4章:覚悟と沈黙
「タクト。お前の覚悟を知りたい」
リオの声は低く、どこか決意を帯びていた。
「この先、お前は一人で決断しなくちゃならない。
すべてを――町の未来も、自分の命も背負って」
「だけどな、お前が本当に望むなら。町の人たちは、移住しなくて済むかもしれない」
「俺たちは、お前を手伝う準備がある。どんな選択でもだ」
僕は、ゆっくりと顔を上げて彼らを見た。
3人の瞳が、言葉よりも強く訴えている。
「……お願いします。僕らは、地球で生きていきたい。
移住なんて選択肢は、僕にはありえない」
その言葉を、僕はリオの目を見てはっきりと口にした。
少しの沈黙。
そして、笑みが広がる。
「よし。俺たちも協力を約束しよう」
「面白くなってきたじゃん」
「一泡、吹かせてやろう」
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この艇の活動状況は、すべてコンピュータから吸い上げられて、日報として報告されている。
その日報が誰かの手で漏れている可能性は高い。連邦軍といえど、情報を売る輩は常にいる。
だが、カルクのハッキングによって今のコンピュータは――仮面をかぶっている。
公式記録上は通常運行。実際には裏で偽の作業ログが走っている。
これから先も、僕たちは“表の業務”をこなしながら、**この時間だけ、本当の方針を話し合う。**
「俺たちがタクトと組んでるってバレていないこと――それが最大の優位性だ」
「タクト、お前は今まで通りでいてくれ。いつも通りの、“ちょっと間抜けな案内係”でさ」
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5日目。
作戦会議は続いている。
今日は、憲章の話だった。
「憲章第4条3項b……これに押されて、移住は否定されるだろうな」
「町の土地の所有権については、別の裁判に持ち込まれる可能性が高い。
最終的には認められるかもしれない」
「けどな――地球時間で、確定まで最低でも3年はかかる」
「その間に移住は完了してる。これが連邦の“既成事実戦略”ってやつさ」
「つまり、憲章第4条3項bを突破しない限り、町の未来はない。」
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リオが指摘した。
「企業の本音は、町を移住させて、遺伝子情報の一括委託を潰すこと」
「そのあと?個人単位で町民の権利を買い取っていく。
結果的に、資源を分割所有するって流れだな」
ナヴィが呟いた。
「それって……拉致や、町へのテロ行為が始まるってことだよね」
僕たちは、実験動物なんだ。
連邦にとっては、“知的な資源”。
でも、群れで守らなければ、僕らはバラバラに“狩られる”。
これを町長たちが理解してくれるだろうか。
町長は、カーンを信じている。その目には疑念がなかった。
でも、議会が妥協を迫った時、カーンが僕らの敵になる可能性だってある。
その覚悟、町長は持っているのか――いや、僕が確かめることはもうできない。
この通信は、完全に傍受されている。
僕の言葉は、もう届かない。
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そして僕は、ひとり。
町の運命を背負って、決断する立場にいる。
恐怖じゃない。迷いでもない。
ただ――沈黙の中で、言葉が重くなるだけだ。
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