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人形シリーズ  作者: 古月 うい
第四部 見破られない人形 学園編

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九十九

その年は、師走に期末テストがあってまた順位が上がった。


新寮長の選定があって、四年の人が選ばれた。


如月に、卒業式があった。


弥生は春休みで、真新しい制服を着た小さな子たちの参拝がとても多かった。


「神界に来ない?」


霧氷から提案があったのは、桜が咲いて掃除が大変な頃だった。


「いいの?」


「神界だから回数には入らないし、おいで」


早良と霧氷と共に、神界に行くことになった。


霧氷曰く、汐凪は上に飛べば辿り着くとのことだ。

意外と出入り自由なのだな。おばあさまのところはそうでもなさそうだけど。


「ここ、もう人が殆どいないのよね。最近霊姫が付喪神たちを連れて行ってしまって、半分になったの」


確かに前よりも閑散としている。


「秤姫、霊姫、千姫、蛍姫。今残っている上級神はこれだけ。」


全員知っている神だ。元々何人いたのかはわからないけれど。


「増やさないのですか?」


「そうしたいのは山々なのだけれど、この時期に“神界”に人を増やすわけにも行かなくてね。

私はこれでもみんなを大切に思っているから」


どういうことだろう。まあ、増やす余裕がないと思っておいていいだろう。


「こちらは、壊れますか?」


早良が不吉なことを言い出した。

なぜ神界が壊れることがあるのか。


「…そうね、それは内緒で」


壊れるってことじゃない。どうして?壊れる必要ないのに。


「汐凪、早良!」


「霊姫、お久しぶりです」


「もうそんなことはいいから。少し手伝って」


神界の書類仕事を手伝わされ、荘園の状況の改善方法を考えさせられた。


「犯罪を減らすには、家を作る、食べ物を充実させることが必要でしょう。」


「家を作るのが専門の神もいたのだけれどね…」


どうしてこんなに人手不足なの。そして家を作るのが専門の神って何。


指示系統も途絶えがちでもう嫌になる。

春休みいっぱいそんなふうに神界と神宮を手伝わされ、戻ったのはもう始業式2日前だった。


「久しぶり、汐凪」


「綾波も変わりなさそう。よかった。

ねえ、暇なのだけれどなにをしたらいい?」


状況的に暇ではいけないのだけれど、そうは言っても宿題もなく今は何もすることがない。


「なら、本を読むとか。汐凪の読んでるところ、あまり見たことがないし」


提案で本を読むことにした。

手に取ったのは法人や契約、経営、法律、神話など。


借りて帰ると綾波に変な顔をされた。


「汐凪が知る必要なくない?」


「神話は目的の一つだし、知っておいて損はないよ」


綾波は変な顔のままだったが、わからなければ教えてくれると言ってくれた。

さすが当主。


そうして、春休みは終わり、私は四年に進級した、


「編入生を紹介します」


前に出てきたのは、見覚えのある人。


「まさか…」


九十九珠守(つくもしゅま)です。どうぞよろしくお願いします」


高く澄んだよく通る声。


そう言って珠守は、珠守(すま)はこちらを向いてにっこりと笑ったのだ。


「九十九…委員長?」


気になったからには調べないといけない。


「委員長、九十九珠守というのはお知り合いですか?能力科への転科生なのですが」


委員長は振り返って笑った。普段とは違う、まるで猟奇的な笑み。


「お気づきになりませんか?執政官殿」


執政官…それを知っていて九十九となると…


「付喪神、ですか」


「正解です。覚えておられますか?霊姫の命により、こちらにやって参りました。」


忘れはしない。初めて神界に行った時、烏姫によって私たちの世話係をしてくれていた。


霊姫が…何を考えているのだろう。わからない。


なぜ珠守は神座を破壊されても存在しているのか。なぜここにやってきたのか。何が目的なのか。


「式神、式神」


泊の式神を出して、珠守が転校してきた旨を書いて早良に飛ばす。


それとは別に詳しく報告するために手紙を書く。


半分ぐらい書いたところで寮の扉がノックされた。


出てみると、寮母が立っていた。


「五木さん、九十九さんから部屋替えの申請があり、浜浦さんと九十九さんを入れ替えたいとのことです。」


珠守…何を考えているの?


「受け入れません。例外は、出すべきではありませんから」


今まで一度も部屋替えが行われたことはない。なのになぜ珠守はそれを言い出したのか。


「わかりました。では、失礼いたしました」


珠守…いや、神界は何を考えているの?



「汐凪、聞いた?」


「部屋替え?突っぱねたよ。今更変わりたくないからね」


綾波は帰って来るなりそう聞いてきた。


「そう…」


綾波の態度がどこか変だ。もしかして…


「かわりたかったの?」


だとしたら悪いことをしたな。今からでも取り下げに行こうか。


「違う。むしろ、汐凪はかわりたそうだったから、てっきり」


なぜそんなことを言い出すのか。


「汐凪は、九十九さんと同じになりたいのかと思っていた」


「私は綾波がいい。今さら人との関係を構築するなんて嫌だもの」



まさか、その数日後に珠守の同室が退学するなんて思ってなかった。

名前つけてもらってそっこーで壊された珠守再登場!

……には当然闇があります

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