エピローグ①
**エピローグ①
結婚式は、驚くほど簡素だった。
王都大聖堂の奥。
参列者は、必要最低限。
それでも、噂は瞬く間に広がった。
「辺境伯ルシアン・ヴァルクロワが、公爵家当主と結婚した」
「よりにもよって、あの“冷酷令嬢”と」
私は白ではなく、淡い銀のドレスを選んだ。
純潔の象徴など、もう必要ない。
「緊張している?」
ルシアンが、指先を絡めてくる。
「いいえ」
私は答える。
「この程度で震えるなら、とっくに死んでいますわ」
誓いの言葉。
指輪。
口づけ。
形式的なものばかり。
――けれど。
式が終わり、馬車に乗り込んだ瞬間。
彼は私を抱き寄せ、低く囁いた。
「これで、完全に僕の妻だ」
「逃がす気は?」
「最初からない」
その独占欲に、私は笑った。
「ええ。知っています」
◆
結婚後、公爵家と辺境伯家は事実上一体となった。
結果、何が起きたか。
――私を侮っていた貴族たちが、次々と失脚した。
表立った粛清はない。
ただ、
・契約を切られ
・取引を止められ
・援助を失い
・孤立する
それだけ。
「何もしていないのに……!」
そう嘆く声が、いくつも届いた。
私は、紅茶を飲みながら答えた。
「ええ。何もしていませんわ」
――信用を失う“原因”が、あなた方自身にあっただけ。
これが、私のやり方。
静かで、逃げ場のないざまぁ。
登場人物紹介
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アリシア・フォン・グラント
公爵家当主。前世で裏切りにより地下牢で死亡。死に戻り後は善良さを捨て、冷静に復讐を遂行する。「簡単に死ねると思わないことね」が口癖。
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ルシアン・ヴァルクロワ
辺境伯。アリシアと同類の冷酷さを理解し、共犯として溺愛。守るのではなく、管理・支配する形で彼女を傍に置く。
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リリアーナ・フォン・グラント
義妹。表向きは清純、裏では虚栄と欲望の塊。アリシアにより不正行為が暴かれ修道院送り。生かされながら社会的に消滅。
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エレノア・フォン・グラント
義母。公爵家の財産と権力に執着し、アリシアを毒殺。死に戻り後は横領と脱税の証拠で法に裁かれ、孤独死。
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エドワード・ハインツ
元婚約者。保身と野心のためアリシアを裏切る。死に戻り後は内通が露見し、処刑される。
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公爵(アリシアの父)
無関心な当主。娘を守れず、最終的に当主代理としてアリシアに権力を譲る。




