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人形シリーズ  作者: 古月 うい
第四部 見破られない人形 学園編

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新学期

「綾波、ただいま」


「おかえり」


私が寮に戻ったのは最後の方で、もう寮生はほとんど戻ってきていた。


「宿題はおわった?」


「もちろん。補講もほとんど修了させたから、二学期からは普通に授業に参加するよ」


私は、彼女を利用する。




「これで始業式は終わりです。三学期に誰一人欠けることなく進むことを願っています」


あ、二学期で誰かしらはかけるの。


二学期は最優秀への勝負をかけるいい機会だ。


鞄に荷物を詰めて食堂に行こうか外に行こうかと思案していると、扉のところに特進の人がいた。


「五木さん、少しこちらにきていただけますか?」


委員長だ。名前は…覚えてないけれど名札が九十九なので多分九十九さんだろう。


首を傾げつつ特進の教室の方について行く。


くるりと見回すと、綾波も同様に連れ去られている。どうしたというのだろうか。


「ただいま、連れてきました」


心なしかみんなの顔がぎらついているような気がする…


黒板には文化祭とデカデカと書かれている。こんな前からやるのか。


「五木さん、どうすればいい?」


何が。ここの文化祭どころか文化祭が何かもわからないのに助けを求められても困るのだけれど。


「ほら、五木が困っているよ。主述をはっきりさせない。そもそも初めにいなかった上に編入生なのだから説明してあげなさい」


ありがとう水川さん。


「この学園ではひとクラスで出店と舞台の両方を行います。演目などはあらかじめ委員長のくじ引きで決まっています。

舞台は竹取物語、出店の方はゲームになりました。

また幾つかルールがあり、布、ダンボール、板など学校にあるもの、売っているもので作ることが指定されています。

脚本も過去のものをそのまま使うことができません」


へー。で、何に困っているのだろう。


「竹取物語は、平安時代の作品です。つまり、当時の女性は髪が長いのですよ。

しかし、鬘は売っておりません。」


あ、そういうことね。


「そこで、私は五木さんが適任だと思います!艶やかで豊かな黒髪、巫女として和服は着慣れておられます。

ぜひ、かぐや姫を!」


圧がすごい。素子、少し落ち着いて。


「さらにかぐや姫は天に昇っていきます。他の人なら紐で吊るでしょうが、五木さんは能力科で飛行能力をお持ちです。

これ以上の適任はいません!」


「素子、落ち着いて」


そうゴリ押しされて、私は劇でかぐや姫をやることになった。


「服は十二単の別名を考えれば、かぐや姫がそこまで着込む必要はありません。

巫女服はあるので上から数領重ねればいいのです。若干時代は下がりますが、五衣程度でいいでしょう」


劇は素子に任せないと後々嫌なことになると判断した九十九委員長によって素子が劇の監督になった。


もちろん5人の貴公子は女性で、帝役に水川さんが指名された。



「ねえ、今更なのだけれど、竹取物語ってどういう話?」


素子にずっこけられた。ごめんね、荘園にはなかったんだよ。


「なら、映画の方を見てみて!そちらを参考にしようと思っているから。本家を再現すると理解されないし。はい、CD」


CDって何?渡されたのは薄い箱に入った円形のもの。


あとで綾波に聞こう。


「店の方はいいの?」


「主役が他のことする時間はないよ。貴公子とか帝はあるけど」


貴公子が、帝が酷使されてる。


「部活のない日、終礼あとにこっちにきて。よろしくね」


そう言われて別れた。



「まあまあ、主役に!しかもかぐや姫、五木さんにぴったりですね。」


部活の顧問の先生に褒められた。


「舞はありませんけれどね」


「問題ありませんよ。それより、発表会の稽古をしなくては。ほら始めましょうか」


発表会は長月なので、神月よりはやい。


ほとんど覚えているけれどね。


前のときは、新しい舞は2回見られたらいい方だったし。


「はい、一拍遅れていますよ」


うー、細かい…


こういうのをしていなかったので苦手なのだ。



「綾波、これ見られる?」


「できるよ。少し待っていて」


綾波はパソコンで何やらゴソゴソ作業をして、できたよと振り返った。


パソコンは綾波から基本何でもできる高いものという説明を受けた。


できることが日々教えられるたびに驚いている。買い物も勉強もできるなんて。


「かぐや姫?」


「見ておけって」


「なら、私は見ない方がいいか。お風呂に行っておくから、観てていいよ」


それはアニメ映画だった。


光竹の中から出てきた女の子が身分の高い人たちに求婚され、その人たちにかぐや姫が難題を出すが全員難題によって死亡し、帝に望まれる。けれど彼女は十五夜の日に月に帰ってしまう。


