入学準備
「さて、これから大変だよ。とりあえずあたしが後見人になっているが、まず入学を確約して、そのあと身の振り方を考えないと」
身の、振り方?
ほとんど優雨に任せて編入に関する手続きを終わらせた。
「一応、あなたは元孤児で素質があったから八谷神宮の巫女として引き取られ、その後土御門の養子になった、ということになっている。
苗字は土御門にしておいたが…これは後からいいものを考えよう。」
人が多くて苗字が必要らしい。どんなのがあるのかな。
「それは置いておいて、とりあえず汐凪と早良がどうするかを考えるべきでは?」
強い、斎宮の一言。
「ここから学校に通うことは想定されていない上に、距離がある。寮があるからとりあえず申請はしておいた。が、最悪あたしと暮らすことになるな。
まあ、どのみち早良とはしばらくお別れになる。」
…え?ちょっと待って。それは、年単位で離れるということにならない?
今までずっと一緒で、離れてもほんの数日だったのに。
しかも最近何だか早良が冷たい気がする。
荘園のためには、仕方ないのかもしれないけど。
「寮の結果が出るのは二週間後だ。寮に入るのが一番無難だがな。
あとは教科書類の購入と、勉強道具を揃えて、来週には制服の採寸をして、生活の雑貨を買い揃えて…」
つらつらと羅列されて、その日のうちに勉強道具を買いに行くことになった。
教科書は学校に申請する書類を用意するのにしばらくかかるそう。
「ペンと、消しゴムと、ノートと、」
「ノートは教科数の3倍と予備ぐらいの量を買っておけ。多くて損はないからな」
そんなわけでノートで無駄に鍛えられることになった。
ついでに本屋に行って辞書を購入。本屋で新たに予定帳を買った。あった方が忘れないだろう、とのことだ。
「早良、荘園への手紙は用意できた?」
「これでよろしいですか?」
早良の字は綺麗。ちっさくて、綺麗に収まっている感じがする。
内容は、斎宮に保護されて上級巫女になり、学校に入学が決まったことなどが書かれていた。
それを折って人形にする。
すると途端にその紙は動き出してひとりでに上に登って行った。
泊の式神だ。これが当面の連絡手段になる。
「届くといいのだけれど」
まあそんな心配は無用だろう。
あちらからの便りは私は多分見られないだろう。
寮に入ることが決まったから。
「う、わ……」
人が多い。しかもおそらく生徒も保護者も来ていないところが多いのだろう。
たまにいる子供は能力を見込まれての能力科か。
どう考えても親ではない早良と一緒にいる私が浮いてしまう。
「かばんは大きい方がいいですよね」
「はい。行事もありますし。では大でよろしいでしょうか」
早良が交渉する。私はひたすら周りを見渡している。いい加減早良に頼りきりなのを直さないと。
「制服はどうなさいますか?スカート、ズボン、キュロットスカートがあるけれど」
キュロットスカートはスカートに見えるズボンらしい。
能力的に浮くからキュロットスカートにしておいた。
夏用、冬用、式典用、上の服もそれに合わせて買う。
上着や防寒具なんかも買うと結構な量になった。
「これらは寮に置いておいてください。」
「承知いたしました。」
どんどん、早良と離れる日が近づいている。
ーーーーー優雨ーーーーーーーーーーーーーー
「魅夜、この試験結果見て」
魅夜は眠たそうに顔を上げた。斎宮になってから魅夜はいつも眠たそうだ。
「んー?あ、特進にも受かってるのね。能力科だと思っていたのだけれど」
「この短期間でよ。あの子が怖いわ」
荘園の存在は知っていた。暦から始めた時にはどうなることかと思ったが、たったの半年で名門の特進に合格するとは。
「しかも、能力科の特例で他のクラスの授業を受けれる制度を適用される。特待生でもある。
…あたしはあの子が怖い。いつか、全てを塗り替えてしまうのではないかと。」
「褒めてるのね」
そうだけれど、なんだか怖い。




