するであろう光が灯された。
「だからこそ私は、まだ諦められない……」
**
「いいよ、手伝ってあげる〜△」
ポテトチップスを食べながらドラマ鑑賞をしていたキリハ=ロールシャッハは、二つ返事で了承した。
提案したのは清利だが、まさか彼女があっさり受け入れてくれるとは、流石に思ってもいなかった。
「珍しいですね……。貴女らしくもない」
「そうかな〜? ウチは前から、こんな人間だよ?」
キリハはヘラヘラと笑う。目はずっとドラマに向けられているというのに、話はしっかりと聞いている。彼女は二つの事を同時に出来る人間、という事だ。
《世界》という、大アルカナにおいて最も強力と言える名を冠している彼女は、言葉で言い表せる様な簡単な性格をしていない。
故に清利は、彼女に少しだけ苦手意識を持っていた。
「…………一応、理由を聞いてもいいですか?」
「理由なんて、一つだけだよ。かっちゃんとウチが家族、だからだよ△」
「家族……」
意外だ。彼女の性格的に、この繋がりを心の何処かで嫌がっていたのでは無いかと、清利は思っていた。
だがそれは、単なる思い込みだったのかもしれない。
「ウチはさ」キリハが突然、有無を言わせない真剣な声音で始めた。「この眼の所為で、パパやママに迷惑をかけてきたんだよね」
眼というのは、彼女の持つ能力の事を言っているのだろう。
『その目に映るモノだけが世界でいい』。「術者の視界の範囲でなら、例外を除いてどんな事も起こす事が出来る」異能力。その気になれば目を合わせた者を殺す事だって出来るし、心霊現象だって意図的に起こす事だって出来る。
小さな視界を支配する事の出来る能力。だから彼女は、《世界》の名を冠していた。
人が持つにはあまりにも強大過ぎる力を生まれながらに持っていた彼女は、無意識的にそれを行使し、周囲の人間に不幸を振りまいてきた。
「最終的には、二人とも殺しちゃった。二人と目を合わせながら、「消えてしまえばいいのに」って願っちゃったから」
自嘲気味に、寂しく笑うキリハ。今の彼女には、いつもの狂気は何処にも無かった。
「だからウチは、この力が憎い。こんな力を授けた神様って存在が憎い……」
「…………」
清利は黙り込む。普段楽しんで能力を使っていた彼女が、それ程までに自分の能力の事を嫌っていたとは。
「でもさ。みんなはウチの眼の事を、怖がらないでしょ? 流石に最初は少し怖がってたけど、それでも距離を置いたりはしなかった。それが嬉しかったんだ〜」
「キリハさん……」
「だからこれは、恩返しの一部だよ。こんなウチを受け入れてくれた、大好きな家族への……ね」
今までずっと、キリハ=ロールシャッハという人間を勘違いしていた。
誰よりも戦いを好み、誰よりも己の異能力を愛する、狂人だと思っていた。
でもそれは、どうやら彼女の築いた単なるキャラ付けだったようだ。
本当の彼女は、欲しくも無い力に苛まれていた、自分となんら変わらない、どうしようもなく優しい人間だった。
清利はキリハの頭に手を乗せ、優しく撫でた。
「き、急に何するの⁉︎」
キリハの頬が赤く染まる。
「良い子なんですね、キリハさんは」
「い、良い子じゃないもん‼︎ ウチは《世界》のキリハ=ロールシャッハ‼︎ 『二十二の夜騎士』一の狂人、なんだから‼︎」
「はいはい、そうですね」
この時から、清利はキリハの事を可愛い妹として見るようになった。
**
「構わないよ。どうせ明日は暇だったからね」
清利がキリハの次に声を掛けたのは、庭の手入れをしている最中だった《魔術師》の八岐零式。今の彼はいつものマスケラやタキシードといった変わった姿をしていないので、ただの髪の赤いイケメンだ。
そんな彼もまた、二つ返事で引き受けてくれた。これも、清利からしてみれば意外だった。
