オリエンテーション
すごく下ネタ。どこまでも下ネタ全開。なので念のためR15指定です。
パロディ、ネットスラング、下ネタがガッツリ盛られてます。苦手な方は閲覧を控えてくださいますようお願いします。
ふわふわとした気怠さ。暗いところから徐々に引き上げられるこの感じに、私は覚えがあった。
毎朝私が感じるもの、寝起きだ。
動画サイトの巡回で夜更かしした時は特に強いけど、タイミングが良ければとてもスッキリした目覚めになる。
「ん……。」
柔らかなところ……多分ベッドに寝転がっている私。
ここまでは何の不自然さもなかった。
けど、私の知らない感覚がある。
右足、だろうか。右足の指に生暖かく濡れたものが這っていた。
少しザラッとした感触に猫かと思ったけど、猫よりも湿っている。
ヌルっとしたもの。少し擽ったい。
思わず足を引こうとしたけど、それは叶わなかった。
何かにガッチリ固定されてたからだ。
不審に思って体を起こそうとするけど、今度は腕が動かない。
これはますますおかしい。ベッドに手をつこうとしたのに、両手とも頭の方から動かせないのだ。
仕方無く目を開けて状況を確認しようとする。
けれどそれよりも先に目に飛び込んできたのは、見知らぬ天井だった。
「……え?」
知らない、天井だ。くらい言うべきだったんだろうけど、ちょっとそれどころじゃない。
動く首と視点を腕に向ける。ご丁寧に麻縄で縛られていた。痕残ったらいやだな……。
足は相変わらず変だし擽ったいし……。こんな状況だ。誰かが擽ってるなんてことはないんだろう。
怖くないかと言われれば、勿論怖い。けどこのまま放置ってのも怖い。
何が起きてるのか確かめるべく、ホラーゲームの主人公さながらの勇気を出して私は自分の足を見た。
「ん…ちゅぷ……ぺろぺろ……ちゅぅ……」
おぅふ……ナンテコッタイ。
文面にしたらただのエロゲだ。しかし舐めてるのは私の足。靴を舐めてるではなく、足である。丹念に足の指の間まで舐めてる。ちょっと需要ないかなぁ?
私の足に顔を埋めているのはどうやら人のようだ。耳も角も生えてない。髪の色はブラウンベージュ。染めてるにしてもまぁ普通だ。髪型と声から男性と推測。
ワォ!私結構冷静じゃない?
「んちゅ……ぅ……?あ……おはよ」
「お、おはようございます、じゃない!おいどういうことだ説明しろ苗木!」
「俺苗木じゃないよ。下野さんの御御足美味しかったです」
「キモい」
「ちょっと足りないな。もう一声。あと視線もください」
「この変態キモ男誘拐犯。小娘の足をキャンディみたいに舐めるなんて恥ずかしくないんですか」
「下野さんの棒読み罵倒と養豚場の豚を見るような目!ありがとうございます!」
どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!親御さんの顔が見てみたいよ!
……しまった冷静さを失ってしまった。あまりのことに脳が処理しきれてない。
「とりあえず足拭きたいです。きれいな水と清潔なタオル、そして拘束を解くことを要求します。」
「オッケー。じゃ拭いたげるね」
「いえいいです止めてください。」
「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」
「いやホントいいですから」
ダメだ話が通じない。しかもそう言ってる間に道具取りに行きやがったあの変態。
うわ足ベトベト。気持ち悪い。思い出し気持ち悪いなんて初めて経験した。
ベッドのシーツで足に付いてる唾液を拭う。けれど足の指の間はどうしても拭えない。
「うぇ……」
……そうだ。足が動かせるなら手首の縄、外せないかな。試しにやってみよう。
足を使いながら体を捻り、捻じり、捩り、縄を緩めようとする。
「んっ!……んんん……!!はぁ……!駄目か」
結果。疲れただけだった。
「その行動と声に俺はやばいと思ったが、性欲を抑えきれなかった。」
「ぎゃ!ちょっ、待って待ってなんなの!」
いつの間にか戻ってきていた男が私に覆いかぶさってくる。
わーヤバイこの人目がイッちゃってる!ただの犯罪者だっ!おまわりさんこいつです!!清い乙女を骨の髄までしゃぶり尽くそうとしてる変態ですー!
