幕間【太陽の勇者】
これから語るのは、誰よりも勇猛果敢で、太陽のような輝きを持つ勇者、御伽話にもなった英雄、太陽の勇者の物語である。
工藤ミツルは、ただ優しいだけが取り柄の何の変哲もない少年であった。そんな彼がある日、目覚めたらいつの間にか別世界に渡っていたというのは、よくあるベタな話にしても、いざ自分の身に降りかかれば当惑するしかない。それから「突然呼びだしてすみません」という常套句から始まった話は、戦いに縁のないミツルにとっては驚きに溢れた話であった。
等というありきたりな話や、それからの過程には彼の物語を語るうえでさほど意味はない。
重要なのは、ミツルはただの優しい人間から、多くの出会いや戦いや別れを通じて心身ともに成長し、いつしか周りから太陽の勇者と呼ばれるようになったということである。
どうにもミツルを召喚した美少女、アナスタシアが言うには、勇者の魔法陣が一種の潜在能力覚醒の術式となっており、そこから現れたミツルは、一気にその能力が上がるようになっていたのだという。しかし、それを抜きにしても今やミツルのランクはB+という、天才の中の天才しかなれない領域にまで高まっていた。その力を持って、アナスタシア姫が治める小国、サンキングダムを攻める巨大な国、大陸一帯の統治をもくろむ邪悪の権化、エヘトロス帝国からの襲撃を防ぎ、隣国に現れた魔族を滅ぼしてそこと同盟を組むことにより、着実に帝国からの魔の手を切り捨ててきた。
今では近隣の小国が集まった連合の希望の星となったミツルとその仲間たち。アナスタシアも含めた仲間たちもまた、ミツルと共闘出来る程の実力を誇っている。
ダン・クレイ。持ち前の身体能力と、強化と炎の魔法、そして魔拳イフリスから溢れる炎によって、炎の魔人の異名を持つランクC-の亜人。ミツルが異世界に来てから、奇妙な縁により共に冒険をすることになった、ミツルの頼りになる兄貴である。
ヒルデ・カルガン。長命を誇るエルフの一人で、豊富な知識を生かした適切な助言や行サポートを的確に行うエルフの女性だ。エルフにしては珍しく、他種族を見下すことがなく、とある魔族退治以降冒険を共にしている。ランクはC、ランク持ちの多いエルフの中でもさらに秀でた力の持ち主だ。
ギュンター・エルクリア・フォーマン。サンキングダムと初めて同盟を結んだ国の大貴族の息子であり、高慢な性格で、事あるごとに一般市民やミツル達を侮辱するが、根は優しく、そして貴族の誇りとは民草の命を守ることであるというのを行動理念としている。剣術、魔法、どちらも高いレベルで備えた実力者。ランクはD+、メンバーでは一番低い実力だが、当然その実力は有象無象と比べたら圧倒的である。
そして、ミツルを異世界に呼んだ少女。アナスタシア・サンキングダム。心優しく、民衆からの支持も高い姫様だが、戦いに怯えるだけではなく、自ら降りかかる火の粉を払おうとする決断力に溢れている。そしてその能力も高く、ランクはB-、ミツルに近い能力を持ち、誰よりも傍で彼を支えた少女である。
そんな彼ら勇者一同は、それから無数の戦いを繰り広げてきた。
帝国との死闘。人を殺すということに怯えながらも、それでも帝国側の将との死闘を超えて得た確かな覚悟。
魔族との激闘。無数の魔獣を仲間に任せて挑んだBランクの魔族との戦いは、一度負けそうになりながらも、ミツルは何とか仲間の手を借りて勝利をおさめ、その絆を強くした。
他にも色々あった。アナスタシアの誘拐事件。苦悩の末に裏切りをしたギュンターとの激戦と和解。ダンがミツルを庇い受けた重傷を治す薬を探す旅の途中、出会ったドラゴンとの戦い。エルフに絶縁されたヒルデを、再び和解させるために奔走したこと。
「思えば色々あったね」
