表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形シリーズ  作者: 古月 うい
二部 手の届かない地 神界編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/88

神々の事情

「そもそも神界の歴史って習わないのよね。こっちの人たちに合わせられた教材だけど、これを読んで」


神に教本とかあるのか…


「先代烏姫が作られたの。教育を一定にするべきだと。」


「霊姫は、二代三代、そして今代の烏姫に使えておられる神界で最年長の神。」


この並びということは、今代は四代目なのかな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昔、初代天上大御神烏姫がこの地にご降臨なさった。


それまでこの地は妖怪たちによって治められた地であったが、初代天上大御神はこの島を神々の荘園とし、四つに分けられた。

四つとはすなわち夢を見る地の夢見幾世、移ろい変わりゆく移儚夜、大きく神界から遠い大遠野国、そしてそれらを監視する執政界である。


天上大御神は荘園にそれぞれ領主として星神明姫、知恵神徳姫、戦神生姫をおかれた。


女の神々は荘園から選ぶことを定められ、神の証としてより強い素質のものに白い髪をお与えになった。


また、荘園の領主には決して男神がなってはならないと定められた。



執政界は長を頂点とし、様々な能力を持つ女性が所属する世界である。


四界の均衡を保ち、平穏と安寧のためにその身を捧げる存在であり、長はどこへも肩入れしてはならないのである。


執政官は決して人であってはならない。


元いた妖怪たちには新たに境界に妖怪の里をお作りになり、迷い込んだ人たちを安全に導く役割を負わせられた。


そして、三界にしばらく名を残した妖怪、すなわち九尾の狐と雪女、それに鬼に神格をお与えなさった。

それぞれ、狐姫、雪姫、鬼姫という神名を賜った。


雪姫は天上大御神より執政界を見守る役割を命じられ、以来三千年執政界を見守っておられる。


跡取りとなられた二代目天上大御神烏姫は大遠野国出身であった。


烏姫は禁忌を犯しなさった。

素質の少ない灰髪のものを神となさった。


結果として戦神月姫による内乱および執政官による新場の誕生を許すこととなった。


戦神月姫により内乱とはすなわち、月姫が神々を取り込み信仰神霊姫および結神 率いる女島の神々と対立した争いである。

此の乱は結神によって収められた。


新場の誕生とはすなわち荘園に執政官第一位汐が執政界と夢見幾世との間に新たに分不相応にも夢浮橋を作り、夢見幾世を執政官の支配から外したことである。


各地では此のほとんど同じ時期に起こった二つを一つと見てそれぞれ名がついていている。

すなわち大遠野国においては消失、夢見幾世においては降臨、移儚夜においては大厄災である。


その責任を取る形で、早々に代替わりなさった。



三代目天上大御神烏姫は夢見幾世出身であった。


彼女は神々及び人間の教育を重視なさった。

神々へはこの本をお作りなさった。それまでは跡継ぎとして現れた新たな神にそれぞれ好きな教育を施していたが、知識に偏りが出るとおっしゃって統一された。


また、荘園の各地に学校をお作りなさった。


人の教育がなっていないと神の素質も薄れることがわかってこられたからである。


しかし三代目烏姫は全ての人々を守られるためにお力を使い果たされ幼子の姿となられたため烏姫が困難であるとご判断され、四代目の烏姫が見出された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんなことがつらつらと書き連ねてあった。


初代の話が三分のニを占めていて、理想化されていることがよくわかる。


「妖怪の雪女の神格を与えられたのが、雪姫なのですね。」


「ええ。そして、執政官第一位の汐があなたのおばあさま。」


分不相応にもって書かれていて、こちらではずいぶん評判は悪いのだろうな、おばあさま。


「わたくしは汐がそのような人だと思わない。執政官が浅はかなことをするはずがない。何か訳がある、と思っている。」


「そもそもそう簡単な理由では、新たに世界などできないわ。」


この人たちだけが好意的なのかもしれない。安心してはいけない。警戒心を解くわけにはいかない。


「そう、あなたたちの地は荘園。外よりずっとずっと文明が進んでいない。そんな必要がないから進めていない。

でも荘園で育てられたきれいな人しか神になれない。わかった?」


荘園であっても、何も変わることはない。ただ仕えるだけだ。


「外の景色を見せることぐらいはできるから、見たくなったら声をかけてね。」


見たいとは思わないのだろうな。


そう思っていると、殺気を感じて咄嗟に結界を強化した。


ひゅんという音と共に、結界に針のような剣がささる。


「よけなかった。」


蛍姫だ。少しだけ表情が緩んでいる。さすが戦神


「蛍姫。」


霊姫が声をかけると蛍姫は元のようにおとなしく、興味なさそうに座った。


「この子は、強そうな人には片っ端から喧嘩を売るから…ごめんなさいね」


さすが戦神。その名に違わない凶暴さだ。


「それで、私たちに何をして欲しいのでしょうか?まさか神界の歴史を教えていただくだけではありますまい。」


神への言葉遣いを直せと怒られそうだが、そもそも長と同じ権限なのだ。


「執政界の長の禁忌は読んだわね?」


「はい。肩入れすること、人間を執政官にすることですよね」


「本当はそれ以外にもいろいろあるの。そして、見ている限りそれらを放棄しているように見えるから、事情聴取が必要だったの。でも雪姫は音信不通。そこで()()()()()()()()あなたたちに来てもらったの。」


「しばらく滞在することになる。部屋はここを貸すから、好きに使って。」


そう言われて、ここに拘束されることが決まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