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タクトの物語  作者: rhmgr
4/10

4章:覚悟と沈黙

「タクト。お前の覚悟を知りたい」


リオの声は低く、どこか決意を帯びていた。


「この先、お前は一人で決断しなくちゃならない。

すべてを――町の未来も、自分の命も背負って」


「だけどな、お前が本当に望むなら。町の人たちは、移住しなくて済むかもしれない」


「俺たちは、お前を手伝う準備がある。どんな選択でもだ」


僕は、ゆっくりと顔を上げて彼らを見た。

3人の瞳が、言葉よりも強く訴えている。


「……お願いします。僕らは、地球で生きていきたい。

移住なんて選択肢(せんたくし)は、僕にはありえない」


その言葉を、僕はリオの目を見てはっきりと口にした。


少しの沈黙。

そして、笑みが広がる。


「よし。俺たちも協力を約束しよう」

「面白くなってきたじゃん」

一泡(ひとあわ)、吹かせてやろう」


---


この艇の活動状況は、すべてコンピュータから吸い上げられて、日報として報告されている。

その日報が誰かの手で漏れている可能性は高い。連邦軍といえど、情報を売る輩は常にいる。


だが、カルクのハッキングによって今のコンピュータは――仮面をかぶっている。

公式記録上(こうしききろくじょう)通常運行(つうじょううんこう)。実際には裏で偽の作業ログが走っている。

これから先も、僕たちは“表の業務”をこなしながら、**この時間だけ、本当の方針を話し合う。**


「俺たちがタクトと組んでるってバレていないこと――それが最大の優位性だ」

「タクト、お前は今まで通りでいてくれ。いつも通りの、“ちょっと間抜けな案内係”でさ」


---


5日目。


作戦会議は続いている。

今日は、憲章の話だった。


「憲章第4条3項b……これに押されて、移住は否定されるだろうな」

「町の土地の所有権については、別の裁判に持ち込まれる可能性が高い。

最終的(さいしゅうてき)には認められるかもしれない」


「けどな――地球時間で、確定まで最低でも3年はかかる」

「その間に移住は完了してる。これが連邦の“既成事実戦略きせいじじつせんりゃく”ってやつさ」


「つまり、憲章第4条3項bを突破(とっぱ)しない限り、町の未来はない。」


---


リオが指摘した。


「企業の本音は、町を移住させて、遺伝子情報(いでんしじょうほう)一括委託(いっかついたく)を潰すこと」


「そのあと?個人単位(こじんたんい)で町民の権利を買い取っていく。

結果的に、資源を分割所有(ぶんかつしょゆう)するって流れだな」


ナヴィが(つぶや)いた。


「それって……拉致(らち)や、町へのテロ行為が始まるってことだよね」


僕たちは、実験動物(じっけんどうぶつ)なんだ。

連邦にとっては、“知的な資源”。

でも、群れで守らなければ、僕らはバラバラに“狩られる”。


これを町長たちが理解してくれるだろうか。

町長は、カーンを信じている。その目には疑念(ぎねん)がなかった。


でも、議会が妥協(だきょう)(せま)った時、カーンが僕らの敵になる可能性だってある。

その覚悟、町長は持っているのか――いや、僕が確かめることはもうできない。


この通信は、完全に傍受(ぼうじゅ)されている。

僕の言葉は、もう届かない。


---


そして僕は、ひとり。


町の運命を背負って、決断する立場にいる。


恐怖じゃない。迷いでもない。

ただ――沈黙の中で、言葉が重くなるだけだ。

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