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滝夜叉姫と真緋(あけ)の怪談草紙  作者: 名無し
第一章 真緋の怪談草紙の段
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涙と力の関係性⑩

 真っ直ぐに、一切迷うことなく、強い意志を以て告げられた光流のその言葉に、少女は笑んだまま「良いでしょう」と告げる。


そして、彼女は、そんな光流から目を逸らさぬまま・・・彼を見つめる瞳を少しだけ眩しそうに細めると、話を始めた。


彼女が光流に力を貸すにあたり、対価として望むことーーーその条件を。


「先程お話した通り、わたくしは貴方に持ちうる力の全てを貸しましょう。けれど、それには

・・・貴方が先刻仰った様に条件があります」


「ああ、わかってる。その条件ってのはどんな事だ?」


少女の言葉に、光流は同意を示しながらも先を促す。


すると、少女は、まるで数を指折り数えている

かの様に己の右手の人差し指を、真っ直ぐにぴっと立てると


「それでは、先ず一つ目の条件として・・・『貴方が護りたい存在を全員、これから、必ず命を賭してでも護りきること』」


と、淀みなく言い切った。


彼女の提示する条件を聞いた光流は、思わず首をひねり、彼女に聞き返す。


「いや、良いのか?そんな事で。」


すると、今度は光流の言葉を聞いた少女が小首を傾げる。


「そんな事、とは?」


「だからさ、『護りたい存在を全員護りきる』って。そりゃぁ、あの二人を護るのは当然だろ?その為に君から力を借りる訳だしさ。けど、そんな・・・何て言うか、目的が条件みたいっていうか」


上手く言葉が出てこず、頭をかきながら「あ~、如何言ったら良いんだろうな」と呟く光流。


少女はそんな光流を一瞥すると、ふっと笑みを消し、真顔に戻ると、至って真剣な、かなり重い口調で光流に告げた。


「何か勘違いをしている様ですね。いつ、わたくしがあの二人を護りきること、と言いました?」


少女のその言葉に、きょとんとした表情を浮かべる光流。


「は?いや、今自分で言っただろ?護りたい存在を全員護りきる、って」


「ええ。わたくしは、確かに言いましたわね。護りたい存在を全員護りきる、と。では、何故その『護りたい存在全員』があの二人だけなのです?」


「へっ?え、いや、僕が今護りたいのはあの二人だし」


「ですから。何故『今』だけなのですか」


「え」


「誰が、いつ、『今だけ』『護りたい存在を全員護りきる』ことと言いました?」


少女の言葉に頭に手をやった体勢のまま固まる光流。


(まさかーーー?)


非常に、とてつもなく、嫌な予感がする。


如何かその予感よ外れてくれと、願いを込めながら見つめる光流に少女は、その人差し指を、今度はびしっと光流の目の前につきつけ、高らかに宣言した。


「貴方はこれから、一人でも『護りたい』と思う者が増えたなら、その者の窮地には馳せ参じ、命を賭して救わなければいけないのです。未来永劫、その命が尽きるまで」

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