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人形シリーズ  作者: 古月 うい
第四部 見破られない人形 学園編

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かぐやひめ

そのあとすぐ中間試験があった。

なんと順位が大幅に上がって、上位五パーセントに入った。


「汐凪…すごいね」


「ありがとう。」


求められること自体はそれほど難易度が高いわけではないし。


あとは学園に対する貢献、か。何をするのかな。



「あ、あわれ!」


ええ…まさか衣装を着ただけでこうなるとは…


「素子?起きて。」


「しみじみとした趣があり、所作も美しい…ああ神様…」


いきなり天上大御神に祈らないで?!


「じゃあ、今日はこれで通すか」


ひょっこり出てきたのは帝姿の水川さん。美男子感が溢れている…


「服の分をどうかばせるかも変わりますしね」


私としては劇よりそっちの方が不安だよ…


「なら、やろう。かぐや姫」


結局あの映画を元にしたらしい。


素子曰く、あれは二次創作とも言えるものだから省略はしたし二次創作の二次創作はいけます!とのことだ。


生徒会に対してゴリ押ししたらしい。


映画とはだいぶ違う内容になった台本は2日で丸暗記したのでそこは問題ないのだがそれではだめだと怒られた。


「劇は朗読ではないのです。きちんとかぐやひめについて考えて、このような気持ちだったと想像して、それを表現するのです!」


そう叱咤されてでもあまりわからなかったので素子にすべて任せた。


「衣装雑に扱わないでください。もう予算ないので」


布面積大きいからな…他にも簾を買っていた。まさかの百均で。


他の予算は全てゲームに注ぎ込まれた。


おかげで自信作ができたらしい。私はあまり関わっていないのでまだ詳細は知らないけれど。


「終わったらみんなで打ち上げに行かないか?」


水川さんの提案にみんなが賛同している。打ち上げとは、ご飯に行くことらしい。


昨日打ち上げに行くと話していた綾波から教えてもらった。


「行けない人は?」


「私は行きません」


委員長が早速断っている。返事が食い気味だ。


「そうか。他には?」


いないようだった。もしかしたら委員長は普段から参加しない人なのかな?


こういうのは仲の良い人たちで行くのだろう。編入生で能力科の私はきっと行けない。


「楽しんできてね」


「何言っているんだ,主役。予定がなければ行くぞ」


え、あ、私も行くの?


「行ってもいいの?」


「主役じゃないか。それに五木もクラスメイトだ。どこに行かない理由がある」


そういわれて、終わってもないのに打ち上げへの参加が決まった。




「そう。かぐや姫、負けないよ」


報告するとそっけなく返ってきた。ほんとはそんなこと思ってないくせに。


天邪鬼だなぁ。


「文化祭は誰と回るが決まった?」


「うーん、多分早良とかな。私の古くからの友人。」


来るなら十中八九一緒に回るだろう。


「綾波は?」


「決まっていない。あまり親しい友人はいないし」


それはそれでなんだか悲しいな…


「作ろうとは思わなかったの?」


「思ったけど、いつの間にか嫌われてたから、もう諦めた。お父様もお母様も、そうだったから」


両親が…?そう言えば双子の妹がいるのだよね。


それに関係するのかな。


「なら、回れるなら二人で回ろう。」


「汐凪は友達優先するべき」


全く。当日には絶対一緒に回ってやる。




「劇の準備はできました。あとは体調を整えなさい」


「はーい、監督」


いよいよ、文化祭一週間前。


部活がなくなり、放課後の学校がやけに騒がしくなってきた。


「汐凪へ


一緒に回りたい人が他にいるのなら,そちらを優先してもらって構いません。


文化祭は行きます。


かぐや姫,楽しみ。」


早良からの返信が届いた。


よし、これで心置きなく綾波を勧誘できる。




「ごめんなさい、五木さん、こちらを手伝っていただけますか?」


「何かあったのですか?」


開始三日前にして、急遽出店班からのヘルプ。これは絶対に何かあるでしょう。


「こちらです」


教室に入って驚いた。


なんと、一番上に羽織る予定だった凝りに凝ったかぐや姫の上着が汚れていたのだ。


隣を見ると九十九委員長も驚いている。


「ごめんなさい…」


「何があったの?」


ペンキを塗った板を立てかけていたところ,それにぶつかった人がいて、板が羽織のところに倒れたとのことだ。


「今からは新しいものを作れないし…」


「あ、なら私羽衣と呼んでいる羽織持っているから、それを使うね」


そちらの方が能力が安定するし。


「え…」


みんなの反応が面白いな…これに驚くのか。


「平気だよ。それで、九十九さん、私を連れてきたのはこのためではないでしょう?」


「はい。人手が足りないので、まずは輪ゴムを買ってきてください。お金はこちらから出しますから」


おつかいか…まあいいか。


「ラ、ラ、ラララ、ラララー」


委員長に、みんなに頼りにされて、すごく嬉しい。


嬉々として輪ゴムを買って、戻った。


「ありがとうございます。ではこちらを…」


次々と頼まれてしまった。次はクラスの看板の見張りだ。


ペンキ塗り立てて乾かしている最中を、踏まれないように見ている、という暇なかかり。


それでもしっかりやってのけ、何とか始まるまでにすべてのものが完成した。

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