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revenger―復讐鬼―  作者: チョコましゅー
蠢く黒い思惑
20/22

再会。

 ターミナル。

 本来の意味ならば交通機関が集中する駅のことを指すのだが、ここでもそう言う風に呼ばれていた。なんでもアバターが交流や情報集め、さらにはミッションをこなすための入り口があるという理由からだそうだ。人が集まるという意味ではターミナルであっているのかもしれない。

 そんな雑談はいいとして、ターミナル。

 ここでは先ほども言った通りアバターが交流を交わす場であるということだ。

 そして私は今、とても困っている。

「なんでこうなった………?」

 リリィからの定時連絡が入り、これからはここを通過して他の場所へと移動をするとの報告を受けとりあえず下見に来たわけだが、予想外だった。

 下見をしようと考えたのは私だけではなかったらしく、ターミナルにはアバターが溢れていた。それだけならまだいい。移動をしているうちにあちこちでいざこざがあり、なぜか私もそれに巻き込まれる。というか私をターゲットにしている節がある。

(さっきのことをまだ根に持ってるやつがいるのか)

 怒鳴り声を浴びせられながら冷静に物事を整理していく。

 別に私をどうこうする気はないらしく、八つ当たりのような、憂さ晴らしのようなわめいているだけ。そんな感じにとれた。これじゃあ埒があかない。そう思いひとまず部屋に戻ろうと部屋への道を歩き始める。少し時間をおいてまた来るとしよう。



 ◆      ◆



 夜。

 と、言っても外は見えないし時計もないからそんなことはわからないが、体内時計に頼ってるとおそらく今は夜だ。この姿、アバターではなく生身なのでお腹は減るし眠気も襲ってくる。だからこの空腹感は夜ご飯の時間を示している。

 さらにそれから何時間かあとに私は行動を開始した。おそらく他のアバターたちはもう眠りについているはずだ。

 その予想は当たっておりターミナルに着くとがらんとした景色が広がっていた。人っ子一人いない。

 これなら、ゆっくりと見てまわれる。

 ターミナルと言ってもさっきいた玉座の広間とあまり変わらない造りをしている。違う点といえば、広間から蜘蛛の足のように伸びた通路がある点か。その通路のひとつの先に歩いていくと、数メートル進んだところで行き止まりだった。他にも数十の通路があったが四つほど試しに歩いたがどれも行き止まりだった。

 これはいったいなんのための通路なんだ?

 とりあえずこの通路にはもう用はないので広間の奥にあるビルとかでよく見る受付っぽいデスクに向かう。どうやらこのデスクでアバター登録をするみたいだな。

 私がデスクの前に立つとパソコンが勝手に起動しそこから立体映像ホログラムを投射する。デスクの向こう側に現れたのは受付嬢の風体をした女性だった。

『いらっしゃいませ。私、受付を担当してますミハル=アヤセと申します。以後お見知りおきを』

 きれいな声で自己紹介を始めた。おそらくこのゲームに内蔵されているプログラムだろう。

『それでは改めていらっしゃいませ。この受付では選手登録。アイテムの売買。依頼の確認。その受諾と取り下げが行えます。なお、今はまだゲーム開始前なので、現在までで依頼はまだ入ってきておりません。では、メニューをお選びください』

 そう言ってアヤセは手を横に差し出す。そこに受付のメニューの載ったタッチパネルが出てきた。きちんと『やめる』というパネルもあるのが律儀というか、なんというか。

「質問は受け付けてないのか?」

『現在ご質問は受け付けておりません。マスターのご指示がありましたら一定のご質問に答えられるようになります』

「マスターって、ブラックリリィか?」

『その質問にはお答えできません』

「ああそっか。これも質問になっちまうのか」

 となると今日はもう調べることはなさそうだな。あの通路のこととか色々聞きたかったけど。

「ああ。じゃあもう特に用はないな。じゃあなアヤセさん」

『またのご利用をお待ちしております』

 丁寧にお辞儀をするとにっこりと笑顔で私を見送る。

 カウンターから離れるとアヤセさんはそのままパソコンに消えていった。

 しかしわざわざ夜になってから来たっていうのに収穫なしか。

 はぁ~、と長いため息を漏らす。こうなってしまえばもうここにいる意味はない。帰ろうと思い出口の方へ体を向けると広間の奥で何か光が見える。

 あれは…、誰かが転送されてきた光か?

