表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/73

溜息 

 スパイクさんの起こし方はジンとは全然違った。


 力づくで起き上がらせられ、僕が半分くらい眠っててもお構いなし。布団を剥がされ、夜着を剥がされる。


「しっかりして下さいよ。アイデンさんに聞いてましたけど、、思ってたより酷いですね。あなた、血圧が低いんじゃないですか?」

「……え…血圧?」

「口開けて下さい」

「……へ? うぐっ、く。な、何ですか?」

「カフェインと糖分です。目が覚めますよ」


 甘くて苦い塊を口に放り込まれ、人形のように着替えさせられ、手荒に熱いタオルで顔を拭かれる。


「食事は食堂でって、自分で言ったんですからね。覚えてますか?」

「……え?」


 スパイクさんが身を屈めて僕の顔を覗き込む。糸のように細められた目から、ほんの少し覗く瞳は感情が読めなくて怖い。両脇に腕を差し込まれ、勢いよく立ち上がらせられて背中をパンッと叩かれた。


「シャキッとしなさい。男でしょーが」


 ——あ。

 目が覚めて来た。


「起きました。ええと、凄いですね、カフェイン」

「最終手段です。今日は私が侍従になって初日なんでね。遅刻なんかさせられませんから。さ、行きますよ?」

「え? どこに」

「食堂です」


 背中を押されて部屋を出て、ハッと思い出す。


 ——食堂に行ったらジンに合うんじゃないかな。


 自分が衝動的にしてしまった行為を思い出し、頭に血が上ってくる。


 うわぁ、顔が合わせづらい。

 なんか、もう。


「どうしました?」

「え?」

「茹で蛸みたいになってます。カフェイン、効き過ぎた?」

「だ、大丈夫です」


 不思議そうなスパイクさんの横を早足で過ぎる。赤い顔なんか、いつまでも見せてられない。彼は何も言わずに僕の後ろをついて来た。


 食堂に入ってすぐ、僕の足はピタッと止まった。

 ジンが居る……。


 普通にトレーに朝食を載せてるだけなんだけど。

 どうしよう。


「アンドリューさん?」


 スパイクさんが不思議そうに僕の名前を呼んだ。こんな所で怖気付いてる場合じゃない。


 心臓がバクバク言って耳鳴りがしそうだけど——。

 挨拶、あいさつをしなければ。


 そ、それで、あー。

 アレを誤った方がいい?


 と、とにかく、挨拶。

 普通に、さりげなく、なんでもない感じで。


「お、おはよ、ジン」


 ——ジンの肩がビクッと強張った。


「……おはよう」


 そのまま、僕の方を振り返らないでサッサと席へ移動してく。


 僕、嫌われたのか?


 なんか——泣きそうかもしれない。


 だけどな、考えてみればそうだよな。

 ジンは自分を攻略対象から外せって言ってたんだし。

 きっと、普通に女の子が好きなんだろ。


 なのに、突然、良いも悪いもなく。

 唇を奪われたわけだ。


 警戒されて当然で、嫌われたって変じゃない。


 ……落ち込む。

 ヘコむなぁ。


 ジンとは逆の廊下から近い席に座って、一人で納豆飯を掻き込む。


「どうかされたんですか?」

「……別に。スパイクさんは食べないんですか」

「いやぁ、僕はアンドリューさんの侍従で、生徒じゃないですからね。王宮の食堂で食べます」

「はぁ。なら、もう食べに行ってもいいですよ」

「あなたが教室に入ったら行きます。……それ、美味いっすか?」


 スパイクさんが興味深そうに納豆飯を見る。


「僕は好きです。ププラ先生の同期なら、食べた事ないですか?」

「アイツはゲテモノ好きですからねー。っと、失礼」

「いいですよ。まあ、好き嫌いの分けれる食べ物ですから」


 彼がクスッと笑った。


「?」

「アンドリューさんは、美味しそうに食べますね」

「……好きですから」


 卵焼きに浅漬け、魚の干物。僕的にはアジの干物に思えるんだけど、ここ、海が遠いみたいだし、なんの魚なんかな。まあ、美味しいから、なんでもいいけど。


 スパイクさんにニコニコと見守られ、食事をしてたけど、食べ終わる頃にはジンが居なくなってた。先に教室に行ったんだろうな。


 このまま、気不味くなったら嫌だな。


 仕方ないけどさ。

 なんで、あんな事をしたかなー。


「アンドリューさん」

「はい?」

「溜息、多いっすね」

「……はぁ、まあ」


 スパイクさんは、いつも細めてる目をさらに細めた。


「訓練中は気を散らさないで下さいよ? 怪我しますから」

「……頑張ります」


 彼は立ち上がってお茶を持って来てくれた。

 しかも、ふーふーと吹き冷ましてくれてる。


「スパイクさん?」

「アンドリューさん、猫舌なんでしょ? アイデンさんに聞きましたよ」

「あ…そう…ですか。どうも、有難うございます」


 なんでだろ。

 少しだけ気が楽になったな。


 ——お茶、美味い。

評価を有難うございます。

嬉しい(^^)


けど、書くほうが間に合ってない……。

なんとか、なんとか、一日、一話、頑張ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