表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
revenger―復讐鬼―  作者: チョコましゅー
蠢く黒い思惑
21/22

すれ違い同盟

 人間は不完全な存在であるがために人間である。

 完全になってしまったら人間である必要はないはずだから、人間は不完全だ。

 では、完全な存在とはなんなのか?

 神と呼ばれる存在は完璧な存在なのか?

 その答えを知るものはいない。

 しかし、現実世界でないのならその存在を目にすることができる。

 否、目の前に現れた。

 偶然と奇跡によって産み出された一個の存在。

 それは、神ではなく、人間ではなく、存在しているとも言えないようなものだった。

 しかし、ある日一人の人間によって、それは限りなく完全と言える存在となった。

 それは「彼女」となって、人間界に現れた。

 だが存在が確認されただけで、顕現を許されなかった。完全な存在が人間界に現れたら、世界は変質してしまうからだろう。

 「彼女」は待った。自分を呼ぶものが現れるのを。その資格を持つものを。

 暗い空間で一人漂いながらずっと、永遠と呼べるほどの時間。

 「彼女」が生まれたのなら、世界はどうなるのだろうか?

 その時は、もうすぐそこである。



 ◆      ◆



 私はそのブラックサレナの提案をすぐには返事ができなかった。否定も、肯定もできないまま黙ってしまった。それどころか、なぜそんな提案をするのかが不思議だった。

 いったい何を考えてる? 私を仲間にしたところでなんの見返りもないというのに。

「見返りならあるよ。僕もきみも、死ぬ確率が減るんだから」

 耳をピコピコ動かしながら笑顔で答える。

「他にも理由が必要だというのなら、答えるよー。単純明快。僕は君が気に入ったんだ」

「…それだけの理由で素性も知らない奴と組もうと考えたのか?」

 まだ私はこの目の前にいる猫耳のアバターを信じられなかった。こいつはどこか危ない感じがする。さっきのハッキングといい、ブラックリリィの前で立っていたのといい、何かありそうだ。

 瑞華かもしれないと思ったけど、やはりすぐには判断がつかない。私がまずすることは瑞華を見つけ出すこと。リリィに攻撃を加えるのはそれからでないといけない。

「別に返事はすぐじゃなくていいよー。…そうだねー、登録期限が一週間だからー、五日後のこのくらいの時間にここに来てもらうってのはどう?」

 五日間考える時間があるのか。

 でも、いくら考えても仕方ないかもしれない。怪しいと思ってしまえば怪しいし、信用なんて今日出会ったばっかりなのだからしようがないし。

 だから私の答えはこうだった。

「いや、その必要はねえ。あんたの提案を飲んでやろう。たしかにあんたとなら俺はメリットがあるしな」

「そっかー。よかったー断られなくて」

 ブラックサレナはほっと胸をなでおろす。どうやら、見た目に反して結構緊張していたようだ。

 しかし、こいつが誰だかわからんが後々厄介事に巻き込むのは不味いかもしれないな。

「よろしくね。ライナ」

「ああ。こちらこそ」

 そのときはまあ、そのときか。

 差し出された手に握手をしながら内心そんなことを思った。



『いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?』

「はーいミハルちゃん。参加登録しにきたよーん」

『参加登録ですね。承りました。ではこちらにお名前をご記入ください。なお、複数人で参加されるのであればteamの欄に印をつけてください。その際チームリーダー、メンバーの人数、チーム名もご一緒に記入していただきます』

