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人形シリーズ  作者: 古月 うい
一部 人形の一族

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6/92

人形さがし、瞳として

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー早良ーーーーーーーーーーーーーーー

「瞳一族の人生は、どのようなものですか?」


今日の質問はそれか。


「まず人というかは置いておいて、ざっくりね。派生して、育って、成人して位を与えられ、死ぬ」


結はざっくりすぎると文句を言いつつ、さくっとクッキーを齧る。


「もう少し詳しくお願いします」


「んー、派生する。で、通常は執政界で育つ。その後、一定条件を満たしたら、成人する。成人するまでは瞳一族の名簿?に載らないから、これでようやく仲間入りね。そのあと、年齢順に位を与えられるわ。そして業務をこなし、死亡する。」


他にどう説明したものか……人間でも一生は生まれて子を産んで死ぬ、の三つにまとまる。


あ、このクッキーおいしい。サクサクしてて歯に残らない。くどくない。今度からここで買おうかな。


「気に入ってくれましたか?」


結がにこにこ笑っている。


「あれ、もしかして」


「はい。私が作りました!」


腕を上げたものだ。まえはパサパサのバラバラだったというのに。


「六十年前とは見違えたわね。初めのうちは料理の概念を知らないのかと思うほどだったけれど。」


私が言っておいて、もう六十年たったのかと感傷に浸ってしまう。


時が経つのははやいなー。


「そうですか?嬉しいです!」


話を戻そうか。


「私、そんなに瞳一族については知らないわよ?なにせ、一度も会ったことがないひとたちだから。そんなに参考にならないと思うけれど……」


結は笑って首を振る。


「だって、私にとっては早良が一番瞳を知っている人だからです」


そうか。この子は元人間なのだ。時々忘れてしまう。


正直、この目の色からして結構力は強いと思うのだが……


「続きは明日にしましょ。」




「今日はなにかしら?」


「能力について、でいいですか?」


そう言えばしっかり説明していなかったな。


「じゃあ、私の力について説明するわね。私の力は分身。体の一部を分離させる能力。こんなふうにね」


そう言って指サイズの私をつくりだす。


「かわいいです!」


ならよかった。分身は長いこといさせてもいいことはないのでさっさと消す。


「あとは、治癒能力かな。相手や自分の傷を治す能力。」


逆もできるのは黙っておこう。


「力はどういう人が持っているのですか?」


「瞳一族全員。多分結にもあるのだけれど、私にはわからない。そういう器具があるらしいのだけれど、持っていないから。」


他にもいたな、そう言えば能力持ちって。


「あと、夢見幾世の人たちには、稀に…っていうには頻度が高いほど能力持ちが多いよ。ただ、1人ひと能力だけだけれどね。


大遠野国では、国の数だけいるよ。今は三人。なんで生まれるのかは知らない。多分執政界の人のうち誰かが生まれさせているのだと思うけれど。」


私も能力について知らないこと多いしな…


「どんな能力があるのですか?」


「色々。結界とか、命令とか、幻覚とか、遠視とか。その人によるね。」


能力について、他に何かあった気がするのだけれど、なんだっけ。


「夕陽が綺麗ー」


結が外を見つめている。横顔が陽に照らされて光っている。


「あ、思い出した。人に安易に能力について聞いてはいけない。人によっては切り札だからね」


結は頷いて、再び夕日に見入った。まったく。


「いつ帰ってくるのかな」


「さあ。汐凪のことだから、一月二月したら帰ってくるわよ」


汐凪はそういう子だ。大丈夫。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー汐凪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん、もうこんなにできるのかい」


