涙と力の関係性⑩
真っ直ぐに、一切迷うことなく、強い意志を以て告げられた光流のその言葉に、少女は笑んだまま「良いでしょう」と告げる。
そして、彼女は、そんな光流から目を逸らさぬまま・・・彼を見つめる瞳を少しだけ眩しそうに細めると、話を始めた。
彼女が光流に力を貸すにあたり、対価として望むことーーーその条件を。
「先程お話した通り、わたくしは貴方に持ちうる力の全てを貸しましょう。けれど、それには
・・・貴方が先刻仰った様に条件があります」
「ああ、わかってる。その条件ってのはどんな事だ?」
少女の言葉に、光流は同意を示しながらも先を促す。
すると、少女は、まるで数を指折り数えている
かの様に己の右手の人差し指を、真っ直ぐにぴっと立てると
「それでは、先ず一つ目の条件として・・・『貴方が護りたい存在を全員、これから、必ず命を賭してでも護りきること』」
と、淀みなく言い切った。
彼女の提示する条件を聞いた光流は、思わず首をひねり、彼女に聞き返す。
「いや、良いのか?そんな事で。」
すると、今度は光流の言葉を聞いた少女が小首を傾げる。
「そんな事、とは?」
「だからさ、『護りたい存在を全員護りきる』って。そりゃぁ、あの二人を護るのは当然だろ?その為に君から力を借りる訳だしさ。けど、そんな・・・何て言うか、目的が条件みたいっていうか」
上手く言葉が出てこず、頭をかきながら「あ~、如何言ったら良いんだろうな」と呟く光流。
少女はそんな光流を一瞥すると、ふっと笑みを消し、真顔に戻ると、至って真剣な、かなり重い口調で光流に告げた。
「何か勘違いをしている様ですね。いつ、わたくしがあの二人を護りきること、と言いました?」
少女のその言葉に、きょとんとした表情を浮かべる光流。
「は?いや、今自分で言っただろ?護りたい存在を全員護りきる、って」
「ええ。わたくしは、確かに言いましたわね。護りたい存在を全員護りきる、と。では、何故その『護りたい存在全員』があの二人だけなのです?」
「へっ?え、いや、僕が今護りたいのはあの二人だし」
「ですから。何故『今』だけなのですか」
「え」
「誰が、いつ、『今だけ』『護りたい存在を全員護りきる』ことと言いました?」
少女の言葉に頭に手をやった体勢のまま固まる光流。
(まさかーーー?)
非常に、とてつもなく、嫌な予感がする。
如何かその予感よ外れてくれと、願いを込めながら見つめる光流に少女は、その人差し指を、今度はびしっと光流の目の前につきつけ、高らかに宣言した。
「貴方はこれから、一人でも『護りたい』と思う者が増えたなら、その者の窮地には馳せ参じ、命を賭して救わなければいけないのです。未来永劫、その命が尽きるまで」