という話だった。類話なら荘園でも見たことがある。


「綾波の方はなにかやるの?」


「つまらないよ。サロメとカフェ」


サロメとカフェとは。


「劇がサロメ。お姫様が惚れ込んだ罪人の首を求めるって話。カフェは、んー、お菓子とかを出すところ。」


なるほど。よくわからない。


「かぐや姫なら楽器弾く?」


「私三味線か琴しか弾けないよ」


またしても綾波に呆れられた。琴を引ける人はあまりいないらしい。


「私もそんな、演奏家じゃなくて、舞と同じで生きる手段だったから」


ほとんど三味線であまり琴は得意ではないし。


「今そういう楽器が弾ける人がとても少ないの


だから、十年ぐらい前までは舞踊部も三味線でやっていたし、琴部もあったけれど、今ではない。」


あ、そうなの。人がいないって大変だな。


呑気に構えていると綾波がじっと見つめてきた。


「なに?」


「弾けるとわかれば、弾かされるよ。それこそ否が応でも」


うわー、それは嫌だな。仕方ない、弾けないってことにしておくか。




「五木さんはどんなかぐや姫をやりたいですか?」


「合わせるよ」


私に好みがあるわけないじゃんか。


「なら、何か和文化って感じのやつできますか?」


「舞踊とか和歌とかなら」


ただ、こちらと荘園では下積みとなる和歌が違うから使い物にはならなさそうなのよね。


「五木さん、万能…?楽器は何かできる?」


それ昨日隠すって決めたやつ…


「琴に憧れてはいるけど弾けない」


ごめんなさい素子…私すごく身勝手だね。


「なら琴を弾かせましょうか。うん、一週間もしたら台本ができるから、できたら知らせますね。携帯番号教えてくれますか?」


「携帯って何」


今は綾波がいないから、頼れないし聞くしかない。


「え…」


予想通り驚愕された。


仕方ないじゃん。



なぜ、荘園かもしれないのが出てくるのか謎だ。昔は繋がっていた、なんてないよね。


でもそうでなければ、どうして似た話があるの?


「わかんない〜。」


とりあえず疑問と報告をつけて早良に手紙を出した。


まずは今月末の、舞踊部発表会だ。



「ようこそお越しくださいました」


「こちらにお名前をお書きください」


ガヤガヤとうるさい空間だ。こんな場で踊るのか。


「私は2個出るのよね…」


「神楽と舞踊だね。がんばれ」


綾波は一人での出番だ。お互い頑張らないと。


「それでは、北寺学園女子部舞踊部による発表です」


さあ、始まりだ。



私がまず初めに鈴を鳴らすと、みんなは舞台袖に捌ける。


私の一人舞、しかも神楽だ。

シャンシャン鳴るのはこれしかない。


さっと手を広げて、くるくる回る。

シャラララと鈴が鳴る、鈴が笑う。


二度ほどこけかけたが堪えて舞いきった。


私の次は一年目だ。


この間に羽織を着替えて次の舞台。

こちらは舞踊部での披露だ。何度かずれてしまった。


そのあと、一番最後には綾波だ。

綾波がんばれと舞台袖から応援していると、ブッとおとがなって、それっきり音楽が途切れた。


嘘でしょう、こんな時に機材トラブルっていうのが起こるの?


周りには…古そうながら手入れされている三味線が一つなぜか置いてあった。


「借ります」


その場に座って、三味線を掻き鳴らす。


「大丈夫なの」


「何度も聞いている」


大丈夫、綾波。私が何とかするから。

私が全て担うから、綾波は安心して舞って。

綾波の晴れ舞台だもの。




「どういうこと、汐凪」


「弾けるだけだよ」


本当にただそれだけ。


「隠すって言っていたのに」


「だって、綾波が困っていたから」


それ以外に何か理由が必要なのかな。もしかしてこっちでは必要とか?


綾波はどこか泣きそうに笑った。


私、何かしてしまったのだろうか。

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