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ワタシは魔女である


 いつも、空を眺めていた。

 いつからだろう。こんなことを始めたのは。数千と読み散らかした書物に飽きたのか。それとも、幾万と過ごす日々に嫌気がさしたのか。きっかけなんて、今となってはもう覚えていない。



 さて。かつて読んだ小説より引用した序文から、私の物語を始めよう。



 ワタシは魔女である。名前はまだない。

 時は、だいたい一世紀ほど前だろうか。ワタシはこの森に発生したらしい。



 どうやって生まれたのかは覚えていない。

 親の顔など知るはずはなく、育てられた記憶もない。気づけば今の姿で存在して、今暮らすこの小屋で、仰向けで天井を眺めていた。 



 「産まれた」ではなく「生まれた」からには原因があるはずだけど、私にはさっぱりだ。



 しかし、勘違いされては困る。

 わからないことはたくさんあったけど、何も知らないわけではない。



 一つ。ワタシは、魔法が使えるらしい……、つかったことないけど。

 一つ。ワタシは、不老不死というやつらしい。月日を、一万ほどは数えたが、私が老いることはついになかった。



 確証はなくとも、当たり前の機能として理解していた。

 わからないのは、その用途。なんのために、ワタシは産まれたのか。そして、私は目覚めたのか。



 腹がすいたら狩をした。

 弓は得意でなかったけど、足が速い私は素手で狩を行えた。肉に飽きたら、森で採集すればよかった。冬でなければ、森では多くのものが実っていた、



 手が空いた冬には、物を作った。

 余った薪や動物の骨で、色々なものを作った。魔力の籠った小物は売れると、行商は喜んで私が作ったそれらを買い取っていった。手にしたお金は、衣食住に費やしても余るほどだった。



 お金を作って"暇つぶし"をすることにした。

 小屋には3つの部屋があった。リビング、寝室、地下室。使っているのは、ほとんどダイニングを兼ねたリビングだけだった。ちょっとした気まぐれで、行商から寝室に溢れるほどの書物を買った。



 気にせず、やりたいように日々を過ごした。もはや寝室では収まらない本たちは、徐々にリビングへと、征服の足掛けとばかりに侵入を始めている。飽き性な私であるが、この生活習慣は長く続いた。



 本達の住処の広さが生活を脅かすほどなった頃に、ようやく私は、自分の役割を知ることが出来た。

 


 『ワタシは、魔女である』



 枕元の絵本を開く。黒い装束、怪しげな装飾、伸びっぱなしの白髪頭に、大きな釜であやしげな物体をかき混ぜる姿。口元には不気味な笑みを浮かべ、長い年月を生きる女型の怪物。



 それでも、相変わらず謎なのは、"私"の存在する意味だった。

 何故"私"という意識がある? こんなもの、ただの欠陥品じゃないか。だってこんなにも、私は退屈なんだ。暇で暇で死んじゃいそうなくらいに。



 退屈は人を殺すらしい。

 ならば魔女であるこの身は、いつ滅び去るのだろうか――――。



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