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キル・デッド・ゲーム  作者: 高橋創将
天魔高校編①
3/3

天魔高校編① 2

 ###


 弥善は久しぶりに制服に着替える。もちろんだが、その時は夜宵は廊下にいる。まぁ扉はぶっ壊れているが。

 全然着ていない為か、汚れも着崩れも起きていない。


「弥善……」


「っるせぇ。別に今日だけだかんな。今日だけ学校に行ってやるんだよ……」


 そう、別に今日だけだ。今日だけ学校に行くだけだ。明日からはまた部屋でゴロゴロの日々だ。


(俺の人生そんなもんでいいんだよ……)


 ###


 弥善と夜宵は2人で横に並んで学校への道を歩いていた。

 実は2人が通う高校は地元の高校であり、徒歩で行ける距離だ。夜宵はいつもなら自転車で通学しているのだが、弥善のために徒歩で登校してくれている。


 無言の沈黙。

 ただひたすら聞こえるのは、車が通る雑音。街の人々が楽しそうに話す世間話。動物・鳥の鳴き声。


 だが、夜宵は沈黙の時間に耐えれなかった。


「今日はね、10月にある修学旅行の班決めがあるんだ」


「……」


 天魔てんま高校は高校2年生の10月に修学旅行がある。修学旅行先はアメリカ。10月とはいえ、9月に決め始めていては遅い。夏休みに入る前には決めておきたいものだ。


「その……よかったらでいいんだけど……」


「ん?」


「……一緒の班になろ……?」


 なんだこれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!っと叫びたくなるような萌えを感じた弥善。

 照れ臭い。

 弥善はあえて返事をせず、黙っていた。

 そこからは学校に着くまで無言だった。



 だが学校に着く前。弥善は何かの違和感を感じた。

 誰かに見られているような感覚。

 弥善は立ち止まり、周りを見渡す。


「弥善?どうしたの?」


 だがこちらをジーッと見つめている人物はいない。いや、それどころか、こんな大通りにもかかわらずあまり人が通っていない。

 なんなんだろうか、この違和感は。


「……いや、なんでもない」


 再び歩き出した弥善と夜宵。

 だが、その違和感、視線は消えることはなかった。



 〈イマミラレテイタ……キヅカレテイタ……ナゼダ……ニンゲンニハワカラナイハズナノニ……〉


 〈まぁそういうな。彼は陽来弥善だ。マスターが言っていただろう?彼には十分に注意しろ、って?〉


 〈イッテタ。マスタータシカニイッテタ〉


 〈だろう?多分、また気付かれるだろう。彼は何か特別な匂いがするからねぇ〉


 〈デモカナラズ……カナラズコロス。ヒライヤヨイ……コロス〉



 ###


 ついに、ついに来てしまった。

 弥善はついに天魔高校の校門前まで来ていた。あと1歩で天魔高校の敷地内だ。


 まだ時間は早く、門を通る生徒はチラホラで、あまり多くはない。まぁだからこそ来たのだが。

 弥善はいわゆる不登校。そりゃ突然急に学校に行くのは怖い。それはもちろんだ。教室に入った途端囁かれる「え、あいつ来たの?」「えーあいつ誰」。


 だがこんなところでウジウジしていても仕方が無い。

 弥善は1歩前へ踏み出した。


 ###


 教室に入ると、中には誰もまだ来ていなかった。つまりは、弥善と夜宵だけである。

 弥善の席は廊下側の1番右端。夜宵はその左隣。

 この席順は適当であり、誕生日だとかあいうえお順だとかは一切関係ない。コンピューターのランダム割り振りである。


「また隣だね」


「チッ……」


「チッて何よ!チッて!」


 実は弥善と夜宵は別に今回だけ席が隣なわけではない。中学校もそうだったし、小学校もそうだった。つまりはもううんざりしている、というわけだ。


「弥善……」


「なんだよ」


「私ほんとはーー」


「ーーおはようう!」


 夜宵が最後まで喋り終わる前に、夜宵の言葉はある人物によって遮られた。勢いよく黒板側の教室の扉が開き、1人の人物が元気な挨拶とともに入ってきた。


 眼鏡を掛けていて、頭はツンツンヘアー。黒髪の黒い目、一般的な日本人だ。だが、顎には絆創膏ばんそうこうが貼ってある。何か怪我をしたのだろうか。


「さぁとても素晴らしい朝を迎えた私だが!今日はどんなハプニングが起こるのかな!楽しみだな!フハハハハハハハーー」


 その男は、笑っている途中、弥善と夜宵の2人と目が合う。

 ようやく2人がいることに気付いたそうだ。


【…………】


 全員黙り込む。お互いを見つめたまま黙り込む。ようは固まる。

 まぁこうなるだろう。何故なら、


「……お前……そんなキャラだったか……?」


「……私、今までずっといて、そんな姿見たことない……」


「……」


 そう、この男は元々大人しめで、賢そうな男であった。こんな厨二臭い奴ではなかったはずだ。なんだ、この半月余りでこんなに人って変わるものなのか。


 男の名前は山倶利海翔やまぐりかいと。弥善と夜宵とは小さい頃からの幼なじみだ。そして同じクラス。そして席は弥善の前の席。弥善と海翔は何かの運命なのかもしれない。それがなんなのかわからないが。


【…………】


「この世の終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ここまで読んでくださりありがとうございます。


今後ともどうぞよろしくお願いします!


ではでは!

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