零式は母親である梅木沙知に心酔こそしているものの、他の家族にはあまり関心が無いものだと思っていたからだ。
「えと、一応理由を聞いても良いですか?」
「俺様も家族の一員だ。同じ家族の為に動くのは、当たり前の事だろう?」
「……意外です。失礼かもしれませんけど、貴方はずっと、母さん以外にはまったく興味が無い人だと勝手に思っていました」
「本当に失礼だな。俺様はそんなに冷たい人間じゃないぞ?」
「……すみません」
「ま、それっぽい雰囲気を醸し出してる俺様にも非はあるけどな」
零式は笑いながら、清利の背中を叩く。彼もキリハ同様、そういうキャラクターを演じていたようだ。
「一つ聞いてもよろしいですか?」
「勿論だ」
「どうして貴方は、ああいったキャラを演じていたんですか?」
「……素の自分だと、相手に舐められるかもしれないからな。相手が怖気づいて戦う気も失せるくらいの気迫じゃないと」
「なるほど……」
「まあでも、あの吸血鬼と戦った時は、本気で『本気』になったけどな」
「吸血鬼、ですか……」
エデン計画を失敗に導いた原因の一つとされる裁川千歌に味方していた美少女、クーニャ。彼女はこの地球に残っている唯一の吸血鬼を自称していて、実力も相当なものだった。
戦いを実際に見ていた訳では無いが、『悲しみをも焼き尽くす赫い赤』という単純かつ強力な能力を持っている零式でさえ、まるで歯が立たなかったという。
「とにかく」零式が話を切り替える。「これからは俺様に積極的に話し掛けてくれよ? 君は、何故か俺様と話したがらなかったみたいだからな」
「わかりました……。えと、零式兄さん」
「兄さん……か。悪くない響きだな……もう一回言ってくれないか?」
「嫌ですよ。鳥肌が立ちますもん」
笑いながら、清利はアンコールを拒否した。
この時から、清利は彼の事をカッコいい兄として見るようになった。
**
最後に声を掛けたのは、《塔》の霊堂幽姫。彼女は普段から勝重と仲が良い為、頼まずとも喜んで協力してくれると思うが、念の為だ。
「勿論……‼︎ わ、私も手伝うよ……‼︎」
控えめな大きさで言いながら、幽姫は両手でガッツポーズを決めた。この答えは予想出来た。
彼女は普段弱気だが、言いたい事ははっきりと言うし、嘘を吐いたり自分を騙したりしない。清利は幽姫では無いが、自分の事の様に知っている。
「ありがとうございます、幽姫」
言いながら、清利は幽姫の頭を撫でてやる。彼女は「えへへ……」嬉しそうに頬を赤らめた。幽姫はこうして、実の兄である清利に頭を撫でてもらうのが好きだった。
「でも、私なんか役に立つのかな……」
「役に立つに決まってますよ。役立たずの私とは違って、幽姫の能力は、誰かの力になる事が出来ます」
「……ありがとう、お兄ちゃん。でも……そういうお兄ちゃんも、全然役立たずじゃないよ……」
「……」
その言葉に対して、清利は何も言葉を発さなかった。
自分は役立たずだ。この『二十二の夜騎士』という部隊の中で、最も使えない。
彼は、そう信じて疑わなかった。
**
とりあえず協力者を四人確保出来た清利は、チラシに書かれていた開催場所に向かう事にした。彼は自称役立たずなので一人で行く訳にはいかず、零式に同行してもらう事にした。
開催場所は天鈴商店街内にある、小さな広場。大きな招き猫のオブジェが目印だ。
大会の前日とあって、数名のスタッフが今もステージの設営準備に取り掛かっている。
「こうして二人で出掛けるのは、初めてだな」
「そうですね。……零式さんは、普段は商店街に来るんですか?」
「いや、あまり来ないな。俺様はずっと、本部で母上の護衛をしていたからな」
「ああ、そういえばそうでしたね」
零式は、二十二人の中で沙知と行動を共にしている事が最も多い人物と言える。