「だってそんなモジモジしてるから。パンチラ美味しいです。」
「なっ!」
「未成熟な女子は地味パンこそ至高」
「じ、地味パン……!?」
私が持っている下着の中でも特に可愛く大人なものだというのに、地味パンだと……?
いやそれ言ったらマズイから言わないけどさ!
俺のためにおしゃれしてくれたんだって言うの目に見えてるから!
「もっとエグいのも世の中にはあるんだよ。今度一緒に買いに行こうね」
「さっき地味パン至高って言ったのどこ行った」
「大好きな子が履いてるパンツにこそ価値がある」
キリッとした顔で言われても内容変態過ぎるしカッコよくはないかな。
「正直好きな子がシースルー素材の下着なんて履いてたら高速でスタンバイ完了するなぁ。」
「お前の趣味はどうでもいい。とっとと足拭いてよ。あとこれ外して」
「あ、ごめんごめん。」
そう言って私の上から退いた男は手早く私の足を拭き、拘束を解いた。
……まさか拘束まで解くとは思わなかったけど、ラッキーってことでいいよね。
と思ってた時期が私にも有りました。男は当たり前のようにドア側に座り、その対面に座るよう私に促してきた。
逃がす気は無い、ってことね。
「えっと、まず自己紹介からだね。俺は伊藤珠履21歳。ふたご座のO型。好きなことは好きな子を物理的にも精神的にも縛ること。サークルは特に所属してないけど友達に頼まれて合気道同好会の助っ人や文化研究サークルに顔出しとかもしてます。これからよろしくお願いします」
「いや、よろしくしませんから。」
「え……?」
「そんな全てに絶望したような顔しないでくれませんかねぇ!?誰がセクハラ誘拐犯と仲良くするかバーロー!」
普通に自己紹介してるけどこの人未成年の女子高校生誘拐拘束してあまつさえ足舐めてるからね?
さっきなんか覆いかぶさってきたし!パンツの話題とか出すし!そんな人よろしくする前に警察に突き出すわ!
「えーそんなこと言わずに!ほらっ!下野さんも自己紹介して?」
「え……名前知ってるじゃないですかあなた」
「下野さんから聞く、ということが大事なんだよ。ささっ!グイッと!ね?」
「酒でも飲ます気か。……下野簓。17歳。部活は家庭科部。嫌いなものは人を無理矢理家に連れ込んで拘束し意識がない間足を舐めてくる奴。以上」
「簓ちゃん……ささちゃんだね。うん、良い名前だ」
「はぁ……」
名前を褒められたのは初めてだ。
簓なんて単語、知ってる人そんなに居ないのに。
……いや待てよ?これ意味知らないんじゃないか?適当言ってる?
「楽器の名前かぁ。確か縁起物になるからって家に飾ったりもするんだよね。」
「知ってるんですか」
「勿論。ささちゃんの名前だもん。調べるのは当然。」
「……そうですか」
ちょっと感動した。
本当に、本当に少しだけだ。
今までの行動が行動だから、これだけで帳消しにはならない。帳消しにしてなるものか!
しかもいつの間にかささちゃんで定着してる。なんか馴れ馴れしい。
「ところで伊藤さん」
「珠履でいいよ。なぁに?」
「何でこんなことしたんですか?カツ丼なら出前取りますからちゃんと自供してくださいね。お代は貰いますけど」
「え?今日お泊りしてくれるの?どうしよう理性がヤバイかも」
「誰もそんなこと言ってないですから。」
「で、でも出前よりもやっぱ手料理が良いなぁ。ミートパイ食べたかった」
「何で私が先週の部活で作ったもの知ってるんですか。」
「大学の先輩がささちゃんの学校の先生なんだ」
「なん……だと……?」
先生……個人情報保護法って知ってます?
そんなどうでもいい情報流しちゃうの?