おばさまの言葉にそちらを向くと、祐が座っていた。人形にしか見えない。


「だいぶなじんできたのね。そろそろ戻れるかな」


もう少しで帰れる。そう思うとわくわくする。


「そうだ汐凪(しおなぎ)、あんた人形を作ってみないか?」


その提案には首を振った。


「人形は祐以外いらない。」


おばさまは笑った。そして奥に入っていくつかの布をだしてテーブルに広げる。


「なら、祐の服を作ろうか。教えてやるよ。」


そう言われて服作りに取り掛かったが、なぜか人形の祐の方ができた。


私は10分に3寸も進めないのに、祐は倍をこなす。しかも私の指には刺し傷が3つできた。


「祐がおかしいんだ。あいつは恐ろしく適応能力が高く手先が器用だ。」


「おばさま、適応能力とはどのような能力なの?」


おばさまが頭を抱えてしまった。


「汐凪は外ずらだけは完璧な瞳だが、中身は見た目相応だな。早水はそうするしかなかったのだろうがな。」




結局、おばさまのもとには、2か月もいなかった。


「早いものだな」


「そうかな」


おばさまは私より長生きだからな……時間感覚は生きた年数によってかわる。


「あ、そうだ汐里。返すね」


私は汐里の手を握り、預かっていた能力を汐里に返す。


「もういいのか?」


うん。だって私にはもう、


「仲間がいるから。」


早良(さわら)、祐に結。これ以上いたら贅沢になってしまう。私はもう十分幸せだ。抱きしめた祐がすこし身じろぎするのがわかった。


「じゃあ、道が交わればまたどこかで。元気でね、汐里」


汐里はじっと見つめてきていたが、にっこりと笑って またな、といった。


「そうだ、瞳一族の奴らには気をつけな。あの人たちはきっとお母さまを探しているから、確実にあんたのもとにやってくるぞ」


それぐらい、おばさまに言われなくとも。


「じゃあね」




「ただいま」


「おかえりなさいませ。」


変らない部屋。早良がまるで朝出て行った帰りのように迎えてくれた。早良のこういうところが好きだ。


祐を下ろし、部屋に戻る。久々なのに、何も変わっていない。


「汐凪、結が帰ってきたから、お茶飲む?」


早良が呼びにやってきたのでベッドから降りて居間に向かう。本当に変わらない。


「汐凪!どこ行っていたのですか?いきなりいなくなって心配しましたよ。」


結がほほを膨らませて抗議をしてくる。かわいい~。


「早良ならなんとか言ってくれると思って。実際そうだったしね。」


早良はリンゴジュースを黙って飲んでいる。


「おばさまのところに行っていたのよ。ついでに能力を返してきた。」


さくっと言ってジュースを飲む。おいしい。でも少し薄いな。


「ここいいかげん引き払わないとまずいよね。明後日にでも引っ越す?」


「そうですね……確かにそろそろ引っ越しましょうか。」


そうして、4人で何度目かわからない引っ越した。

ーーーーーーーーーーーーーー???ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(きよ)、姉さまの孫が成人する」


清は振り返らない。ただじっと鯉を見つめている。着物の帯が水の中で揺れている。


「清、長から二人で行けって。ね、行こう?」


清はすっと立ち上がった。薄紅の羽織がすこし肩からずり落ちている。


「参りましょう。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー汐凪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「家を建てられたいのですか?」


早良は驚いて、結は絶句した。


「おばさまから山の権利をいただいたから。せっかくなら、定住したいじゃない。」


そうして、移儚夜一番の神社の近くにあるいわゆる霊山の一角に家を構えた。


新しい家は、ひとが来ないため安心して暮らすことができた。


けれど結はなぜか引きこもりがちになってしまった。人が来ないから、そうなっても仕方がないのかもしれない。


「ここ、夏祭っていうのがあるらしいの。行かない?この時期だし。」


そうすこし引きこもりがちになっていた結を連れ出して4人で御手洗祭にかりだした。


「わー。つめたいです!祐も来ますか?」


「人形には酷だな」


祐と結が川でたわむれているのを遠くで早良とみたらしだんごを食べながら眺める。


一粒一粒がちいさめで、たくさんついている。アツアツでおいしい。


「私がいない間、結とどうだったの?」


「どうといわれましても。ただ過ごしていただけでございます。」


早良は素直じゃないなー。そういうところが好きだ。


「お初におめにかかります」


後ろから声をかけられた。


驚いて振り向くと、紅い瞳をした人が立っていた。夢見幾世の服を着ていて、羽織は薄青。中の着物は丈が短い。そのうつくしい瞳はほんのり光っている。


後ろには紅い羽織を羽織って夢見幾世の丈が長い服を着た雪女のような青い瞳の人が立っていた。


「どうしたのですか?」


事態に気が付いて、祐をかかえて結がやってきた。


「執政界執政官第3位、(ごう)と申します。(おさ)の命により、瞳として汐凪を迎えに参りました。」

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