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タクトの物語  作者: rhmgr
7/10

7章:審議会と脱出計画

今日は、公聴会の2回目。

だが、場の空気は初回から何も変わっていなかった。


カーンは相変わらず、のらりくらりと遺伝子情報(いでんしじょうほう)の開示を避けている。

弁護士は劣勢(れっせい)法律継続(ほうりつけいぞく)についての解釈論が、延々(えんえん)と繰り返されている。

議会から法律事務所に圧力がかかっている気配もある。これはもう――茶番(ちゃばん)だ。


議員たちの姿勢も変わらない。

僕ら地球人》の“正統性”を証明するためにと、相も変わらず血液提供(けつえきていきょう)を要求してくる。


「連邦に提供済(ていきょうず)みです。そちらから入手するのが(すじ)でしょう」


僕は少しだけ丁寧(ていねい)な口調で返した。

議員の顔が引きつった。不快感(ふかいかん)があからさまに顔に出ている。


「そんなに顔に出しちゃダメでしょ。もっとマシな議員選んどいてよ」


静かに思った。


そして――公聴会は終了。

定住の是非(ぜひ)については、10日後の審議会で決定されるという。

この10日も、カーンの申し出によってようやく伸ばされた。

つまり、僕たちの運命は――交渉で延命(えんめい)された命程度の重みしかない。


---


救助艇キャビン。

作戦会議が始まる。


「計画、実行に移すぞ」

「移住が正式に決まってからじゃ、何かと面倒になる」


カルクが端末(たんまつ)を操作しながら言った。


「アストロフォージ号は先行中(せんこうちゅう)。速度は遅いが、地球軌道で合流できる見込みだ」


ナヴィが頷く。


「じゃあ、こっちの動きは?」


リオがニヤリと笑った。


「カーンに頼んで、カイトに“連邦見学旅行れんぽうけんがくりょこう”って名目でこの船を借りる」


カルクが補足する。


「目的地は、ナヴィの故郷――惑星ベガ。アドベンチャーワールドがある」


ナヴィが苦笑(くしょう)する。「そこ行くのかよ…」


リオが続ける。


「予定では、6日目に通信を遮断(しゃだん)する。その時点で“遭難(そうなん)(いな)か”は判別不能(はんべつふのう)になる」

「実質、3日は稼げる」


カルクが計算する。


「合計9日。そこに博士の実験準備に3日。ギリギリ間に合う」


ナヴィが声を落とす。


「……大丈夫か?」


リオがため息をつく。


「議会も、バカばかりじゃないからな。読まれれば終わる」


カルクがタップ音を止める。


「でも、他に手はない。これしかない」


沈黙。


そして、リオが笑う。


「決定だな」


カルクがうなずく。「面白そうだ。わくわくしてきたぜ」


ナヴィがポツリと漏らす。


「遊びを せんとや ()まれけむ」


リオが操縦席(そうじゅうせき)に立つ。


「地球周辺は宇宙ゴミだらけだ。

飛行の面白さは、保証するぞ」



読んでいただきありがとうございます。


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