誰かはなんとなく検討つく。現在21歳のこの人の先輩なら、教師1~2年目の新人だ。当てはまるのは1人しか居ない。覚えてろあの野郎。
ま、先生への追及はまた今度明日にして、今は目の前の問題をなんとかしなくちゃ。
「それであの、私を解放していただけません?」
「解放ってなんかエロいよね。緊縛趣味には堪らない」
「おまえは何を言っているんだ」
「まぁ落ち着けよ」
「落ち着けるか!」
麻縄で拘束された手前緊縛趣味発言は洒落にならない!
今度はもっと卑猥な縛り方されるかもだし!無い胸を強調する様なやつ!
「そんな興奮しないで。まだ日も落ちてないのに」
「日も落ちる前に帰してくれません?」
「それはちょっと無理な相談だね。」
「もう勘弁して……」
何とかしなきゃと決意したところだけど、挫折した。
こんな変態にはついていけない。
一刻も早くここから出たい。向き合うのも嫌になってきた。
「まーまー。これでも飲んで落ち着いて」
そう言われて差し出されたのは紅茶だった。フレーバーティーなのか甘いイチゴの香りが広がる。
……何も入って無い、わけないよね。
「疑ってる所悪いけど、睡眠薬でもなんでも、薬事法の壁があるから一介の大学生には手に入らない代物だよ。あんな簡単に薬を手に入れられるのは二次元だけ。だから安心して飲んでね」
「漂白剤」
「え」
「殺虫剤」
「ちょっ」
「高濃度ホウ酸水」
「それ致死量」
「どれも手に入れるのは容易いですよね」
「でもどれも死ぬよ?別に殺す気はないんだけど……。寧ろ」
「犯罪者ぁー!この人ロリコン!危険思想ダメ、ゼッタイ!おまわりさん来てぇー!!!」
「わー!まだ何も言ってないけどゴメンだから窓から叫ぼうとしないで!開かないけど止めて!」
「チッ」
「女の子が舌打ちしないの。可愛いなぁもう……。」
のほほんとした雰囲気で紅茶を飲む伊藤さん。
……どうやら紅茶自体になにか入ってるわけでは無いみたいだ。
「こればっかりは信用してもらうしか無いけど、僕はささちゃんに無理強いするつもりは無い。ちょっと舐めたり触ったりはするけどR18相当のことはちゃんと同意を得てするつもりだから」
「舐めたり触ったりはするんですか」
「今度は指も良いね」
「……さっきから思ってたんですけど、あなたSなんですか?Mなんですか?」
「一通りこなせるよ。生とかスカはしたこと無いけど」
「その、一応うら若き乙女なのでそういう下ネタ止めてください。さっきも言いましたがセクハラですよ」
「あぁそれはゴメン!配慮が足りなかったね」
これが深窓の令嬢とかだったら失神してるか興味本位で調べて失神するかどっちかだ。どちらにしても失神する。
私はほら、野に生えてる雑草みたいなものだから。深窓の令嬢はアパートに住んでないから。
「個人的には緊縛が一番楽しいんだけど、ロウソクも好きだな。されるなら踏みつけか首絞め。」
「中庸な性癖はないんですか?」
「……録画?あと電話」
「それの何処が中庸な性癖なんでしょうか」
「SでもなくMでもない」
「…………。」
そのうち私は、考えるのをやめた。
*
「どう?おいしい?」
「……はい。これいい香りですね」
「女の子の友達におすすめ訊いたからね。女の子が好きそうな紅茶無いかって。」
「異性の友達がいらっしゃるので?」
「異性って言っても向こうは百合趣味だから俺は恋愛対象外。俺にとっても対象外。でもセンスは信用できるから」
「そんなことは訊いてないんですが……。」
「今日のために紅茶の淹れ方から徹底したんだ。」
考えることをやめたらあら不思議。自然と心が落ち着いてきた。
様子を見ると伊藤さんは本当に手を出す気がないらしく、さっきのあれも本当に衝動的な行動だったんだと理解できる。だからといって許すことはない。絶許。
