幽霊の髪は伸びるだろうか?
幽霊の髪は伸びるだろうか?
もし、自分が死んだことに気づいていない幽霊がいたとして、その幽霊の髪の毛は伸びるだろうか? 死後のフワフワとした緩慢な脳で疑問も持たず、断片的な日常の記憶を辿り、生きていた頃のように行動していたとしたら。
伸びない?
ああ、そうだろうとも。気づいてなかろうがそもそも栄養がなければ髪は伸びない。食べるどころか心臓が動いていないんだ。
でも、もし心臓や臓器自体も死んだことに気づいていないとしたら?
そんな事ありえない?
でも、死を認識する前、余りに一瞬のうちに消し去られたのなら、そういう事もあるんじゃないだろうか。何なら人間の体の中に存在する多数の微生物。腸内細菌なんかもね。
そんな小さな生物に魂が、意思があるのか? って思うだろう。一寸の虫にも五分の魂というじゃないか。小さいからって見くびっちゃいけない。僕らだってこの星からしたらそれは……それはそれは小さなものだろうさ。
波が飛沫を上げ、風が砂を撫でる。最近は海を見に来る人が増えた気がする。
ここからならこの星を広く見渡せるからだろう。何も変わらない景色。あの日から何も……。
ある日、巨大な隕石が衝突し、一瞬でこの星は砕け散った。……ただ、どういうわけか僕らはこうしてここに存在している。
全てが半透明だ。手も足も髪も猫も木も、この星そのものも。
幽霊となった僕らは前とほとんど変わらない日々をすごしている。
いや、変われない日々かもしれない。そうしないと気づかれるかもしれないからだ。
僕らの髪はもう伸びない。でも風は吹いている。時々、その風が止むと僕らは怯える。地球がピタリと止まり、考え込んでいるのではと思うからだ。
この星が自分が死んだことに気づいたら、僕らはどうなってしまうのか。
その思いを胸に秘めながら生きている。そう、僕らは生きている……。




