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人形シリーズ  作者: 古月 うい
第四部 見破られない人形 学園編

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皇后

「お帰り。早速なのだけれど…」


そんなことを1日で3回言われた気がする。


最優秀として帝に会う式典と、最優秀としての立場の確立のためにいろいろあるのだ。


「帝に会うって、こんなに大変なの?」


「帝に拝謁すると言いなさい。まあ、そうだね」


氷舞宮の手解きでまたしても所作や振る舞いを叩き込まれた。


「わたくしも帝の異母妹にあたりますけれどお話ししたことは愚かお目にかかったことも数えるほどしかありません」


どんな人なのだろう…


「それと、最難関は皇太后陛下とのお茶会よ。」


皇太后との、お茶会?


「え、聞いていないの?

皇太后、つまりは斎宮魅夜および帝のの母上にしてわたくしの養母、国母である祝子さまとのお茶会。

最優秀にとっては年に一度の一大行事。」


一対一で腹の探り合いは苦手なのだけれど…


んー、これも好奇かな?


国の後押しを手に入れるための。


そのためには早良に協会ができたか確認しないと。



「これでいいか。」


直前にようやくオッケーが出て、帝に会う用意が整った。



初めて訪れた皇居は豪華ながら品があってとても素敵だった。


授与式は皇族の魅夜、氷舞の他に皇太后がいた。学園は最優秀候補たち、生徒会、そして先代として優雨が参列した小さなものだった。


「八谷神宮上級巫女、五木汐凪。

そなたは成績優秀であるだけではなく、先の騒動では学園の生徒を命懸けで守った。

十分に最優秀を名乗るに値する。

この紐を受け取るか?」


帝はどうも幼さの拭えない振る舞いをしている。


まあ、20は超えているし、幼すぎるとかでは無い。

振る舞いと見た目が合っていないだけだ。


だいぶ威厳のある振る舞いなのに、顔を見るとどう見ても青年なのだから。


「拝命いたします」


紐を受け取って、これからの目標を言う。


「神話を変えます」


帝その他、一同がとても驚いている。


「私は神に拝謁したことがあります。

神々は神話ほど遠い存在ではありません。

神々は苦悩し、手探りでことを行っています。

彼女たちを、伝え続けたいのです。」


きっと、誰もが知らないと消えていく。


時は何もかもを置いていくから。


今、この瞬間も忘れられている。今ですら神界の教材にしか書いていなかった。


繋ぎ止めないと、消えてしまう。誰にも覚えられなくなる。


「そうか…励めよ」


帝が混乱している…

魅夜はぼけっと平時運転だ。


「では、祝子皇太后、五木巫女、こちらへ」


これから、皇太后とのお茶会だ。



「では、手始めに最優秀おめでとう。」


「感謝いたします。」


妖艶な熟女というべき容姿ながら、物腰は柔らかで優しげだ。

一体いくつなのだろう。


ずっと微笑みを浮かべて茶器を傾ける様は、本当に見惚れる美しい。

流石国母。


「いつも娘たちがお世話になっております。」


「皇太后さま、そう言われるほどのことはしておりません。

むしろこちらが支えられてばかりで、やはり内親王さまは違うのだと感じられます。」


あ、このお茶菓子美味しい。


サクッとしていて薄くてほんのり甘い。


「そう言える方で安心しましたよ。そして、先ほどの神話を変える…?とは」


「皇太后陛下、わたくしの申し上げること、信じるか信じないかはお任せいたします」


信じない人の方がいいだろう。それでも構わない。


私は皇太后に荘園でのことを、主に神と執政官についてを話した。


愛した人と共にあるために無理を通した二代目最高神。この国を守るために弱体化した3代目最高神。友人のために千年を生きる信仰神。


ところどころに崩壊を匂わせて、でもそうとは言わず協力を求める。


「そう。

その話を信じましょう。そして、協力をします」


「本当ですか!?」


願ってもない話だ。この国の5本の指に入りそうな権力者に協力してもらえるなんて。


「ただし、表立っては行いません。あくまで差別の是正や告知などをそうと思わせない形で行うだけ。

あなたにはそれをするだけの手腕があるでしょう。

皇太后に協力させるだけの、ものが」


それは、期待を裏切れない、決して失敗ができないということ。


「願ってもないことです。」


うーん、やっぱりこういうの苦手。


「娘たちはどうですか?うまくやっていますか?

魅夜は1人で大丈夫ですか?氷舞宮はきちんと学校生活を送れていますか?」


娘たちに関して一気に質問攻め。


「皇太后陛下は、娘たちのことが大切なのですね。」


「ええもちろん。“親友”であった女御の子供と、我が子。可愛くないわけがないでしょう。」


親友…氷舞宮の母上のことか。


「ご安心ください。斎宮はきちんと宮司としてしっかりやっています。

氷舞宮も、見る限りとても充実して過ごされておりますよ。」


決してこの人の本心が子煩悩なただの親だとは思わないけれど、それでも。


「大丈夫、しっかりやっております。」


この人にとっては気にするべきことではあるのだろう。

嘘であっても。



「皇太后さまも北寺学園出身なのですか?!」


「ええ。名家のものなら通うことを考えるほどの名門ですから。

これでも生徒会よ。

入内が決まっていたし。」


そんな年から結婚相手が…?


「お若い頃からの婚約なのですね」


「ええ。才能ある人を選ぶより、そのように育てる方がいいのだと。

それこそ四歳の時から。」


そうだったのか。ん、なら今皇后いないのはどう説明するの?


「帝は。幼い頃からの婚約ならもうご結婚されていてもおかしくないのでは?」


「ああ…いたのだけれど、亡くなってしまったの。」


それは…


「気にしないで。もう十二年も昔のことだもの。

それ以来不在よ」


「失礼ですが、好みのタイプなどは?」


もしかしたら、いけるかもしれない。


「大人しくて、無口ではっきりして、不思議な雰囲気の火のような子、と言っていたわ」


ほうほう、息子とはそんな話をして、娘とはしないと。


そして1人該当者がいる。


「政略結婚は、大丈夫でしょうか」


「むしろ政略しかないわ。いるのね。」


「来年の10月にはこちらの世界に」


それまでに有力候補が現れなければ、という取り決めになった。


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