2人対面しながらのんびり紅茶をいただくなう。
鼻腔から抜ける香りが私を穏やかな気分にさせてくれた。
少し余裕が出来た私は部屋をぐるっと見回してみる。
デスクに本棚。普通のチェストが一つとクローゼット。
私が寝かされていたベッドはシーツがグチャグチャになっている。でもさっき足拭ったし、触りたくない。
そして部屋の真ん中にはラグとローテーブル。上には紅茶。
なんともシンプルな内装だ。しかも此処一軒家。伊藤さんの実家だろうか。
実家に誘拐してきた少女を監禁とは、なかなか難易度の高い。
「…………。」
「……な、なにか?」
「好奇心たっぷりでウズウズしてるささちゃんが可愛い。」
「う!」
「ウズウズしてるささちゃん。略してうさちゃんだね。今度うさ耳つけてあげる」
「いやそういうコスプレは夢の国以外では痛いだけですから」
「そんなことないのに。あ、本棚は自由に見ていいよ。漫画は無いけど小説はある程度揃えてるから」
「小説……おぉ!児童書からラノベ、純文学まで……伊藤さん読書家ですか?」
「待ち時間とか暇をつぶすのにちょうどいいんだ。集めてたらこんなに」
「へぇ……ん?」
几帳面にシリーズ、作家ごと仕舞われている本。その中の一冊を手に取りパラパラ斜め読みしていると、何か挟まっていた。
目線の合ってない私の写真。…………。
どう見ても隠し撮りです。本当にありがとうございました。
「…………。」
「あ、これこんなところにあったんだ。結構気に入ってるやつなんだよね。良かった見つかって」
「……あの、伊藤さん?」
「ん?何?」
「これはどういうことでしょう?」
「えへへ、隠し撮り」
「ここまで正直に隠し撮りを告白されるとは!」
「別にやましいことしてないし。」
隠し撮りは立派な犯罪ですよ!十分やましいことですから!
「本当、可愛いよねぇ。野良猫を構おうとして冷たくされてしょんぼりしてるところとか」
「はっ!?」
「この前は遠くから眺めてたらバレて逃げられちゃってたね」
「み、みてたんですか?」
「見てました。講義ない時間にね」
空いた時間で勉強したらいいんじゃないかな(白目)
大学生って勉強してないと即単位落ち、即留年なんでしょ?
高校生には想像もできない恐ろしい世界だ。
「じゃあ、本題に入ろうか」
「本題?」
「そう。ささちゃんを此処に連れて来た理由。」
理由……?そういえば、聞いてない。
さっきまで本気で貞操の危機に直面してるもんだと思ってたからすっかり抜けてた。
手篭めにするのが目的じゃないなら、何でこの人は私を縛った挙句あんな行為に走ったんだろう。
……まともな理由が思い浮かばない!
「理由、ですか。そうですね。さっさと話してください」
「うん。俺がささちゃんを連れて来たのは」
「ただいまー」
「おじゃましますねぇ」
「どうぞ上がって上がって!珠履!居ないのー?」
「……あれ?もう帰ってきたんだ……。」
扉が開く音がして、階下が人の気配がし始めた。
知らない声と聞き慣れた声。
間違いない。この声は……!!
伊藤さんを横切り部屋を出て階段を降りる。
「お母さん!」
「あらさらちゃん」
そこには予想通り、私の母が立っていた。
今日は出かけるって言ってたのに、何で?
いや此処に出かけるってこと?此処に何の用があるんだろう。
「どうしてこんなところに!」
「どうしてって、挨拶も必要でしょう?向こうからの申し出とは言え教えてもらうのはこっちなんだから」
「え?」
「さぁさどうぞ座って!あら貴女が簓ちゃん?初めまして、伊藤帯代です!よろしくねー。」
「あ、は、はい。どうも……?」
教えてもらう?どういうこと?
