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人形シリーズ  作者: 古月 うい
第四部 見破られない人形 学園編

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選択授業

皐月に入って、だんだんと蒸し暑くなってきた。


学園の制服は水月(みずのつき)に衣替えらしい。早く衣替えしたい。


未だに多くの教科で補講を入れられていて、本格的に授業に参加できるのはいつになるのかと少し不安になってしまう。


「五木さん、選択授業と部活動の申込書の締め切りは来週だけれど、大丈夫かしら?」


担任の先生に移動教室中に捕まえられて私は顔面蒼白になった。


「まずいますいまずいまずい……」


「汐凪、うるさい。」


綾波が居間で悶えている私に本を落下させてきた。

まあ浮かせたけれど。


「選択授業と部活を決めないといけないらしいの。すっかり忘れていた」


なにせ選ぶと想定されている時期に綾波の妹の件に奔走していたのだから頭から完全に抜けていた。


「綾波は何?」


「茶道と、舞踊部。

一通りは当主教育で終わっていたから、使えるものにした。

選択授業はひとりか二人につき一人の講師だから、何を選んでも安心」


正直特進科も能力科もそんなに仲がいい人がいない上に、部活に入るのは今からでは完全に出遅れている。


「部活は同じにしてもいい?」


「……一度見に来た方がいい。こんなつもりじゃなかったと後悔したくはないでしょ」


問題は成績に直結する選択授業なんだよね……


忘れていたから何も調べていないので、どうしようか。


「すみません、選択授業は何がありますか?」


困ったら人に頼る。これ鉄則。


「ああ、それならあとで職員室に来てください。一覧がありますから」


そして今日も今日とて補講に走る。


本当にいつまで続くのこの補講。いい加減授業に参加したいよ。


「……多くない?」


渡された資料は裏表4枚で、舞踊からなぎなた、籠作りなんてものまであった。


選択授業はなるべく将来に役立つものがいい。私の将来がわからない以上、ここは巫女を生かして……


「神楽にしようかな」


というかなんで神楽があるのよ。今まで選択する人いたのだろうか。

多分いたからあるのだろうけれど。



「優雨、選択授業を神楽にしようと思うのだけれど、大丈夫?」


「ああ。むしろ斎宮(いつきのみや)が喜ぶな。あたしは大歓迎だ。

部活はどうする?」


「綾波と同じ舞踊部にしようかと」


優雨はお茶を飲む手を止めた。


「そうか。浜浦綾波と一緒か」


なぜ苗字も名前も呼ぶのだろう。綾波に何かあるのかな。

もしかしてあの妹?でも、それはもう解決したし。


わからないまま部屋を追い出された。



もう一月たったのだから、いい加減早良に手紙を出そう。

たいていは魅夜から聞いていそうだけれど、こちら視点も報告することに意義があるのだから、言っておこう。


早良からもらった万年筆は普段の筆記用具に使っているが、手紙をこちらから書くのは初めてだ。


寮母に託して送ってもらう。


選択授業、何にしよう。



「舞踊部は週3日、ここで活動していて、年に一度の発表会に向けて日々稽古してる。

何か聞きたいことは?」


舞踊部の案内人はやっぱり綾波だった。


部員は30人弱。先生は外部の人。和室4を使用している。


「入部したら、何か買わなければならないものはある?」


綾波は教員に確認しに行ってから戻ってきた。


「こちらですべて配布だからいらない。汐凪は巫女の服も持っているし、十分」


私はできれば羽衣を着たいのだけれど、さすがにそれは無理そうだ。


「どう?」


細かく止められて指示が飛ぶ。それが厳しいとやめるひともいるのだろうけれど、正直このぐらい当たり前だ。

理不尽に怒られるわけではないのに、どうして嫌がるのかと不思議に思う。


「うん、入る」


部活動は舞踊部に決まった。次は選択授業だ。何にしよう。


「ああ、五木さん、八谷神宮からお手紙です」


ずいぶんとはやいな。


ーーーーーーーーーー早良ーーーーーーーーーーーーーーーーー

汐凪が学校に行ってしまってから、矢口の部屋はひどく静かになった。


変ったのはそれぐらいだ。


私は今日もせっせと上級巫女の役名に取り組んでいる。

佳那

下級巫女になった美佳とともに、神宮のいろはを学び、実践し、稽古する。


最近は素養があるからといって神楽舞の稽古もつけてもらっている。



「早良上級巫女、仕事がひと段落したらこちらに来てくださる?」


宮司である斎宮に呼ばれて否があるはずがない。すぐに仕事をかたづけて斎宮殿に向かう。


「汐凪から手紙が届いたの。早良とわたくしを並べるという失礼なものよ」


そうは言いつつ斎宮の目は笑っている。ここが気心の知れた場だときちんと理解しているからこそだ。


「荘園では、執政官と巫女は同列の扱いでしたから」


久しく帰っていない荘園。みんな、こっちは大丈夫だけれど、あちらは無事かしら


「汐凪は選択授業をどれにしようか悩んでいるようよ。そこで早良、来年にはあちらの講師になってもらうわ」


北寺学園女子部の、講師?話の流れからして選択授業の、ということだろうか。


「汐凪は仮にもここの上級巫女なのだから、巫女らしいことをしてもらわないとね」


斎宮が汐凪に神楽舞を選べという内容の文をしたためて、私も荘園からの定期報告の紙をそのまま入れる。


「汐凪……」


こんなに汐凪が恋しいなんてね。


荘園にいたころはいつも一緒だったから気が付かなかった。


「さ、仕事に戻りましょう」


ーーーーーーーーー汐凪ーーーーーーーーーーーー


見てみると確かに八谷神宮神楽舞の選択肢があった。


巫女からのお願いだし、ほかにやりたいこともないからとりあえずこれにしておくか。


「綾波、次の部活はいつなの?」


「」

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