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毅の震え
「そっか、十四日か……」
野球部が初戦を迎える日だったのを思い出した。つい数日前まで共に汗を流していた仲間たちは、今ごろ大切なものを賭して闘っている。功治や野村、芝川の雄志が目に浮かんだ。ベンチやスタンドで声を枯らして声援を送る仲間たちは、今何を思うのだろう。
毅は今誰ともつながれていないことを感じた。
たった一人で自分はここにいる。
一人で放たれた世界は、とても広く感じられた。
どこまでも果てのない空間が漠と毅の前で口を開いた。
その大きさに毅は身震いした。
そのとき、和美の感じていた孤独や不安を毅はその片手に掬いとれた感じがした。小さな自分と果てなく続く世界。この思いを和美に伝えたら、何と言うだろう? きっと自分の抱える孤独とは違うと目を潤ませて主張するだろう。そう主張する和美に、自分は何を語れば良いだろうか。
厚い雲に陰り始めた空を見上げる。
毅は出会ってからこれほど和美を愛しく想ったことはなかった。




