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滝夜叉姫と真緋(あけ)の怪談草紙  作者: 名無し
第一章 真緋の怪談草紙の段
26/148

夢見る生贄(ひつじ)の視る現実(ゆめ)は⑧

 「「戦国姫将和風タロット?」」


思わず光流と楓の声が重なった。


タロットカードは占いに疎い男子の光流にだって分かる。


確か、0から21のそれぞれ別の意味や教訓を含んだ寓意画の描かれた22枚の大アルカナと、一説にはトランプの原型とも言われている、ワンド・コイン・カップ・ソードの四種類のスートのカードが各16枚の計78枚からなる、主に占術に使用される、かなり有名なカードだ。


その中でも、主に占いによく使われているのは大アルカナの22枚の方だと以前テレビの占いの特番で聞いたことがある。


また、その大アルカナに描かれているのは主に人物画が多いそうだが、昨今の空前のスピリチュアルや占いブームに乗って人間の代わりに猫等の動物が描かれたタロットや、童話の主人公達が描かれた童話のタロット等、実用的範囲を越えて、コレクション的な価値も高まっているらしい。


其処から察するに、戦国姫将和風タロットとは、つまり、戦国姫将とやらが描かれた和風のタロットカードということだろうか。


光流がそう歩きながら推測していると、不意に目の前の十字路の信号が赤になった。


此処の信号は一旦赤になると次に緑になるまでの時間が他の信号機より比較的長く、少々待たなければならない為、櫻高生からは『開かずの横断歩道』と呼ばれているのだ。


すると、立ち止まった拍子に華恵が二人にタロットカードを数枚差し出して来る。


どうやら新しく手に入れたお気に入りの品を早く二人に見せたくて仕方がないらしい。


「ほらほら!見てくださいよ~!この鎧の質感に綺麗な黒髪!まさにパーフェクトだと思いませんかっ?これぞ大和撫子!ジャパニーズガールの極みです!」


そう光流を見上げながら、頬を真っ赤に上気させて饒舌に語る華恵の手元を仕方なしに見てみると、そこには一番上に『拾壱 正義』と書かれたカードがあった。


カードの真ん中には本紫の鎧の上に、金糸で梛の葉の刺繍が施された美しい猩々緋の陣羽織を羽織るという非常に勇ましい戦装束に身を包み、長い黒髪を靡かせ、翠色の飾り紐のついた紫の柄の薙刀を前方に向けて構え、鋭い瞳で此方を睨み付けている、見目麗しい女性が描かれており、その最下部には恐らく彼女の名前だろうか、『立花誾千代(たちばなぎんちよ)』と金箔で箔押しされている。


「たちばなぎんちよ?」


恐らく今までの歴史の授業の中でも一切出てきたことがないであろう聞き慣れないその名前に、光流は思わず首を捻る。


そして、よく見るとカードに描かれた女性の甲冑の右胸部分に家紋が描かれているのに気付き、よく見てみようと華恵からカードを借り受け、手に取ると、目元に近付けてみる。


すると


『この、無礼者ーーー!!!!』


頭に、脳の中に直接聞いたことのない女性の、かなり大きな罵声が響いた。


『その様な穢らわしい手でこの私に触れるでない、不浄の者が!!』

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