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宇宙飛行士

「お前・・・・・・」

 部員たちは、その冗談とも本気とも取れる功治の答えに、一旦は一蹴しようとしたものの、功治の真顔と動じない声色に、どう反応してよいのやら分からず一瞬押し黙っていた。

「ウチュウ? ピカチュウの間違えじゃね?」

 内田が立ち上がり、剃ったばかりの頭をくるんくるんと振り回りながらおどけて見せた。

行き場を探していた部員たちの思いが一気に流れ出たように笑いが部室に渦巻く。


 それを部室の隅で訊いていた毅は、功治の彼らしいその言葉に舌を巻いた。


「功治、いくらなんでもそれはねえだろ!?」


「大変だぞ、宇宙飛行士は」


 一斉に彼の無謀さを嗜め、また笑う声があがり、毅もその声に釣られて


「そうだぜ功治、いくらなんでも」


しかし言いかけたその言葉は行き場を失った。毅には、身長二m近い大男がロケットに乗り込んでいく映像が妙にはっきりと脳裏に映ったのだった。


「さあ、練習! 練習!」


他の部員からの声も一向に気にかけることもなく、手早く白い練習着に着替えた功治はグラブとスパイクを持つと立ち上がった。


彼に用具を蹴飛ばされたくはないと、部員たちは散らかった用具を急いで彼の進路からどけた。騒然となった部室から功治は大股で扉へ向かう。隙間から陽の差す扉へ大股で歩く眼鏡の八頭身男は、宇宙服を着た宇宙飛行士に毅には見えた。

 鈍い衝突音とともに、部室が揺れた。


「でっ」


 勢い余った宇宙飛行士は、頭を下げるのを忘れ、出入口上部に歩くそのままの勢いで額をぶつけた。うずくまる大男を前に、部室は再び笑いの渦に飲まれた。


              つづく

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