表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/91

【IF − B】後書き



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


この IF − B は、

「何かが決定的に壊れた物語」ではありません。

むしろその逆で、

何も壊れていないように見えるまま、すべてが失われていく過程を描いた分岐です。


叫びはありません。

暴力も、明確な加害もありません。

誰かを止める必要が生じるほどの「事件」も、起きていません。


それでも――

確かに、取り返しのつかない地点へ進んでいきました。


このルートで描かれているのは、

悪意ではなく、

狂気でもなく、

ましてや「愛の否定」でもありません。


描きたかったのは、

理解が、愛よりも早く到達してしまったときの結末です。


理解は、とても静かで、理性的で、正しい顔をしています。

だからこそ、それは疑われません。

疑われないまま、人の輪郭を削っていきます。


梨花は壊されました。

けれど、誰かに壊されたわけではありません。

彼女自身が選び、委ね、沈黙し、

そして「問題は無かった」という結論の中に収まっていきました。


陽一は救いません。

最初から、救うつもりがなかったからです。

彼は観察し、理解し、解釈し、

「それが成立している」という事実だけを受け入れました。


それは残酷です。

けれど、現実によく似ています。


もしこの物語を読んで、

「何が悪かったのか分からない」と感じたなら、

それこそが IF − B の到達点です。


何も言えない。

何も断定できない。

でも、確かに胸の奥に、冷たい違和感だけが残る。


その感覚を、どうか否定しないでください。

それは、まだ残っている「否定する権利」だからです。



【IF − B】解説


IF − B は、IF − A と時間・年齢・社会背景を完全に同期させた上で、

「選択の質」だけを反転させたルートです。


大きな出来事は変わりません。

環境も、立場も、言葉も、ほぼ同じです。


違うのは、ただ一つ。

安心が、問いに変わらなかったこと。


IF − A では、

安心は「疑っていいもの」でした。

だからこそ、対話が生まれ、衝突が起き、

感情が往復し、関係は不完全なまま生き延びました。


IF − B では、

安心は完成されたものとして受け入れられます。

疑う必要がなく、問いを立てる理由もなく、

沈黙は自然な選択として積み重なっていきます。


結果として、

誰も間違っていないのに、

誰も幸福だと言えない場所に辿り着きます。


このルートの最終話「問題は、無かった」は、

結末ではありません。

判定です。


社会が、

関係が、

読者自身が、

「これは問題ではない」と判断してしまった瞬間の記録です。


もしあなたが、

「それでも何かおかしい」と感じたなら、

あなたはまだ物語の外側に立っています。


もし、

「仕方がない」「よくある話だ」と思えたなら、

この IF − B は、あなたの足元まで来ています。


救済はありません。

けれど、これは絶望の物語でもありません。


これは、

気づかないまま進めてしまうことの恐怖を、

静かに並べただけの話です。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