 用意されたのはパネル式の書き込み用紙だった。見ると意外と書くことが多い。

「え? チーム名なんて考えてないよー?」

「そんなものが必要なのか」

 ミハルさんの言葉に私とレナは顔を見合わす。

 ああ、一応言っておくとレナはブラックサレナのことだ。いちいちブラックサレナと呼んでいては面倒だからそう呼ぶことにした。

『特に考えていないのであれば、記入しなくても結構です。その場合こちらで勝手に命名しますので』

「それでいいんじゃねえか?」

 いちいち考えるのも面倒だし。

「ちなみに」

 レナがスラスラとパネルに書き込みながらミハルさんに質問をする。

「考えるのはミハルちゃん?」

『はい。そういうことになっております』

「ちなみに僕らのチーム名をつけるとしたらどんな感じに成るの?」

 ミハルさんは私とレナの顔を交互に見たあと、記入された名前を確認する。そして数秒考えたのちに咳払いをして声高々と私たちのチーム名を発表する。

『ブラックライナ』

「…お互いの名前を混ぜただけじゃねえか!」

 ついツッコミを入れてしまう。そんな安直なコンビ名芸人でもつけねえよ。

『おきに召しませんか』

「僕はそれでいいと思うけど」

「いやいや。せめて捻ろうぜ? 英語を日本語に直すとかさ。なんかあんだろそういうの」

『なるほど。勉強になります。ではこんなのはどうでしょうか?』

 もう思い付いたのか。よし。聞いてやろう。

『黒い閃光・ライサレナ』

 おお。意外とかっこよくなった。ミハルさん、やっぱり高性能だな。学習機能が高い。ただひとつ疑問がある。

「閃光はどっからきた?」

『デフォルトの称号から引っ張って来ました』

「へー。そんなのあるんだー」

 一応ゲームの名前を決めるシステムだからな。デフォルトくらいあるか。

『ライサレナはお二人の名前をくっつけただけですが』

「いや、さっきよりは全然いいぜ?」

「うん。カッコいいと思う」

 私たちが誉めるとミハルさんは頬を赤く染めて微笑む。

『お気にいられて光栄です』

 それを言うと顔を両手で隠してしまった。どうやら私たちが誉めたせいで照れてしまったようだ。

 …なんだこの人! かわいいなぁおい!

「じゃあチーム名はそれで、リーダーはどうする?」

 私がミハルさんに見惚れている間にレナはパネルを書き進めていたらしく、次のことを聞いてきた。

「あんたでいいんじゃないのか?」

「まあ僕が誘ったわけだからねー。異論はないよ」

「なあミハルさん。リーダーになったら何か特典みたいなものがついたりするのか?」

 私の質問を聞くと、平常心に戻ったのか両手を下ろし、先ほどまでと同じ凜とした態度になる。

『チームリーダー補正として敵、もしくは敵チームとの交渉権を持つことができます』

「どういうことだ?」

『たとえば敵の情報を入手した際、気に入った人がいましたら自分のチームに引き抜くための交渉をする事が出来ます。他にもアイテムの交換、対戦を棄権させたりする交渉もできるようになります』

「へー。ようは自分たちに有利になるように敵との交渉が出来るわけだー」

 なるほど。ただ単純に戦うだけじゃ面白みもないが、このシステムが採用されることによって情報戦も出来るわけだ。これは案外、難しいかもしれないな。まあ、この子の実力はわからないが、参加者召集の時のあれが実力ならば、負けることはほとんどないと思うが。

「それならわた…、俺がリーダーになろうか? 交渉は得意な方だぜ?」

「そうなのー? ならお願いしようかな」

「まかせろ」

「よかったー。実を言うと僕はそんなややこしいことするの苦手だからさー」

 だろうな。群がってきたアバターを片っ端からなぎ倒していこうとしたくらいだからな。そうだと思ったから私が引き受けようと思ったんだけど、うーん、私にもできるかな?

『では書類をお預かりしますね。登録に少々時間がかかりますのでそのままでお待ちください』

 ミハルさんはレナの書いた書類をパソコンへと打ち込んでいく。その作業スピードはパソコンの扱いを得意とする私でも惚れ惚れするようなタイピングさばきだった。

 わずか一分かそこらですべてうち終わったのか、再び私たちの方にむいて一礼をしてから口を開く。

『チーム、黒い閃光・ライサレナ。メンバーは二人、リーダー名アーマード=ライナ様。以上で間違いないですね』

 私とレナは顔を見合わせてから互いに頷き合う。

「大丈夫だよー」

「ああ。問題ない」

『ではこれにて登録を完了します。これ以後、登録した選手の名前が見ることができるようになります。相手のステータスチェックで確認してみるといいかもしれませんね。では、ご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております』

 深く頭を下げるとミハルさんはそのまま消えてしまった。もう私たちには必要ないってことか。今の時点では。

 さて、これからがやっと始まりって感じだな。私もこれからガンガン動いていかなくちゃならなくなる。とりあえず現時点の目的は、瑞華を探し出すこと。そのためにもいろんな奴のリアルの名前を聞かなくちゃならない。

 その他にも様々なことを考えながら、レナと別れた。

 さて、まずはリアルへと帰らなくちゃいけないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