 しばらくその場でその光を観察し、やはり誰かがここに、ターミナルにやって来た光のようだ。

 広間の先を見据えその誰かを待つ。

「………んー? 誰かいるの?」

 歩いてきたアバターは私がいることに気がついたようだ。その声は聞き覚えのあるものだった。

「あんたは昼間の……」

 黒いドレスに身を包んだ猫耳のアバター。あのリリィの威圧に屈しなかった五人のうちの一人だ。

「あららー。また会ったねー。次は敵同士かも、とか言っててその日に会うなんてね」

「そりゃこっちの台詞だ。こんな時間に誰か来るなんて思いもしなかったぜ。何でこんな時間にここに?」

「あははー。実は部屋に戻ってからすぐ寝ちゃってねー。今さっき起きたとこなんだよ。で、リリィちゃんからなんか連絡が入ってるから見てみたらここの事が書いてあって、それなら今見に行こう、と思ったわけだよー」

 寝起きなのにテンション高いな。いや、寝起きとかそう言うのは関係ない話か。

 私は今ここであったことを伝え、現時点ではここにいる意味はないことを話す。

「ふーん。そうなんだ」

 それでも、猫耳のアバターは受付のカウンターに足を運ぶ。どうやら話の中に出た受付嬢が気になるらしい。

『いらっしゃいませ。なんのご用でしょうか?』

 私の時とは少し違う出てきかただ。自己紹介がない。あれか? 私がこいつに話したから省略したのか? だとしたら相当頭のいい機械だ。

「君がミハルちゃん? へえ、美人さんだね」

『ありがとうございます。でもちゃん付けは少し恥ずかしいですね。もうそのような年ではないので』

 あんた年とかあるのかよ!?

「じゃあミハルさんだねー。ミハルさんって日本人? なんか名前がそんな感じだけど」

 綾瀬美春とか? と首をかしげながら聞いている。しかし、アヤセさんはそれが質問なのでこう答えるしかなかった。

『申し訳ありません。現在質問にお答えできません』

「ふーん。こういう質問でも答えられないんだ。じゃあこうしようかー」

 何を思ったのかアヤセさんの頭、いや額か、に熱を測るように自分の額をくっつける。そうして何かを呟き始めた。

「なにやってるんだ?」

 というか心なしか、いや、はっきりとアヤセさんが迷惑そうな顔をしている。プログラムのくせに感情があるし表情も柔らかい。これは素直にリリィのプログラミング技術に驚嘆する。…というかここまで来るともうプログラムされたNPCじゃないな。うちらと変わらないリアルなアバターなのかもしれない。

「まあ見てればわかるよー。………はい。完了」

 何が完了したのか見ただけではわからない。

「じゃあもう一回質問ね。ミハルさんは日本人なのかな?」

 いやいや、だから質問は受け付けないんだって。そんなこと何回聞いたって、答えるわけ……。

『はい。私の元となる人物が日本人だそうです。マスターの友人の知り合いだそうです』

「って、答えるのかよ!」

 え? 何で答えてるわけ? 私の時はただの意地悪だったとか? もしそうなら軽くショックだけど。

「簡単なことだよー。この子の動力源であるコンピューターにハッキングしてー、ちょちょっといじくりまわしただけだよー」

 ………それは簡単なことじゃあないだろ? さも誰でも出来ることをしたみたいにいってるけど、高度なハッキング技術がないとそれはできない。しかも端末を通さないで体ひとつでそれをやってのけるなんてとてもじゃないが誰でもできることではない。

 この猫耳。いったい何者だ?

 そんなことを思っていると、こっちに振り返り私と目が合う。しばらく互いに無言で見つめあっていたがしばらくすると向こうが口を開いた。

「…ぼく、ブラックサレナっていうんだ」

 自己紹介だった。

 まさか自ら名前を開示してくるとは思っていなかったので、少し驚く。

「アーマード=ライナ」

 本当は答えるかどうか迷ったけど、向こうが名乗った以上こちらも名乗らなければフェアじゃないだろう。

「俺の名前だ」

「あははー。そのまんまな名前なんだねー。鎧を着たライナさんって意味だね」

「俺の意思で決まった名前じゃないからな」

 本当は自分で決めた名前だけど。

「どうして名前なんか名乗ったんだ? そんなんじゃこの先大変になるかもしれねえぞ」

「うん。いや、あのねー。ちょっと提案があるんだよ」

 すでに何か企んでいるようで、なぜかもじもじしながらこっちを上目づかいで見る。

 なんだこの今から告白しますみたいな態度は。なんだかこっちまで照れてくるぞ。

 しかし、彼女(?)の口から出たのは告白の言葉なんかじゃなかった。それでも、私を困惑させるのに十分な一言だった。

「僕と、チームを組まない?」

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