突然の言葉に固まった私。後ろから伊藤さんがひょこっと顔を出した。
「お帰り母さん。早かったね」
「そんなことないわよ。いつも通り。若干遅いくらいなんだから」
「そう?」
「それよりアンタちゃんと家庭教師出来るんでしょうね?」
「大丈夫だよ。母さんは心配し過ぎだと思う」
「今までの行いを省みなさい」
「ど、どゆこと?」
ようやく絞り出せた言葉がこれだ。
というより私は早くこの混乱をどうにかしたい。にがいきのみが欲しい。
「あら、そういえば話してなかったわね」
そうだったそうだったと言わんばかりの態度に、私は更に混乱した。メダパニくらったとかそんな。
そして母は、混乱状態の私に更なる爆撃を開始する。
「まだ話してなかったの?」
「うっかりしてたわぁー。さらちゃん最近成績落ちたでしょう?」
「うっ!」
「去年まではどの教科も5以下なんてなかったのに。今年の1学期の成績表、4がついてたじゃない。10段階の4って中の下よ?」
「うぐぅっ!」
「先生も居眠りが多いって言ってたし……このままじゃお母さん。あなたからパソコンを取り上げなきゃならないわ」
「そ、それだけは!それだけは平にご容赦頂きたく存じ上げますお母様!」
「私だってやーよ。さらちゃんマイパソコン貰ってとっても喜んでたもの。だけどこれはしかたのないこと。成績が落ちた原因があのパソコンにあるというなら、母さんは心を鬼にしてパソコン取り上げ&スマフォ停止の刑を施行しなきゃならなくなるわ」
「やめてくださいしんでしまいます」
なんてご無体な!殺生な!
現代っ子の私にネットを取り上げるというのか!そんなことしたら私死んじゃう!
続きが気になるマイクラ動画とか実況、手書きMADも見れなくなるなんて嫌だぁぁぁぁぁ!!!!!!
「だから!」
「うぅ……!酷いやお母さん……え?」
「お父さんと相談して、さらちゃんに救済措置を用意することにしました!」
「きゅ、救済措置?」
「そう救済措置。お父さんもさらちゃんが悲しむのは本意じゃないのよ。」
「ぉ……おぉ……ふおぉぉ……!!神よ……っ!!ありがとうございます神……!」
「その救済措置というのが、伊藤さんの息子さん!」
「……はい?」
つまり……どういうことなの?
えっと、成績が下がったから、ネット環境が取り上げられて、でも寛大な慈悲によって、救済措置?
「伊藤さんのお子さん、珠履君ね、国立大の現役生なんですって!すごく頭良いのよー。それであなたのこと話したら家庭教師を申し出てくれたの!最初はスペースも無いし悪いからって遠慮してたんだけど……。「家なら一軒家で余裕ありますし、人に教えるのも勉強のうちですから」って言われて、結局バイト代を受け取ってもらうって条件でお願いすることにしちゃった!最初はお金もいらないって言われちゃったけどそれだけは譲らなかったんだから。」
「良いんですよー!この子ちょっと前まで夜遊びばっかの放蕩息子だったんですから!あ、勿論二人きりなんてさせませんから安心してくださいね。私のパートはシフトの融通が利きますから!」
「あらあら大丈夫ですよーこの子ったら男っ気もないですし私に似て華のない顔立ちですからー」
「そーんなことないわ!下野さんは母娘共々とてもかわいらしいもの!」
「あ、あの!もしもしお母様!」
「あらごめんなさい。ここまで褒められたこと無くてつい浮かれちゃったわ。で、条件ね。“来学期の成績をオール7以上にする”以上!」
「なんて無茶ぶり!」
「元に戻すだけで済むと思ってるの?なんならオール10にしても良いのよ?」
「スイマセンでした」
要するに、成績上げろってことね。そのために伊藤さんと仲良くお勉強しろと。
……悪い人じゃないけど、ちょっとなー……。変態だし、変態だし、何より変態だし。
いざとなればミセス伊藤に助けを求めれば良いんだろうけど。なんだろうなぁ嫌な予感しかしないよ。
「まぁ、実技系だけは5でも可にします。勉強してなんとかなる分野でもないものね」
「お心遣い痛み入ります」
体育とかまで入れられたら詰むからね。無理ゲーになっちゃうもんね。
……うぅぅ……身の危険を感じるけど、背に腹は変えられない。充実したネット生活のためにも、逃げるわけにはいかない!
