第一話【羨望と忌避】
強烈で鮮烈で、何よりもその血濡れの体は感動的なまでに美しかった。
どんなに傷つこうとも倒れず、どんなに抗い難くても屈しない。立ち向かうということの素晴らしさを、あの人は私にまざまざと見せつけてくれた。
見せてくれると言った貴方の目的は果たされた。私は貴方のそんな姿に魅せられて、栄光を勝ち取る姿を羨ましいと思った。
でも、違う。
違うのだ。
貴方はいつでも立ち向かう。その果てに待つ栄光の輝きを知っているから立ち向かう。
でも無理なのだ。私は、貴方のようにはなれない。
立ち向かうことで傷つくのが怖い。
立ち向かうことで屈しそうになるのが怖い。
立ち向かうことが苦痛でしかないという事実が、変わらない。
私は、駄目なんだ。貴方の輝きはとてもとても素晴らしくて、そう言う風に生きられたらどれほど素晴らしいのかと思うけど。
それは、英雄である貴方だから出来ること。
私は、違う。
「……いなほさん」
その集大成を見て、私は止めどなく瞳から溢れる涙を拭うことすらしなかった。
立ち向かった先で見つけた栄光の光。貴方の達したその一歩は、きっと奇跡のような現実で。でも、現実感のない奇跡でしかない。
あぁ、そうなんだ。貴方は私を嫌っているのと同じように、私は貴方が妬ましい。
私だって、そういう風に生きたかった。
私も、貴方のように現実に立ち向かえる強さが欲しかった。
でも現実はこれだ。私は、貴方の見せてくれた奇跡を持ってしても、この場から動くのが怖くて怖くて仕方ない。
だけどね。私も頑張ったときはあったんだよ? 一杯一杯頑張って、嫌われたくないから頑張って。
でもね。私はもう限界なんだ。
皆は褒めてくれなかった。一番、褒めて欲しかった人たちは、そんな私の努力を当然のものだって斬り捨てたんだ。
だから無理。もう駄目。
いなほさん。早森いなほさん。貴方は綺麗で、真っ直ぐです。だけど私は汚くて、こんなにもぐにゃぐにゃです。
だけど、だけどいなほさん。自惚れでもいいから、私は思うことがあるのです。
貴方はきっと、私とそっくりなんだって。
次回、現状。
例のアレ
心鉄金剛『刃毀れする憎悪━マステマ━』
詳細・線を割るというちょっとよくわからん能力を持つ剣。簡単に説明すると、斬った部分をさらに斬り、さらに斬った部分をまた斬る。つまり永続的な切断能力。直撃した部分は永続的な断絶空間に飲まれるため、事実上これが斬った箇所を回復することは不可能。
すごいぞー!かっこいいぞー!
JK「まそっぷ!」
マステマ「ぬわー」
でも折れた。