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不倒不屈の不良勇者━ヤンキーヒーロー━  作者: トロ
第一章【その男、ヤンキーにつき】
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幕間【新人医師ミリア・テテニアスの悲劇】二日目から

とりあえず執筆したところまで、続きは未定です。


【二日目】


 熱くもなく寒くもなく、小春日和の平和な朝。鳥のさえずりに耳を傾けながら起床した私だが、その穏やかな陽気とは裏腹に、あまり穏やかな心地とは言いづらかった。

 というのも、先日から担当することになった早森いなほさん。彼のその後を思えば、こうして惰眠を貪っていた自分が恥ずかしくてたまらない。

 全身複雑骨折に内臓損傷。

 彼がその体に受けたダメージの簡単な内容だ。厳密には少々異なるのではあるが、私が懇切丁寧に怪我のなんたるかをここで語った所でそれは単なる時間の浪費でしかなく、ましてやそれを解説などすれば、いなほさんの深刻な怪我の状況を私は改めて知ることになり、酷く憂鬱になってしまうだろう。

 それではいけないのだ。パジャマから着替えつつ陰鬱な表情を笑顔に変える。彼のためにも、私が元気であり続けて彼に元気を分け与えなければいけない。そのためにもまずは笑顔の練習である。

 姿見の前に立つ。服装は既に白衣の仕事着。身だしなみをチェックしてから、私は軽く深呼吸をすると、腰に左手をあててくねらせ、右手を目の前でピースした。


「ラブリープリティー! マジカル☆ミリア!」


 テヘペロ!


「……」


 さて、それはともかくとしてである。既にこれまでの私の行動でお気づきであろうが、医者の仕事とはただ単に表面上の患者の怪我を治すことだけではない。その怪我が元で作られた心の怪我のケアも医者の仕事となっている。

 この心のケアというのが結構曲者だ。眼には見えない心の怪我を診察する方法は様々な利便性を持つ魔法とはいえ確立されていない。必要なのは根気と根性、それと忘れてはいけないのが笑顔である。

 そのために私は日ごろ笑顔の練習を欠かさない。こういうのは道化師の仕事だとか、お前の笑顔は業務用でしかないのかとか言われそうなものだが、まぁ囀る奴は囀ればいい。業務用だろうがなんだろうが、心をこめていることには変わりないのだ。


「よし。それじゃ今日も元気に行こう!」


 鞄を持っていざ出勤。爽やかな朝日を浴びながら、私は今朝も騒がしいマルクの街へと繰り出す。

 にしても。


「ラブリープリティーはないわ」


 我ながら凄い才能である。

 なわけで、無事何の問題もなく私は診療所へとたどり着いた。


「おはよーございます!」


 快活な挨拶は一日の元気の元。笑って堪えてスマイルアゲイン。だが私の挨拶に応える人はおらず、スタッフがあわただしく駆けまわっていた。

 まるで大量の怪我人が出たのではないかといった慌ただしさだが、どうにも様々な資料を手に持って会議室に集まっている様子からみてそれはないだろう。私になんか気付かず慌てふためく皆に声をかけようとするが、それは憚られる雰囲気だ。なのでそのままこっそりと会議室に入ると、室内の広いテーブルに先輩達が頭を抱えて蹲っていた。


「あのぉ……」


 恐る恐る声をかけると、時間が合う日は飲みに誘ってくれるクレア先輩が、そのいつもは明るい表情を混乱一色に染め上げて、私のほうに近づいてきた。


「おはようミリア……」


「おはようございます先輩。それで、その、何かあったんですか?」


 私の質問に、クレア先輩は何処か遠くを見つめて「何か、えぇ、きっとあれはそうね、別の何かよね」と切なそうに呟いた。一体どうしたというのか、生理にはまだ早いし。

 と、クレア先輩は顔を引き締めると、真剣な眼差しで私を真っ向から見据えた。


「ねぇミリア。これから言うことはきっと信じられないだろうし、私達もまだ信じられないというか、これを信じたら人としてどうなのとか思うけどこれが真実だからこれを言わざるしかえないからともかく今から話すことを良く聞いてから病室に向かいなさい」


「は、はぁ」


 がっしりと肩を掴まれて、私は曖昧に答えるしか出来ない。って先輩、目が怖い──


「貴方の担当患者の早森いなほ」


「は、はい。彼がどうか?」


 そこで先輩は深呼吸すると。


「彼、今朝見に行ったら立ち上がってスクワットしてたわ」


 なんて、どうにも信じられない言葉を口にしたのだった。






 いなほさんの怪我は、正直一生涯をかけても完治することがない。というのが私達が出した結論で、仮に彼を治すのならば、王家に仕える専属の医者が伝説級の魔法具を用いて治療に当たって、どうにか日常生活に復帰出来るか否か、そういうレベルのものだった。

 少なくとも、怪我して二日目でスクワットが可能になる程の怪我ではない。何せありとあらゆる骨が粉々に砕けて、言ってしまえばいなほさんは軟体生物となっていたのだ。普通に考えて、人間なら治るはずがない。


「あり得ない。絶対にあり得ないわ」


 私は否定の言葉を繰り返しながら、いなほさんの病室に向かっている。もし動けるのなら、そりゃ嬉しいことではあるが、正直それ以上に私の常識が壊れたショックはでかい。

 達の悪い冗談という可能性もまだあるにはあるが、先輩達のあの様子を見る限り、その線はほとんどないだろう。

 それでも私は一縷の望みを信じて、いなほさんの病室に恐る恐る……


「失礼しまー……す」


 そして私は、己の目を疑った。


「よう。昨日の医者じゃねぇか」


 病室に入ると、そこには全身の骨を砕かれたはずのいなほさんが、片足を天高く掲げて、その状態でバランスを保っている信じがたい光景であった。

 あはー、先輩の嘘つきー、スクワットじゃなかったですよー。

 って、違うだろ!