「だから、今は少しワクワクしている」
「何処か行きたい所とか、ありますか? 良かったら案内しますよ」
「それは頼もしいな。是非ともお願いしよう」
早々に視察を終えた二人は、会場を後にした。
**
そして、大会当日。
会場周囲は、多くの人で賑わっていた。沢山の声が一つの騒音となって、他の様々な音をかき消している。
「頑張ってください、勝重」
「頑張ってね……勝重君……‼︎」
ステージ近くに居る清利と幽姫が、それぞれ勝重にエールを送る。
「が、頑張るんだな……」
送られた本人は、誰が見てもわかるくらいの緊張感に苛まれていた。見ているこっちも変に緊張してしまう。
『遂に始まります、天鈴商店街プロデュースのホットドッグ大食い対決‼︎ 司会は私、玉越卯蘭が務めさせて頂きまーす‼︎』
ピンク色に染めたおかっぱ頭が特徴的な女性が、笑顔で告げる。確か彼女は、転雨でのみ放送されている番組で有名になっている女子アナウンサーだ。
「どう? 周囲に怪しい人は居たかしら?」
観客の中に混じっている梅木沙知が、隣に来た零式に尋ねる。彼は首を横に振った。
「今のところは居ません。ですが、これから来る可能性があります」
「……そう。警戒は怠らないでね。この大会を、無事に終わらせましょう」
「了解です」
『それでは、勇敢なるフードファイターの皆さんの入場でーす‼︎』
卯蘭の掛け声と共に、応募した選手十名がステージ上に上がる。
長期に渡って募集し、更には参加費無料だというのに、参加者の数は驚くほど少なかった。
観客が、参加者の顔ぶれを見てどよめき始める。
無理はない。その十名の中に、幼い容姿をした少女の姿があったからだ。
「いっとくけど、負けないからね〜△」
その少女──キリハ=ロールシャッハは、横に立つ勝重を挑発する。今は狂人キャラモードの様子。
キリハが参加者としてステージに立ったいる理由は簡単。もし組織の連中がステージ上に上がってきた時に、すぐに勝重を護る事が出来るからだ。
しかし彼女は、出るからには勝つつもりでいた。なんとも彼女らしい。
選手による軽い自己紹介やルール説明を終えてから、全員が席に着く。その直後に、このイベントのスタッフが、ホットドッグを沢山載せた台車を引いてやって来た。そしてそれぞれのテーブルの上に並べ始める。
勝重は喉を鳴らした。これから食べる物が、想像以上に美味しそうな見た目と匂いをしていたからだ。
このホットドッグは、天鈴商店街のアーケード内にある店の物。かなり美味しいと評判で、行列が絶えないらしい。
『それでは──始め‼︎』
司会者の意気のある合図と同時。全員が目の前のホットドッグを手掴みし、噛り付いた。
**
「あれ……勝重さんとキリハさんじゃないですか……」
たまたまイベント会場近くを通りかかった矢弾桃花は、ステージ上に見知った人の姿を見つけて驚いていた。因みに彼女は今、新調する前のメイド服を着ている。露出が多いのは、寒いので流石に外では着れない。
「こんな所に居て、大丈夫なんデスカ……?」
隣に居るコートを着たエナが、首を傾げる。
そこで桃花は、偶然にも人混みの中に梅木沙知の姿を見つけた。
「…………どうやら、大丈夫みたいです」
「え、どうしてそう思ったんデス?」
「ほらあそこ」沙知の居る方を小さく指差す。「お母さんが居るでしょう?」
「あ、本当デス。沙知サマが居マス……」
「恐らくですけど、お母さんの他にも誰かこの近くに居るでしょうね。勝重さんが居るから、清利さんも幽姫さんも居ると考えていいでしょう」
あの三人は、行動を共にする事が多い。彼らの内一人でも見つければ、あと二人もその周囲に必ず存在している。一匹見たら百匹居ると思えと言われるゴキブリに、少し似ている気がした。
