表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タクトの物語  作者: rhmgr
8/10

8章:時空の歪みと、報いのない友情

キャビンに集まった僕らは、

カーンから許可をもらい、「救助艇で観光旅行に出ている」という設定の――6日目だった。


リオが立ち上がる。


「さて、通信を切って遭難(そうなん)するぞ」

重力異常(じゅうりょくいじょう)を測定したことにする。報告書には“時空のゆがみ”って書いておけ」


カルクが笑う。


「軍のパトロール艇のログ、拝借(はいしゃく)した設定ってだけで、すでに豪華(ごうか)すぎる」

「地球に向かって6日目なのに、記録上はベガのアドベンチャーワールドから帰る途中だってさ」


ナヴィが肩をすくめる。


航路(こうろ)の記録改ざんなんて、みんなやってるだろ。

“休憩してました”が通る業界だよ。とはいえ、6日分はさすがに長い」


僕らは笑っていた。

でも、実際には疲れ切っていた。


---


カイトは航路記録の改ざんをリアルタイムで処理し続けていて、睡眠(すいみん)ゼロに近い。

リオは最短距離(さいたんきょり)で地球軌道を目指し、アストロベルトを強引に突っ切っている。

来るときには15日かかった距離を、今回は12日で突破(とっぱ)する計算らしい。


僕とナヴィは――博士から送られてきた「地球地熱発電施設ちきゅうちねつはつでんしせつの設計図》」を解析していた。


設計図は古すぎて、現代の技術仕様(ぎじゅつしよう)一致(いっち)しない。

だが、なぜか僕の知識の方が解読(かいどく)には向いていた。


---


「博士、本当に3日で準備できるって言ってるのか?」


「多分だけど……地下700kmの穴が“ある”ってだけで判断してる」


「博士のことだ。穴だけ確保できたら、建物は爆破するつもりかもな」


「メンテナンス用の清掃システムがあるらしい。

建屋(たてや)から直接、再構築ユニットを挿入(そうにゅう)できる設計になってる」


カルクがポツリと笑う。


「タクト、本当にスタッフ入りしそうだな。

もう半分、実験の一部になってる」


---


「よし、通信切るぞ。今から俺たちは“時空の歪みに落ちた遭難者》”だ」

「このあと24時間の休憩に入る。各自、休んでくれ」

「その間に、連邦側も何らかの動きを見せてくるはずだ」


---


僕は、静かにリオに声をかけた。


「……リオ、ありがとう。覚悟は決めたつもりだけど、

僕には君たちに報いる術がない。本当に、これでいいの?」


リオは、少しだけ驚いた顔をしてから――笑った。


「今さらだよ、タクト。

なにより、俺たちは“楽しんでる”。限界を試すのが好きなんだ」


「カイトも、ナヴィも、俺も――みんな同じさ」

皮膚(ひふ)の裏がビリついてる。生きてる実感がバリバリだ。

ちょっと間違えたら、惑星まるごとバーンってね」


---


そして、声のトーンが落ちた。


「それにな、俺には計算もある」


「地熱再構築がうまくいけば――俺たちの行動は、“なかったこと”になる」


「審議会がカーンの提案どおりに定住を認めれば、それが一番簡単な着地(ちゃくち)


「企業も議会も、お前たちの“資源のおこぼれ”を欲しがるさ。

そうなれば、俺たちの違反行動(いはんこうどう)は政治的に抹消(まっしょう)される」


「つまり、“成功”さえすれば、俺たちは存在しなかったことにできる」


「だから、なんの心配もないんだよ。タクト」


---


その言葉が終わった瞬間(しゅんかん)

救助艇の通信は静かに切断(せつだん)された。


銀河に(ただよ)う“沈黙のシグナル”。

僕らはもう――いない者として進む。



読んでいただきありがとうございます。


下の☆☆☆☆☆に評価をつけて頂けると嬉しいです。


面白ければ☆5個、つまらなかったら☆1つでよろしく!。


感じたまま評価して下さい。


ブックマークの登録もできればおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