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人形シリーズ  作者: 古月 うい
三部 壊れた人形

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27/88

人形の反乱

ーーーーーーーーーーーーーーー清ーーーーーーーーーーーーー

「では、江。留守を任せます。」


「承知いたしました。どうか、お気をつけて」


長から聞いた時には江も一緒に行くと思っていたのだけれど、全員が出て執政界を留守にするわけにはいかないと江だけが留守番になってしまった。


「汐凪にこうすればいいと教えていただきましたので、それ通りに進めましょうか。

まずは、大遠野国寒国に行きましょう」


全員が外回りはじめての三人だ。自然、経験者に頼り切りにもなるだろう。


「そうですね。汐凪によると、初めに巫女に接触しろとありますから、そちらに向かいましょうか。」


そうして見回りはスムーズに進んで、夢見幾世に入れないこと以外はほとんどの地の長への謁見は終わった。

何人かは汐凪の資料から代替わりしていて少しだけ認識に差があり苦労したがそれぐらいだ。


長と穏やかに話すことが初めてで、三人で話すのは穏やかでのんびりで心地よかった。


「清、この髪飾りを上げます。その長さなら困りますでしょう?」


長から渡されたのは寒国の工芸品の一種、組紐だ。白と水色の模様がきれいな逸品だ。

奥で霧氷が苦い顔をしていたのは値段のせいだろう。



最後に汐の娘である汐里に会いに行こうと霊山に行った。


「これが森……涼しいですね」


「本当に。生き物の気配がします」


のんびり話しながら歩いていると、いきなり顔面に紙が当たった。


「わっ」


手に取ると、泊の式神だった。


『すぐに戻ってきてください。』


それだけをしゃべってただの紙人形に戻った式神を手にのせたまま、それぞれ執政界に入った。

ーーーーーーーーーーーーーーーー汐凪ーーーーーーーーーーーーー

執政界からの知らせを受けて文字通り飛んで帰った時には、すでに執政界へは入れなくなっていた。


結界が張られていて、はじかれる。でも夢見幾世とは違って、固く受け入れないのではなく柔らかく曲がって決して破れないような感じだ。


「どういうこと?」


境界で混乱していると、奥に複数の人影が見えた。


「汐凪!よかった、戻ってきてくれて」


長だ。後ろには沃もいる。


「何があったのですか?」


「わかりません。今、清と霧氷が調べております」


泊と早良が情報交換をしている。

どうやら泊と沃が戻ってきたときに中に入ることができなくて泊の式神で全体に連絡したらしい。


「つまり中には江が?」


「そうなりますね。」


他の執政官はこの場にそろっている。江、あなたいったい何をしたの。


「それなら私も解析するよ」


了承を聞かずに楽しそうだったので結界の解析をした。


こういう時に発揮してこそ第一位代理でしょうと言い訳をして。


手を当ててひたすら解析を進めていく。真ん中あたりでどうしても進まなくなってしまう。これは何だろう。


そう思っていると、隣に霧氷と清が立っていた。


「長……汐凪もいたの。お帰り」


「霧氷、久しぶり。解析は終わったの?」


「ええ。一旦別空間に移動しましょう。長が作りました」


長、そんなことができたのか。ひとまず結界の中に入って移動した。



「あの中には江がいます。そして江が施した結界が……」


「”命引の結界”。」


ええっと、習ったかなそんなこと。早良をチラ見すると神妙な顔を返されたのできっと習ったのだろう。


「それを解除できるのは血縁者のみとされておりますが、執政界のだれが入ろうとしてもはじかれてしまいました」


そもそも派生って血縁者になるのだろうか……


「そこで、汐凪たちに江の血縁者を探してもらいたいのです」


え?派生した人の血縁探し?何を言っているの清。


「ひとまず承りました。後ほど詳しく伺います。それより、中に置いている荷物などはどうなるのでしょうか。また、ここで雑魚寝になるのですか?」


さすがに雑魚寝は嫌だ……思い至らなかった。さすが早良。頭を使うことは早良に任せよう。


「ここはわたくしの空間だから自由に広げられるよ。荷物は……あきらめて」


そんな……簪を持ち歩いていてよかった。これがなかったらいろいろ入れないところが出てきてしまうし。


「では、それぞれ解散といたします」



「命引の結界って何?」


早良に聞くと、知らないと返された。これは江の責任だ。早良が神妙な顔をするから勘違いしたじゃないか。


清の部屋に入って尋ねるとあきれながらも教えてくれた。


「自身の寿命と引き換えに強化な結界を施す技のこと。執政官なら使える。知らなかったの?」


聞いてないな……


「ねえ清、江の血縁ってどういうこと?派生したのに血縁?執政官は入れなかったのよね」


「あれ、汐凪知らないの?

そうね、それならわたくしの故郷に行きましょうか。その方が早いし、あっちの人たちなら何とかできるはずだから」


ぶつぶつつぶやいていることを無視すれば、清の故郷があるのか。


「どこなの?」


「四界及び神界に属さない中立の地。古くからこの地に住まう、妖怪たちの里。喜野里(きのさと)


……どこ?

三部の開幕です。短いのはご愛嬌です。

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