過去を思い返してミツルはそんなことを呟いた。仲間達は、のほほんとあの壮絶な日々を一言でまとめるミツルに呆れた風な眼差しを向ける。
だが全員分かっていた。そんな少年だからこれまでの戦いを乗り越えてこれたのだと。
そして、その旅の終わりは、もうすぐそこにまで来ていた。
帝国の侵攻を防ぎながら、各地を渡り帝国打倒のための同盟を築いてきたミツル達の元に、ある日帝国からの使者が現れ、一通の文を手渡した。
決闘の申し込み。帝国がトップ、ローレライ・ブレイブアーク本人が、これ以上の無駄な戦いをする必要はないと、自ら矢面に出て戦いに応じるという内容だった。
勿論罠の可能性もあったが、これまでの帝国との戦いで、その誰もが敵とはいえ高潔な精神の者ばかりだったために(一部には非道なものもいたが)、彼らはその決闘の場に赴くことを決意した。
それに、罠があるからどうしたというのか。これまでの長くも短い旅路の中で積み上げてミツル達仲間の絆を持ってすれば、その程度真正面から潰して見せる。
「だから、ここで終わりにしよう」
ミツルは普段ののんびりした雰囲気を一転させて、勇者らしく勇ましさで皆に告げた。
誰もが頷きを返す。ここで決着をつけるために、長かった戦いに終止符を打つのだと。
そして、約束の地へとたどり着く。
かつて魔王戦争と呼ばれた戦いで現れた魔族の一体によって消滅した大地が広がる地は、茶色の大地が広がるのみで、草木一本も生えてはいない。
「……」
誰もが息を飲んだ。その壊滅的な情景に、その圧倒的な破滅の光景に、否。
その中央に、それはいた。
「かくして無数の苦難を乗り越えていく。挫折から立ち、苦汁を飲み干し、そして英雄は座に至る、か。必然ですね、己の眼前に貴様らが来たのは、いやはや、読んだのは己ではありますが」
広大な破滅の中央、それは地平線の彼方の僅かな点でしかない。
だというのに、そいつが呟いた小さな囁きは、吹き抜ける風の音よりも鮮明にミツル達の耳に届いた。
青い空と茶色の大地、その狭間にて君臨するは、ミツルは何処か懐かしい、しかし他の者から見たら異国の服装である鮮やかな赤色の着物を着流している黄金の女だった。点でしか認識できないというのに、何故かその女の姿がはっきりと目に浮かぶ。
黄金の女と現したが、まさにその通りとしか言えない。ミツル達のメンバーの女性陣も、世間で見れば美女の中の美女と言ってもいい。だがしかし、その女の美貌は、そんな彼女達と比べて隔絶としていた。風に靡く彼女を現す黄金の長髪、威圧的で、距離を隔てているこの状況ですら平伏したくなるほどの圧力を持った黄金の瞳、女性の平均を大きく超えるその体躯は、体全体が細くスレンダーな見た目だが、溢れだす気力が、彼女を体躯以上に大きくその体をしていた。
腕を組むその姿には、一切の油断もない。ミツル達がこれまで対峙してきた誰よりも強烈なその女性は、靡く髪を抑えることなくミツル達を待ちうけていた。
「お待ちしました。己が貴様らをここに招待した、始原英雄ローレライ・ブレイブアークです。名乗りをお願いします勇者、歓迎の前に我を示してください」
一言一句が熱量を持っているかのようだった。発揮する存在感のなんと破格なものだろうか。まるで熱量の塊の如きそれを前に、ミツル達は無意識に一歩後ろに引いた。
「なんですかこれは……」
アナスタシアが苦言を漏らす。話には聞いたことはある。エヘトロス帝国が皇帝、ローレライ・ブレイブアーク。無数の小国が集まっていたこの大陸で、半世紀以上前に突如として覇を叫んだ彼女は、その力を持ってして瞬く間に近隣の国々を掌握、そして現在に至る。
