打ち上げ
「お疲れ様!」「一位おめでとう」「あ、飲み物二つ買ってきて」
クラスメイトでの打ち上げ。会場はクラスの誰かの家。とても広い。流石内親王も通う名門校北寺学園女子部なだけある。
私はあまり仲の良い人がいないので水川さんの隣にピッタリ張り付いている。
「今回の劇一位の1番の功労者が何をしている。ほら、これを食べな」
なんだかんだ言って水川さんはせっせと世話を焼いてくれる。それに甘んじてチーズの入った揚げ物をパクパク食べる。美味しい。
「確か五木さんはこの間のテストでこのクラスで第三位でしたよね」
素子が隣に来て泡の出ている飲み物を注いでくれた。私はこれが少し苦手だ。痛いから。
「え、そうなのですか?」
初耳情報だ。
「クラスに張り出されていたのです。上位十人だけですけれどね。能力科にはないのですか?」
「ないね。能力科は学力を重視しないかららしいよ」
そういえばもうそろそろ二学期の期末テストだな。能力試験、落とさないようにしないと。
「一位委員長、二位の水川さんに次いで第三位でしたよ、覚えているのが正しければ」
そういえば何か貼られてた気がする?見ていないから知らなかった。
「最優秀でも目指されているのですか?」
「うん。目指してる」
それが目的。
「そうですか。
幸超えて 常々ことと なりぬれば その幸にこそ 真幸あり
幸せを超えて、常のことになったのならば,その幸せにこそ真の幸せがある。
今作りました」
今?!こんな会話の速さで作れるなんて。
驚いていると笑われた。
「そういう家なのです。皇にお使えし和歌をお教えするという」
そんな家があるのか。
もしかしたら、この家なら受け入れてもらえるかもしれない。
和歌集全てを読んでみたが、だいぶ荘園のものと被っているし。
やはり特進科にも所属するものだ。
「もしも、和歌の才能があるのなら、その人物を保護していただけますか?」
「家元に才能を認められたならば、ですけれど。人材が不足しているので。
それに、いつでも門扉は開いていますよ」
やった。
「実は、知り合いに困っている人たちがいるのです。その人たちは歌を作るのがうまいか下手かというのはおいておいて、大抵の人は和歌集を暗記しています。」
嘘ではないし、実際に和歌集を覚えているのだからほとんど事実だ。
「それが目的ですか?」
「……え?」
素子は表情がよく読めない。いつもいつも無表情というわけではないのに、なぜか。
「能力科への転入生には、決まってある雰囲気があります。鬱々とした、そんな雰囲気が。けれどあなたからは責任感のようなものを強く感じました」
素子は、何を考えているのか。
「その知り合いに居場所を作りたいのですね」
「はい」
そう、私の目的はそれだから。
「ごめんな、遅くなった」
「いえ、一応外泊届も出しているので遅くなっても大丈夫ですよ」
水川さんは優しい人だな。こんな人が学科長になるのかな。
ひとりで夜道を歩くと変な気持ちになる。
星がきれい。吐き出した息は、白く上に昇っていった。