「ところで珠履。2人で何してたの?」
「挨拶だよ。オリエンテーションみたいな。ほらささちゃん俺とは初対面だし、勉強教えるにしても嫌われてたらやり難いでしょ?」
あのセクハラ行動集が全部オリエンテーションだったとか、この人のコミュニケーションは歪んでる。
寧ろあれで嫌われないと思ってる辺り本当に凄いわ……。
普通にしてれば悪い人にはならないのに。
「オリエンテーションでどうして簓ちゃんの靴下がなくなるのかしらね」
そういえば靴下無い。何処に消えた私の黒のハイソックス。
「お茶こぼしちゃってさ、今乾かしてるんだよ。もう乾いてるんじゃないかな。」
そしてこの誤魔化しである。よくもまぁいけしゃあしゃあと言えたもんだ。
本当は女子高生の生足をprprするために脱がしたのにね!
「ふーん」
「じゃ、今日はもう遅いし、勉強は明日からにしようかささちゃん!」
「え?お、おう」
掛け時計を見ると結構な時間だった。全然分かんなかったんだけど。
よく考えたらあの部屋遮光カーテンに照明だったから、外の様子分からなかったんだよね。
……なんでカーテン閉めてたんだろう。寒気がしてきた。
「ごめんなさいねぇなんのお構いも出来なくて」
「いいえとんでもないです。さぁ、さらちゃんもご挨拶して」
「え?あ、コ、コンゴトモヨロシクです」
「うふふ。」
玄関まで案内され、私は靴を履く。
伊藤さんは私の鞄を持ってきていた。ついでに靴下も。
靴下を渡された時若干名残惜しそうな顔されたけど気のせいだ。そうだそうに決まってる。
「それじゃあささちゃん。また明日」
ポンポン
頭を撫でられる。
年下の、弟妹にするような手つきで頭を撫でられちょっとだけ気恥ずかしくなった。
少し顔が赤くなってしまったかもしれない。
「ま、また明日」
だけど騙されてはいけない。この人はド変態なのだ。セクハラ発言も当たり前な変態紳士。
そしてさり気なく明日の約束を取り付けてくる。
人前だからか人のいい笑顔を浮かべているけど、やっぱりこの人はどうしようもないくらい頭の回る厄介な変態だ。
初対面であの笑顔だったら、高校生の小娘がころっと騙されてもしょうがないよね?
……あれ?あの人どうやって私を誘拐したんだ?
確か……下校途中で、猫と戯れようとしたところまでは覚えてるんだけど。
本人に訊こうにも玄関扉は既に閉まってる。お母さんはもう伊藤家の敷地を出て私を呼んでいた。
後日、伊藤さんの部屋からスタンガンを押収したのは別の話。
下野簓
17歳高校生。所謂オタク。動画サイトから掲示板まで手広く閲覧する結構ガチな方であり、腐女子ではない。
趣味が趣味なだけに見た目普通の女子高生でも恋愛感情より友情で好かれる。家庭科部に所属してるのは部活動が週3日ほどだから。休みの日は常にパソコンに向かっており、お夕飯以外パソコンの前で食べてる。引きこもり予備軍。
伊藤珠履
21歳大学生。女子高生に容赦無いセクハラを繰り出す変態的な変態。
場所が場所なら普通に訴えられるレベルのことを平気でするが、所謂※ただイケ効果により今まで誰にも訴えられなかった。
夜遊び云々の過程であれなことからこれなことまで経験。好奇心旺盛な若さゆえの過ち。年取ったら黒歴史間違い無し。
元のタイトルは変態とオタク少女。テーマは『引くレベルのセクハラ下ネタ、そしてネットスラングとネタの応酬』AAは自重。
伊藤(→)下野くらいのふわふわした関係なのでまだ恋愛ではないです。
伊藤さんのセクハラは可愛い女の子に対してのコミュニケーションの一種なので恋愛感情は殆ど無いのです。
でも伊藤さん曰く(近所の妹的な意味で)大好きな子のパンツにこそ価値があるらしいのでやっぱり彼は変態ですわぁ。