ひたすらに国々を制圧する以外は、国内でも素晴らしき君主として坐しているローレライに、無条件で降伏する国もあるほどだ。だが国家としてただ隷属することだけは許容し難いという理由で、アナスタシアの国のように未だ帝国に敵対する国も多い。
だがそれらも文字通り蹂躙して制圧してきたこの女傑は、信じがたいことだが、建国当初はたった一人で国軍を相手にしていたという。
眉唾なその噂が、しかし今は現実のものとして理解できてしまう。ミツル達がこれまで戦ってきた魔族や人族が霞む程の力が、距離を隔てたここからでも感じ取れてしまうのだ。灼熱を体現している無敵の化け物。
「ふむ……あぁ、しかしあれですね。たまには敬語を使ったほうがいいかと思いましたが、その様子では違和感を持たれた様子──止めだ。オイ貴様ら、己を待たせるかよ?」
「ッ……!?」
ローレライにとっては僅かな苛立ち程度を感じただけの敵意。しかしその敵意は、ミツル達が構えるには充分な殺気であった。
全員が武器を取って構える。普段は余裕を持って事に当たるミツルすらも、額に汗を浮かべてローレライを睨んでいた。
だがローレライは、この世界でも高レベルの実力を持つ彼らが武器を構え、魔力を解放したというのに、一向に動く気配を見せない。警戒すらもしてはおらず、むしろその動作を不思議がっているという始末だ。
「ん? あぁ、確かに決闘という話をしてはいたが、その実、確かに己と貴様らに尋常なものを望むのがむしろ無粋だったかよ。ならばそれでいい。己も貴様らの態度に相応しき態度をしよう」
ローレライが腕を解き片手を虚空に掲げた。
ミツル達が警戒レベルを最大限にまで上げる。まさに敵の親玉に相応しき力が彼女にある。ただ手を掲げただけで、魔力など一切解放していないのにこの圧力。
でも、とミツルは後ろの仲間たちの気配を感じて、総身を駆け抜けた不安を払拭した。大丈夫だ。自分には仲間がいて、あいつには仲間なんていいない。
勝算は正直言ってわからない。でも、それでもミツルは自分たちの力を信じていた。仲間との強い絆こそが、何にも勝る強い力だ。ミツルは手に持つ伝説の魔剣。ホワイトフレアに魔力を注いで、刀身から白い炎を噴出した。あらゆる不浄を燃やし尽くす、太陽の勇者にのみ許された魔剣の能力。そして自分自身のB+という、Aランクに近い実力と、自分にも負けず劣らずの実力を持った仲間達。
負けるはずがない。敗北するはずがない。そしてミツルを戦闘にして、彼らの最後の戦いが幕を開ける。
「『護り手よ。その腕で迫りくる邪悪を振り払いたまえ』『戦いの力を栄光の我らに』『疾風の翼を』」
アナスタシアが得意の同時詠唱にてパーティー全員に強化の魔法をかける。これにより、単純な身体能力が全員十倍以上に膨れ上がる。
そして彼らがそれぞれ持つ魔法具が異能を発揮した。
ダンの魔拳がGランクの魔物すら瞬時に灰にする業火を吹き出す。天地を舐めるように広がるその拳に触れれば、あらゆる存在を消滅するだろう。
ヒルデの魔弓に番えられた矢が風をかき集める。音速すら超え、狙った敵を逃さぬ必滅の弓が、ローレライの首に向けられた。引き絞られた弦は、放されれば最後、対象を喰い切るまで止まることはない。
ギュンターの魔剣が冷気を放つ。ダンの放つ炎すら凍らせるその冷気は、攻撃にも防御にも使える至高のレイピアだ。そして敵にかすりでもすれば、その傷口から一気に凍り尽くして、敵を一撃で氷の棺に閉じ込める。
ランクの差など関係ない。それぞれの持つ魔法具は、己よりも数段上のランク持ちすら、直撃すれば重傷は必至の武装だ。それらが初手から全力全開。そして先陣を走るミツルの魔剣は、Aランクすら触れれば燃やし尽くす最高の魔剣だ。
