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初回の攻撃 ~功治~

 緒戦の相手は隣の市にある清水南高校。三年生右腕のエースは春期大会後に怪我で戦線を離脱したエースに代わり、六月からエースの座を獲得したと伝えられていた。警戒するほどの投手ではないというのが大会前の練習試合を見てきた高岡高偵察チームの報告だった。


 ストレートのMAXは130㌔。持ち球はストレートとスライダーとツーシーム。そして時折投げるシュート。シュートを投げるということが少し気になったが、特別に切れが良いわけでもなく、制球も不安定で、フォアボールで自滅することが多いというのがそのピッチャーについての情報だった。


 そして、左手の手首から先がないことも情報として加えられていた。投球後すぐにグローブを左腕から右手にはめなければならないため、体勢が不安定になりがちで、セーフティバントが有効ではないかという見方が伝えられていた。


 迎え撃つ高岡高の不安要素はただ一つ。四番山郷功治の不調。しかし、清水南との力の差を考えると功治一人の不安は高岡高にとって決定的な弱みにはなるものではない。功治抜きでも七回までに七点差以上の差をつけてのコールドゲームも狙えると高岡高サイドは踏んでいた。


 高岡高のチャンスは早速初回に訪れた。

 一番野村が初球をセンター前ヒット。二番紺野がワンストライク・ツーボールからの四球目を一塁手前に送りバント。三番鍋川が初球の真ん中低めのストレートを芯で捉えて痛烈にレフト前へ。


俊足の野村がホームに突っ込んだが、レフトからの好返球にホームで間一髪タッチアウトだった。開始十分の攻防で両チームのボルテージは一気に上がり、騒然とした一塁側三塁側の満員に近い両スタンドもあっという間に試合に引き摺り込まれた。ホームへの返球の間にレフト前にヒットを打ったバッターランナーの鍋川は二塁に進み、ツーアウト二塁。まだ高岡高先制のチャンスは続いていた。

 

 バッターボックスに入った四番の功治は落ち着いていた。いつものようにバッターボックスをスパイクの裏で均す。梅雨開けしたばかりの夏の太陽に湿気を抜かれた土がスパイクの歯と擦れあって音を鳴らす。ボックスの一番後ろに右足先の歯で浅い穴を掘り足場を作る。調子の良い時もスランプの時も、バッターボックスに入った時はいつも決まった動作だ。マウンドに集まっていた内野手が守備位置に散る。戻ってきたキャッチャーが主審に頭を下げた。

「プレイ!」


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