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甦り

僕は今、短い人生を終えようとしている。

正確には終わらせようとしている。

自らの手で。




なぜこんなことになってしまったのか今では自分にも分からない。確かなことはただひとつ。僕はたった今、帰宅途中にある中で一番高いマンションの屋上から飛び降りたのだ。


飛び降りた途端、今までの鬱々とした気分がまるで嘘のように頭の中がとてもクリアになった。

飛び降りると途中で意識を失うとネットで見たのに話が違うじゃないか。

そんなことを考えている内に、どんどん地面は近づいてくる。

痛いかな・・・いや、絶対に痛いだろうな。僕は目を強く閉じ、確実に迫ってくる死を感じていた。

次の瞬間、僕の体はついに地面に激突した。ハズだったのだが・・・



「またこうなってしまいましたか。人間というのは思いのほか難しいものですね」

目を開いた僕の体は、無残に飛び散っていたり、骨が飛び出したりはしていなかった。

まるで、たった今椅子から転がり落ちて目を覚ましたように、地面に無様にノビているだけだった。

「いつも思うのですけど、毎回飽きもせず地面にノビていて楽しいですか?いや、楽しくないから死んだんでしたっけ」

やっと目のピントが合ってきた僕の目に飛び込んできた声の主は、見たところ高校生(?)ぐらいの女の子だった。ただひとつ、いやふたつだけおかしなところは、彼女の頭の上でまるで蛍光灯のように光っている輪っかと、見せびらかすかのように背中でパタパタさせている羽ぐらいだ。

「ここは・・・?というか君は」

「君は誰なんだ?誰なんだというよりも何なんだ?いったい僕はどうなってしまったんだ?と言うんでしょ?そのセリフも聞き飽きたので、次回からは別の言い回しを希望します」

冗談っぽく笑いながら、彼女は僕がまさしく言おうとしていた質問を一言一句違わずに言ってのけた。


「いいですか大和さん。一回の人生について新しく許される質問は一つだけです。せめてものサービスとして、今までに大和さんがしてきた質問に関しては答えてあげられますよ」


彼女が何か事情を知っているという事は分かったが、理解できたのはそれだけだった。そんな僕の事など気にも止めず、「今までなんの質問をしたか?なんてのは一個の質問に含みませんから、安心してください」と得意げに話していた。


「いいですか大和さん。あなたが一番最初にした質問は(僕はどうなってしまったんだ?)です」


そうだ。まさしくその答えが知りたい。よく分からないけど、過去の自分を良くやったと褒めてやりたい気分だ。


「サービスなんですから、一回しか言いませんよ?」

彼女は得意げに、ゆっくりと僕のリアクションを楽しむようにこう言った。


「あなたは蘇ったんです」

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