背後のアナスタシアは、既に攻勢魔法の準備に入っている。長大な詠唱を持って放たれるそれは、本来戦略級と呼ばれる禁じられた言語魔法の一つだ。だがアナスタシアはこれをローレライに放つことに躊躇いはなかった。勿論識別した味方には当たらないように調整しているために、その躊躇いも最早ない。
では伝説を語ろう。太陽の勇者と呼ばれた者の伝説を。
「愉快、痛烈、流石と言おう」
そして、ローレライは笑った。瞬時に間合いを詰めてきた彼らの必殺を前にして、魔力も何も解放していない無防備な状態でローレライは笑った。
接触まで残り一秒もない。体を嬲る熱と冷気と風がローレライの黄金を揺らめかせる。
心地よいと感じた。肌をねぶるそれら全てが愛おしい。久しぶりに敵と会えたこの奇跡に感謝。
だが、それゆえに残念だ。
「しかし貴様らは、世界に対する宣戦布告でしかない」
ローレライが翳した手の指を鳴らした。
だが開始の合図は響かない。鳴らした音が世界に伝染するまでの僅かな間。
その間に、ミツルとアナスタシア以外の全てが蒸発した。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
何が起こったのかもわからずに、ミツルは全身に走る激痛に悲鳴をあげた。
突然、何かが光ったのだけは見えた。同時に視界が暗転し、激痛だけが体中に走った。
「がぁぁぁぁっぁぁ!」
苦痛に呻きながら、何故という疑問が脳裏に過る。炎熱による攻撃? 馬鹿な、太陽の勇者である自分には、熱量に対する絶対的な守護が働いている。
だがこの体を駆け巡る痛みは、間違いなく炎にあぶられた痛みであった。
何故? 何故だ?
「ミツル様!」
遠くからアナスタシアの悲痛な叫びが届いた。そういえば、他の皆はどうしたのだろう。声が聞こえない。
「ふむ、流石はB+。己の一撃を堪えたかよ。」
感心したようなローレライの声が耳元に響く。
「がぁぁっぁぁ!」
ミツルは咄嗟に手に持ったホワイトフレアで斬りかかった。怪我を負っているとはいえ、強化により加速した一撃は音速すら超える。しかしその一撃は、柔らかな何かに優しく受け止められた。
「これも驚きだ。一撃を与える気概もあるとな。ヴォルグアイの術式を模倣して召喚された奴とはいえ、地球製は流石の力よな」
ローレライは涼しげな、だが燃え盛るような口調でミツルを評価する。怒りに震えるミツルの瞳は、自動回復により徐々に視界を戻していく。
そしてミツルは見た。回復した視界で、目の前で眩く光る黄金を。
「う、あ……」
声が出なかった。折角戻った視界も、その全てが黄金に染まっている今、何の役にも立たない。
横薙ぎに振るったホワイトフレアは、ローレライの片手から漏れ出る黄金の炎に包まれていた。黄金の炎は、全てを燃やす白き炎を容易く食らっている。
次元が違う。格が違う。それは炎でありながら、炎ではない何かであった。そう、燃やすのではなく食らう。無尽蔵に、無造作に、一切の矛盾なく食らい散らす炎の塊。魔性の炎。
「凄いだろう? 己も、この炎を使用出来るのは未だに十分程度ではあるのだがよ。だがようやく届いたのだ。奴らの領域にな」
「奴、ら?」
「知らぬが仏、だが冥土の土産とも人は言う。喜べ地球人。己の言葉を聞いて逝けるという栄光をよ」
ローレライは凄惨に笑う。それすらも輝ける黄金の美を損なうどころか、一層魅力的にしていた。
そして、ミツルとアナスタシアは知る。ローレライ・ブレイブアーク。黄金の女皇帝の全てを──
……。
ミツルがローレライの話を聞いて、より強く怒りをあらわにした。
「……そんなことのために、そんなことのために俺達を利用して! 戦争までして!」
当然の怒りであった。たかだかその程度の理由で人々を殺して、自分達を貶めたというのか!?
そんな理不尽が許されるわけがないだろう!
