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キル・デッド・ゲーム  作者: 高橋創将
天魔高校編①
2/3

天魔高校編① 1

 ###


 2017年。

 至って普通の世界。

 争いが少なく、核兵器も使われていない時代。

 飛行機が空を飛び交い、車や電車が地上を走り回る。また、人々が歩き回る。


 そんな何の変哲もないこの世界。そう、何の変哲もないのだ。

 何も面白いことがない。

 何も楽しいことがない。


 2017年。

 引き篭もりが大増量した世界。

 家の外に広がる世界は何の変哲もない。

 家の外に広がる世界はつまらない。


 異世界に召喚される。

 いきなり特殊な能力を持つ。

 未確認生物が攻め込んでくる。

 地球が消滅する。


 そんなことは一切起こらない。


 ただ面白いことがある。


 弱いものは強いものに従うしかない。

 弱いものは強いものには敵わない。

 この世界は残酷であり何の変哲もない。




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 2017年4月25日。

 入学式や始業式が終わり、そろそろグループに分かれてくるこの時期。4月ももう終わりに近づいていた。

 桜ももう散る頃である。


 1人の青年は家の中、自分の部屋の中のベッドの上でゴロゴロしていた。

 今日は平日だ。青年は学校をサボっていた。そう、いわゆる不登校・引き篭もりである。

 別に彼が特別な訳ではない。隣の家の先輩も不登校だし、向かいの父親も引き篭もりだ。


 部屋の中は真っ暗。光を受け付けていない。

 青年はベッドの上で携帯を弄りながら、ただひたすら今日1日が過ぎるのを待っていた。


 ネットの世界に頼るしかないのだ。

 青年はネットのアカウントのツイートにこう呟く。


『今日も世界は何も変わりません』


 呟いて数秒でイイね!が十数個来る。青年はどうやらネットの中では友達が多いようだ。


 青年は溜息をつきながら携帯をスリープ状態にしてベッドの上で大の字になる。そして、


「ああああああああああああああ」


 と小さく叫ぶ。

 のと同時に、廊下の階段から慌ただしい足音が聞こえてきた。

 青年が驚いたのも束の間、部屋の扉が勢いよく壊された(・・・・)


弥善やよいいいいいい!今日こそは家から出るわよ!」


 扉を壊した犯人は女だった。

 壊された扉から光が青年の部屋に差し込んでくる。


「うわぁぁぁぁ!光だぁぁぁ!マカンコウサッポウだぁぁぁ!ピッコ●が攻めてくるううううう!」


 青年は光から身を守るように布団にくるまる。

 女は溜息をつくしかなかった。


「おい母さん!なんでこんな破壊神を家に入れたんだよおおおおお!」


 青年は1階にいる母親に聞こえるように大声で叫ぶ。


「玄関まで壊して入ってきたんだから仕方が無いでしょ〜」


(なんだとおおおおおおおおおお!?)


 1階から聞こえてくる微かな母親の声。

 つまり、この女は青年の家の扉を2個壊したということになる。


「……弥善。もういい加減学校に行かないと。先生も怒るよ?」


「怒るって言ったって、どうせ口頭だろ……。今どき暴力なんてしたら警察沙汰だからな」


「むぅ……屁理屈が多いなぁ」


「はぁ!?これのどこが屁理屈なんだよ!なぁ!?夜宵やよい!?」


 至って普通の会話(?)。

 こんな日常はもうつまらない。もっと楽しいこと……ないかなぁ……。

 青年の名前は弥善。そして、女の名前は夜宵。漢字は違うが、読み方は一緒だ。


 未だに弥善は布団から出ようとしない。布団の隙間から顔を出しているだけだ。これはもう本格的な引き篭もりである。


「……じゃあいつになったら学校に行くの?弥善のお母さん心配してるよ?」


「……知るか……」


「すごい心配してたよ?それと、すごい自分を責めてた。私が力不足なばかりにあの子をこんなふうにしてしまった、って」


「知らねぇって言ってんだろ!」


 弥善は思わず強く当たって叫んでしまった。


 そんなの知っている。母親が自分を責めていることも、母親が弥善のことを心配していることも。でもしょうがないのだ。この世界は残酷で、つまらない世界なのだから。


「……ごめん」


「いいや、俺も強く当たってしまった……」


 でも、いつかは外には出ないといけない。

 正直弥善としてはあまり母親には迷惑かけたくないのだ。

 弥善は母親に感謝している。だからこそ、迷惑かけたくないし、心配もかけたくない。

 安心させたい。

 母親を安心させて、笑ってもらえるようにしたい。


 今がその時なのかもしれない。


 弥善のいつもとは違う日常が始まる。

読んでくださりありがとうございます!

今後ともどうぞよろしくお願いします!


ではでは。

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