9章:宣言と通信
「連邦軍、通信途絶地点にパトロール艇を派遣。
重力異常は未検出。追跡中」
「反応早いな。……タクトが重要人物ってことか?
動きが良すぎて、逆に疑われるかもな」
「議会も動いてる。議長名義で、連邦警察にアストロフォージの拿捕依頼が出された」
「やっぱり、博士は見張られてたわけか」
「俺たちの失踪とほぼ同時に、アストロフォージが地球軌道に侵入する。
タイミング良すぎ。拿捕は当然ってわけだ」
「連邦軍にはスパイがゴロゴロしてるな」
「連邦警察には、最新型のパトロール艇を出せって指示が出た」
「それって早いやつ?」
「競技用宇宙艇をデチューンした特注モデル。企業の贈呈品だ
スペックは非公開だが、確かに速い。ただ――地球軌道まで12日はムリだろう」
「リオの腕なら、勝てるってことか?」
「コンピュータ解析では、こうだ」
- アストロフォージ:地球軌道進入まで あと4日
- 僕らの艇:到達まであと5日
- 連邦警察:最速到達、9日後
- 連邦軍攻撃艇:到着は10日以降
「つまり――」
「俺たち、警察にも軍にも、両方に追われてる!」
「すげえ、大物じゃん!」
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「地熱再構築に使える地球滞在日数は、3日だな」
「余裕じゃん」
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リオが画面を見ながら告げる。
「さて。いよいよ“正体”を明かすときだ」
「アストロフォージは、既に地球軌道に乗っている」
「俺たちは、24時間後に地球軌道に入る。
その情報を、地球とアストロフォージに通信で送る」
「タクト。地球への通信文――もう書き終えたか?」
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僕は頷いた。
けれど、その一通の文書には、全てを込めた。
説明しなければならない。
これまでの経緯を。
博士・メルクリオ・レエスとの接触と、人工地熱再構築の詳細を。
公聴会で浴びた、あの視線。
僕らが、どう見られていたか。
資源。サンプル。見世物。
“人間”という言葉は、誰の口にもなかった。
このままでは、移住は不可避だ。
移住先では、僕らは“貴重な資源”以下の扱いを受けるだろう。
檻の中の猿より、価値はあっても尊厳はない。
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僕は、独断で動いた。
救助艇の技術者たちの支援を得て、博士に実験を依頼した。
過去の実験では、惑星が真っ二つに割れた。
今回も、同様の危険はある。
けれど、誰かが動かなければ――何も変わらない。
通信を通じて事前に説明していたら、こんな計画は通らなかった。
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だから、僕は書いた。
「僕らは、地球の所有者として振る舞うべきだ」
「所有者として、博士に実験を正式に依頼する」
「僕は確信しました。
僕らは地球から離れて生きることはできない。
僕らこそが、地球の所有者なんです」
「そして――人類の祖先として、相応の尊敬を受ねばならない」
「その矜持を、命を懸けて証明しなければならないんです」
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画面に通信のステータスが現れる。
> 通信再開完了。地球軌道到達予告:010703時刻
僕らの存在が、地球に向かって、もう一度“声”になった。
それは、単なる予定通知ではない。
それは――宣言だった。
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