「うぉぉぉぉぉぉ!」
話の間に回復が終わったミツルは、魔力をさらに解放してホワイトフレアの異能を暴走するまで解放した。リミットを越えた力の発露、しかし黄金の炎はそれすらも食らいきる。
無力。どんなに憤ろうが、どんなに敵が外道であろうが、力なき者にはそれを正せない。権利がまるでない。
そして、弱者の嘆きを聞き届ける程、ローレライは慈悲深い存在ではなかった。
「ではな勇者よ。異界の大地で抱かれるように逝くがいい」
瞬間、ホワイトフレアもろともミツルは消滅した。断末魔もなく、これまで培ってきた経験も何もかも、全てが無価値の塵と化す。
一瞬で食い殺されたミツルを、アナスタシアは呆然として見つめ、力なく膝をついた。
勝敗はそうして着いた。ミツル達が過ごしてきたあらゆる全てを一瞬で終わらせて、ローレライは膝をつくアナスタシアに声をかけるでもなく瞬時に燃やしきる。
後に残ったのはローレライただ一人。いや、その隣に黒いマントに身を包んだ細身の長身の男が突如として現れた。
「ネルブか。来るなと言ったはずだが?」
「我が愛しき主よ。しかしながら主の願いの輝かしき一歩目となれば、馳せ参じぬは配下の恥。我らの行いをお許しいただきたい」
そして、ネルブがマントを翻すと同時に、それぞれが圧倒的な実力を誇る男女が四人現れた。
そのいずれもが片膝をつきローレライに頭を下げている。いかようにも処罰を受けると無言で語るその態度に、ローレライは僅かに苦笑すると「よい、我が騎士はそれゆえによい」と言った。
「あぁ、優しき主。そして強きを目指す益荒男よ。その覇道を共に歩める幸福をどう現すべきか……」
「笑うぞネルブ。女に益荒男かよ。しかし、悪くはない」
呵々大笑。最早蹴散らした者達への思いなどローレライにはまるでない。ただの示威行為以上の意味はこの戦いにはなかったのだから。
故に、ここからは忙しくなる。ローレライはまだ見えぬ先の敵を思い浮かべて笑う。
「貴様らは既に知っているだろうがよ。あえて見せつけたぞ異常の獣共。最早第五位の異能は己の手に宿った。黄金の獣を象る黄金の炎、この一振りは貴様らの命にすら届きうる。故にここで宣言しよう!」
誰もいない。いや、確実にこの世界に存在する敵へとローレライは叫ぶ。虚空に翳した右手から、世界に知らしめるように黄金の炎を噴き出して。
「十九位などいらぬ! 貴様らの内の一人をこの黄金で消し去り、己もまた世界に反逆する英雄へとなろう! 己こそ始原英雄! ローレライ・ブレイブアーク!」
世界を食いつぶす黄金の英雄が牙を剥く。世界に内在する十八の敵性存在へと向けて、最強の英雄が吠える。
──かつて、無限に広がるこの世界、アースセフィラにて、一人の少女が召喚された。
少女は強かった。圧倒的な力を持って国を襲う強大な敵を倒し、そして英雄となった。だが強すぎる力は反発を生む。一つの国を救えば、その強さに恐れられ、再び召喚されて敵を討てども恐怖される。
そんな日々の中で少女はいつしか大人となり、その強さの果てに不老となり、永劫の果てを戦い続け……そして彼女は世界の真理を知ることになる。
いずれ揃うことになる十八体の最強。そして知った一つの真実。故にかつて少女だった女は動いた。半世紀もの間に力を蓄えて、来るべき決戦に備えた。
そして今、宣告はされた。最強へと抗う無謀を世界へ吠えた。最強にすら届く牙を持って女は叫ぶ。始まりの英雄、始まりの勇者は叫ぶ。
そう、伝説は終わっていない。御伽に語られる勇者の物語、その最初、空から世界を照らす太陽の名を与えられた勇者の物語。
A+ランクをも超え、帝国の全戦力に一人で拮抗しうる無敵の女。
だが今を生きる者達は知らない。かつて、彼女が古き時代になんと呼ばれていたのかを。
始原英雄、血濡れの黄金、黄金皇帝、呼ばれる二つ名数多にあれど、始まりの名はただ一つ。
ローレライ・ブレイブアーク。またの名を。
「灼熱の黄金よ!」
太陽の勇者。人々はかつて、彼女をそう呼んでいた。
ローレライ・ブレイブアーク。
女。年齢不詳。ランク測定不能。
明確な悪役のように見せかけた何かって感じです。一章の初めでエリスが持っていた絵本のモデルとなった人でもあります。
でも本編と絡むのは随分先の話なのさ!テヘペロ!