「さ、私達はもう行きましょうか。早く帰らないと、茶道さんにまた変なコスプレさせられるかもしれませんし……」
昨日された格好を思い出して、全身に鳥肌を立てる桃花。あんな格好はもう二度とごめんだ。
「そうデスネ」
エナが小さく頷いてから、二人はその場を後にした。
**
会場である広場から少し離れた場所にあるビル。その三階の窓から、一人の男はステージを睨んでいた。
彼は、上から裏切り者の抹殺を命令されたマテリアルの下っ端。ここは現在空き部屋で、標的の頭を撃ち抜くには最適の場所と言えた。
持ち運びが大変だったゴルフバッグを肩から下ろし、チャックを開ける。中には一丁のスナイパーライフルが入っている。
男がそれを手に取ろうとした──その時。
「駄目っすよー、人を殺すのは」
部屋の扉が開き、黒いマフラーを巻いた少女が入ってきた。
男は彼女の事を知っている。かつてマテリアルに所属していたスパイ──元《隠者》の東雲不隠だ。
「お、お前……‼︎」
いつも持ち歩いている小型拳銃を抜き、銃口を不隠に向ける。ハンマーを倒した。あとは引き金を引くだけ。
しかし彼は知らない。同じ組織に所属しておきながら、彼女の持つ凶悪な能力の事を知らないのだ。
「無駄っすよー。そんな玩具じゃ、自分の身体を貫くなんて不可能っす」
「黙れ……‼︎」
迷わず引き金を引く。銃声はかなり小さい。それと同じくらい威力も控えめだが、これだけの距離だ。当たればたたでは済まないだろう。
だが銃弾は不隠を貫く前に空中でピタリと制止したかと思えば、男の方へと戻ってきた。
銃弾の向かう方向を逆にする。ただ、それだけだ。
帰ってきた銃弾は己を放った男の肩を貫く。男は射抜かれた部位を手で押さえながら、その場で丸くなった。
「だから言ったじゃないっすかー。無駄だって」
「…………ぐ、クソ……‼︎」
「クソはそっちっすよ。……大事な家族を。いえ、家族だった大切な人達の幸せを、邪魔しないで下さいよ」
「そうそう、不隠ちゃんの言う通りさ」
金髪の男──アルベード=ラングドシャが、遅れて部屋に入ってくるなり、不隠の言葉に同意した。
「遅いっすよ、アル」
「酷いなぁ、不隠ちゃんが早すぎるだけだっての」
アルが零す愚痴に、不隠は苦笑する。確かにその通りだ。わざと遅く歩いて「遅い」を「早い」に反転し、猛スピードで移動したのだから。
「それにしても助かったっす。アルの能力のお陰で、こうして邪魔者を始末出来たんすから」
「どういたしまして……。さてどうする?不隠ちゃん。このまま観戦してくか?」
その提案に、不隠はしばらく悩む素ぶりを見せてから、口を開いた。
「帰るっすよ。元の居場所に」
「へいへい、了解」
それから二人は、その場を後にした。
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白熱した大会の中、見事優勝を飾ったのは勝重だった。追随を許さない食いっぷりは、見ている観客も度肝を抜いていた。
その一方でキリハは、三本目で早くもリタイア。元々あまり食べる量の少なかった彼女は、本来出るべきでは無かった。
勝重は優勝商品として、ホットドッグ一年分を手に入れた。彼にとってそれも十分に嬉しい事なのだが、それ以上に──。
「凄かったですよ、勝重」
「格好良かったよ……勝重君……‼︎」
「中々やるな」
「仕方がないから、褒めてあげる△」
「頑張ったわね、勝重」
家族と呼べる掛け替えのない存在達に褒められた事が、何よりも嬉しかった。
「ありがとうなんだな……みんな……‼︎」
優勝トロフィーを手に、満面の笑みを浮かべる勝重と、その両隣に立つ家族達。
その微笑ましい写真は、今もリビングの目に付きやすい場所に飾ってある。
次回の投稿は未定です。予定が決まり次第、ここで報告させて頂きます。




