神を殺す為の妖
幸太と森を彷徨いながら村への移動中、幸太が話しかけてきた
「冬神様は…」
「どうした?」
「なんで…僕たちのような人を助けてくれるのですか?」
「…それが俺に出来ることだからさ」
「アイツのような"人間"が居なくなるように…」
「冬神様はお優しいのですね!」
人を殺す、それは神として圧倒的に邪道
その悪行を自分で肯定なんて出来なかった、だからこそ…幸太の一言が俺を救ってくれた気がした、俺の中の…言葉にできない程の暗闇を照らしてくれた気がしたんだ
「ありがとう、俺を肯定してくれて」
その言葉が勝手に口から出ていた、自分でも分からない、なんで出たのか…分からない、だけど、伝えて良かったと思える
「…いえ!冬神様に助けてもらった身ですから!」
驚いた顔をした後にそう続けた幸太の顔は、太陽のように明るい顔をしていた
ガサッ
その時草むらの方から音がした
「…お前、普通の人間じゃねぇだろ」
「冬神、お前を殺すよう言われたんだ、ここで死んでくれや」
髪色はこの夜の森では見失ってしまいそうな黒、服も紛れるためだろうか、髪色ほどでは無いが黒色で刀の反射する光を見失えば圧倒的に不利になりそうだ
「幸太、隠れてろ」
「絶対守ってみせる」
俺も大鎌を構える
「能力【穢化】」
「良いじゃん、ちゃんと強そうだ」
「能力【馬骨】」
能力の発動…やはり普通の人間じゃない
男の腰から下が馬の下半身のように変化し、刀は紫色に染まっていた
「サラッと妖怪っぽくなんじゃねぇよ」
「神に比べたら弱いだろ?」
「そうだな、俺の勝ちは確定してる」
「俺が神殺しになってやるよ」
そう言った瞬間男は俺の目の前に移動してきていた
カンッッッ!
鎌と刀がぶつかり音を鳴らす
「中々に力持ってんな」
「逆にお前は神のくせに力が弱ぇなあ!!」
「あぁそうかい!!」
鎌で刀を振り払い男の体へ鎌を向ける
刀の距離的に先に切れる!
「さっさと死ねやぁ!!!」
ドンっっっ!!
「ゴフッ…?!」
ドンっ
気付けば俺は吹き飛ばされ木に頭をぶつけていた
何が起きた…手は刀を持つため両手使っていたはず…
「足を見てなかったな」
足…そうか……くそが
「神と言えどこんなもんか、さっさと死ね」
「…まだ能力が無いと?」
「あ?」
「能力【穢】」
【穢】 自身の穢を操る能力、それ故に多種多様な扱いができる
「吹き飛べや!!!」
指鉄砲の形を作り人差し指から穢れを発射する、正直これだけじゃ焼け石に水…だが!
「悪あがきしてんじゃねぇ!!」
男の刀が穢へ触れたその瞬間……
「は?」
丸型だった穢が紐のように長く伸び男の体を縛り始めた「死ねクソ野郎!!」
俺たちは気付いて居なかった
暗闇からこちらを見つめる…狩人の目を