「ちょ!? 何で動けるんですか!?」


「あー? んなの動けるからに決まってんだろうが」


 あ、それもそっか。動けるんだから動けるにきまってるよねー。

 アハハ。


「ねーよ」


 というか。


「そもそもいなほさんは全身の骨が砕けてるんですよ!? それなのになんでそんな片足立ちでバランスとってるんですか!? 普通軟体生物のように地べた這いずってぐんにゃりしてるのが普通なんですよ!」


「ハッ。骨が折れても筋肉あれば動けるだろ」


「んなドヤ顔で言っても説明になってません! なんですか!? 馬鹿ですか!? 筋肉は骨の代わりになるはずないですよ!」


「随分とご機嫌だな医者さんよぉ。まぁ理屈だなんだは知らねぇが、出来てるのも事実なんだからよ、まぁいいじゃねぇか」


 まぁいいじゃねぇか?

 まぁいいじゃねぇかだって!?


「そ、そんな理不尽な話が許されるわけないじゃないですか! もう常人らしく未来永劫まで四肢を動かせない状態でいてくださいよ!」


 なんて、医者にあるまじきセリフを吐くほどに私は混乱していた。

 そして驚くことに、この会話の最中にもいなほさんの悪夢の片足立ちはまるで崩れない。というか、まるで見せびらかすように、その状態のままで片足スクワットなんていう真似までしてみてきやがりましたよこん畜生。


「ってもよぉ。ほれ、動けてるもんは動けるしな。まぁちっとばかし体が痛ぇけど」


「それあれですからね、まず間違いなく骨が折れてるせいですからね」


「まぁいいか」


「よくないよ!」


 終いには敬語など忘れてしまう私であった。

 というか、こんな人類の規格を無視した人に今更敬語もくそもなかった。

 いや落ち着け私。あくまでもクールにいこう。理解したわ、この変態筋肉お化け相手に常識を持って挑んではならないってことを理解したわ。

 そもそも、この人、話が本当ならたった一人で魔族をぶっ飛ばしたんだよね? ハッハーン、わかっちゃいましたよ私。つまりいなほさんってばとてつもなく高度な治癒魔法も使えるんですね。見た目と反して。


「で、どんな治癒魔法を使ったんですか!?」


「あ? 魔法なんて使ってねぇよ」


「えー」


 えー。


 えー。


 えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?


「じゃあどうやって現在進行形で動いてるんですか! あなた人類舐めてるんですか!? そうですよね! そうだと言ってよぉ!」


「……なぁオイ、俺が言うのもあれだがよ、病院じゃ静かにするのが普通なんじゃねぇの?」


「病院は死にました!」


「そいつはまた物騒な話だ」


 自分は関係ないみたいな顔してますが、主にあなたのせいですからね!

 医者達の精神の拮抗をスクワット一つで潰した!

 あなたの!

 あなたのせいで!


「うぅぅ……」


 終いには涙腺が刺激されて涙が溢れてきた。うぅ、ごめんなさい先輩達、私では医者の崇高なプライドを保つことが出来ませんでした。


「なぁ、ここって俺が泣くとこじゃね?」


 筋肉が何か言ってるがどうでもいい。ふ、筋肉如きが今更何だというのだ。


「ヒッグ……エグッ……うぅ、それでば診察のぼうを始めまず……」


 いつまでも泣くわけにもいかないので、本来の目的であった診察をおこなうことにした。まだ視界は滲んでいるし、足もガクブルってるけどそこはそれ。


「さ、ベッドに戻ってください」


「あいよ」


 変な所で素直ないなほさんは言われた通りにベッドに腰掛けた(後に聞いた話だと、私の喚き散らす姿がめんどくさかったので素直に従ったらしい)。


「っと、それじゃ診察します。上だけ脱いでください」


 言われるがままにいなほさんはシャツを脱いだ。未だ幾つもの青痣や裂傷があるために包帯は巻いている。動けるようになったとはいっても、どうやら動ける程度まで無理矢理回復しただけであり、どうやら全快はしていないようだ。

 まぁ一生車椅子になりかねない重傷が重傷には変わりないがここまで治ったが異常なのには変わりないけどね。


「包帯とりますね」


 なので怪我が痛まぬようにそっと包帯を取る。でも痛みは当然走るが、いなほさんは顔色一つ変えなかった。流石戦士というべきか。

 で、包帯を取れば、青痣に裂傷が幾つもあるけれど、それすら魅力に変えるくらいに綺麗な体だった。


「わ……」


 思わず声が漏れてしまう。無駄毛の一本もない体は、皮に包まれた筋肉のラインが見事に浮かび上がっている。名刀と呼ばれる物の美しさってきっとこういうものなんだろうな。とにかく綺麗。私はその美しい刀剣の如き体を触診した。怪我は随分と酷いが、やはり動ける程度には問題ないみたいだ。

 続いて手に取ったのはその暴力的な拳である。包帯を解いてみると、無骨な拳は古傷と新しく刻まれた傷が幾つもある。でも骨には異常がないみたいだ。うん、これなら大丈夫かな?


ミリアのキャラが面倒になったので、続きは気が乗ってからになります。

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